悪魔の傾聴

【概要】

  • 著者:中村 淳彦
  • 発売日:2022年9月22日
  • ページ数:234ページ

本の目次

  • 第1部 基礎編 ピックアップ・クエスチョンと雪だるま方式
  • 第2部 実践編 悪魔の傾聴を使いこなす
  • 第3部 悪魔になるための心の調整 欲望の断捨離とセンタリング
  • 第4部 上級編 人の本音を最後まで聞き切る11のテクニック

【結論(1番の訴求ポイント)】

傾聴は技術で後天的に身に付けられるもの、その為に必要なのは自制心のみ

ここ数年でよく聞くようになった傾聴。これは簡単に言うと、相手の話を聞くという事だが、実は多くの人は相手の話を聞いているようで聞いていない。人間関係が円滑にいくかどうかはコミュニケーションがキーになる事は誰も異論は無いだろう。

ではそのコミュニケーションを円滑にするためには、どうすればいいのか。この本では、「HHJ」の3つが重要と言っている。そしてこのHHJは気をつければ誰でも実践出来る事でもある。つまり傾聴は誰でも身に付ける事が出来るのである。

【ポイント】

HHJ

こんな事で悩んでいる人はいないだろうか?

他人とコミュニケーションが上手く取れない。親友と呼べる人が少ない、もしくはいない。好きなあの人に気に入られたい。でもどうすればいいのかが分からない。せっかく勇気を出して話しかけても、すぐに沈黙状態になり気まずくなる・・・

これらは全てコミュニケーション能力に起因している。一般点にコミュニケーションがヘタ(苦手)と言われる人には共通点がある。これは相手の話を聞くのにやってはいけない事であり、本書ではそれをHHJと言っている。ではHHJとは何か?それは次の3つになる。

H:否定しない

H:批判しない

J:自分の話をしない

「実は〇〇で悩んでて、△△しようかと思っているんだ・・・」

「いや、それは止めた方がいいよ。自分の経験から言うとね、××で・・・」

自分が相談する立場で、このような返事が来たらどう思うだろうか。普通は、もう相談するのを止めようと思うだろう。このように文字にすると分かりやすいのだが、実践するとなると出来ていない人が以外と多いのである。

人は感情で動く生き物

なぜHHJが難しいのか?まず前提として、これを知っておく必要がある。

「人は感情で動く生き物である」

人が行動する時は、感情が常にセットになっている。何かする時、それは何かをするのが目的では無くて、それらをする事で得られる「感情」が目的になっている。

友達と遊ぶのも、楽しいという感情を得るためだし、食事をするのも、美味しい、もしくは幸せという感情を得るためなのだ。

ではコミュニケーションにおける感情とは何か?それは自分の事を知ってもらいたい、肯定してもらいたいという事である。

人間が仲良くなるステップとして、次のような段階を経る。

  1. 当たり障りの無い情報を出し合い、相手を知る(どんな人なのか、共通点を探す)
  2. ある程度、相手の事が分かってきたら少しプライベートな話しをしてみて相手の価値観を確認する
  3. 同じような(もしくは共感できる)価値観だった場合、何回か合ってみる事で一緒にいるとどうなるかを確認してみる
  4. 一緒にいるメリット(尊敬出来る点)があると感じたら、更に親密になる

上記を見てもらうと分かるが、基本的に人は似たもの同士が仲良くなる傾向がある。なぜなら、その方が自分を肯定してもらえる可能性が高いからだ。しかし自分の価値観はなかなか変えられない。ではそんな時にどうするか?それは相手の話を聞く事だ。

人間は基本的にお喋りである。喋るという行為にはドーパミンを出す作用があり、それが理由の1つでもある。なので話しを聞く事だけで好印象を持ってもらえる。そしてこの時に意識するのがHHJなのである。HHJを徹底する事で、相手が勝手に信頼できる人と認識してくれる事さえある。それほど協力なツールでもあるのだ。

欲望の断捨離

HHJは意識すれば誰でも出来る事だ。これはコミュ力や性格は関係無いとも言える。ちなみに、このHHJを商売レベルまで高めているのが、キャバ嬢やホストのトップクラスの人達でもある。この人達は天性の才能に加え、HHJを使っているので大金を使ってでも会いたいと思わせる事が出来るのである。

ただ普段の人間関係において、そこまでHHJを高める必要は無い。相手とコミュニケーションを取る時に、少しだけ意識すれば今までと格段にコミュニケーションが円滑に進むだろう。自分の事を話したいという欲求を押さえるだけなのだ。本書ではこれを欲望の断捨離と呼んでいる。

その他のテクニック 本書には、HHJ以外にも「心のセンタリング」などいくつかのテクニックが記載されている。どれも重要なので、その辺りは自分で読んで確認してもらいたい。

【個人的補足】

信頼とは相手からされる事で、自分1人でどうこうなるものではない

人はなぜ傾聴を行うのか。それは相手の事を知りたかったり、仲良くなりたいからだろう。その上で、傾聴を行う上で重要なのが聞き手側の心理で、聞き手はどうしても「信頼されたい」、「気に入れられたい」という気持ちがある。

では信頼される、気に入られる為に何をしているか。多くの人は、自分の話や意見を言ってしまっている。それが相手にとって良い事だと思っているのだ。つまり自分の価値観を相手に押しつけていい気になってしまっている。そして話すのは気持ちがいいので、いつの間にか説教のようになってしまっている事さえある。

これでは仲良くなる事は難しい。やらなきゃいけない事と逆の事をしてしまっている。

相手と仲良くなりたければHHJを意識するのだ。そして存分に話してもらえばいい。

沈黙が恐い時は、相手から出るキーワードをピックアップしよう。相手の話を深掘るようなイメージだ。これが上手く出来る様になると、相手が話している時間が9割を超えるようになる。話せば話すだけ「知ってもらえた」という感情が芽生えるので、相手が満足してくれる。

信頼とは相手からされる事で、自分1人でどうこうなるものでは無いのだ。