みんな違う。それでも、チームで仕事を進めるために大切なこと。

概要

  • 著者:岩井俊憲 ヒューマン・ギルド代表取締役
  • 発売日 2022年8月
  • ジャンル:組織構築、部下育成 

本の目次

1章 「建設的」な視点をもつ
2章 価値観をチューニングする
3章 部下の言動に反応しすぎない
4章 安心・信頼できる職場をつくる
5章 目的・目標を掲げ続ける

結論(1番の訴求ポイント)

チーム(組織)構築には共同体感覚が必要

この本はアドラー心理学に基づいた内容で、1番の訴求ポイントは「共同体感覚」をチーム内に作れるかどうかという事である。

この「共同体感覚」とは、簡単に言うと「共通の目標に対して協力している状態」。つまりお互いが協力して助け合っているという状態を目指しましょうと言う事である。ではこの「共同体感覚」はどのように作られるのか。

共同体感覚が必要な理由

共通の課題が必要

共同体感覚が必要な理由、それは個人のパフォーマンスでは限界があるからである。5人のチームで1人が120点で他が50点だとトータル320点、一方全員が70点であれば350点。つまりお互いを助け合う環境を作る事が目的達成のために必要な事なのである。

だが言うは易く行うは難しである。

自分の課題と他人の課題、共通の課題

共同体感覚を作るために必要な考え方で「課題の分離」がある。これは問題が誰の課題なのかをはっきりさせるという考えで、自分なのか、他人なのか、双方なのかを判断するという事である。つまり他人の課題まで自分で何とかしようとしてもやるだけムダで、自分のやれる範囲の事をやった上で、相手がどう感じるか、どう動くかは相手の勝手という事を言っている。実はこれは人間関係のストレスを軽減する事にも有効だったりする。

共同体感覚に必要なもの

本中に共同体感覚を作るにあたって必要なものが記載されている。それは、「所属感」「貢献感」「信頼感」の3つで、これらがあるとお互いの共通目的のために何ができるかを考えられるようになるらしい。これがあると、自分の役割は何か?と考えるようになるとの事。

確かにこの3つは定着率にも関係してくる要素でもある。自分の居場所があって、チームに貢献している感じが得られて、お互いに信頼している。こんな組織があれば最高である。

しかしここでも、言うは易く行うは難しである。

個人的には所属感をまず最初に作るのが先決ではないかと思う。居場所さえ作ってしまえば、後からでも貢献感や信頼感は作れる。ただ居場所が無いとキツイような気がする。これはクラスで無視されているような状況に近いからだ。

個人的補足

リーダーは広い視点で世界を見せる

個人的に強調したいポイントは上司は広い視点を持って見せるという事。

今の時代、価値観も多様化しており、部下や同僚がどのように悩んで考えているのかは正直、分からない事も多い。本書ではそこを無理に分かる必要が無いといっている。つまりここでも課題の分離が行われているのだが、ポイントは部下が悩んでいる時は「短期的」かつ「局部的」である事が多い事。ここを広い視点、言い替えると視座を上げてあげる事で、今まで気がつかなかった点に気がつかせるのが上司の役目という事だ。

これには共感しかしない。世の中のリーダーは自分のメガネで世界を見ている。当然優秀な人も新人だった頃があったのだが、いつの間にかその視点を忘れてしまっている。相手の立場になって(戻ってみて)、そこからどんな世界を見せれば、視野が広がるのかを考えてみて実践して欲しいと思う。

また本書は、その他にも劣等感はあくまで「感」であり、その人がどう感じるかである。つまり他人は関係が無い。と言っていたり、同情と共感の違いだったり、目標と目的の違いなどを分かりやすく解説している。

具体的な方法論ではなくマインドセット的な内容がメインだが、これから部下を持つリーダーになる予定の人、または新米リーダーには読んでおいても良い内容だと思う。

逆にまだ役職がついていない人は無理してでも読む事も無いのかもしれない。