採用基準

【概要】

  • 著者:伊賀 泰代
  • 発売日:2012年11月9日
  • ページ数:248ページ

本の目次

序章 マッキンゼーの採用マネージャーとして
第1章 誤解される採用基準
第2章 採用したいのは将来のリーダー
第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
第4章 リーダーがなすべき4つのタスク
第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方
第6章 リーダー不足に関する認識不足
第7章 すべての人に求められるリーダーシップ
終章 リーダーシップで人生のコントロールを握る

【結論(1番の訴求ポイント)】

不足している普遍的なリーダーシップを持った人材

織田信長や坂本龍馬、スティーブジョブズ、イーロンマスク。

リーダーシップを持った人物は誰か?と聞かれて思い浮かぶの人達だろう。この人達に共通するのは、何か大きな事を成し遂げた(もしくは成し遂げようとしている)事である。壮大なビジョンを持ち、強烈な行動力で現実にしていく。この姿に人々はリーダーシップを照らし合わせる。そして時にそれはカリスマと呼ばれたりもする。

しかしこのようなカリスマリーダーシップを持っている人はそうそう現れるものではない。元々の才能に加え、運と本人の努力が無いと発揮されないからだ。織田信長が令和の時代に生きていたら、間違い無くパワハラ社長で大問題になっていただろう。

しかし普段の仕事や生活において、このようにカリスマと呼ばれるような強力なリーダーシップが必要かと言われるとそうとも言えないのである。

むしろ一部の人しか持てないカリスマリーダーシップを持った人を待つのではなく、普遍的なリーダーシップを持った人が多く育成される必要があると著者は言っている。カリスマと普遍的なリーダーシップの違いは、後天的に身に付けられるかどうかという点だ。

本書は採用基準というタイトルだが、内容はリーダーシップについて記載されたものである。

今、現場で必要とされているリーダーシップとはどのようなものかを知りたい人には参考になるだろう。

【ポイント】

リーダーシップは後天的に身に付ける事ができる

リーダーシップは生まれ持った能力である。

これは半分正解で半分間違いだ。リーダーシップには種類がある。1つは限られた人だけが持つカリスマリーダーシップ、2つめは誰でも持つ事ができる普遍的なリーダーシップだ。

カリスマリーダーシップを持った人は、その能力がゆにえ歴史に名を残すような事を成す可能性がある。しかしこのような人達はそうそう現れるものではない。今の日本に必要なのはカリスマリーダーシップではなく、普遍的なリーダーシップなんだと著者は言っている。

では普遍的なリーダーシップとはどういったものか。その前にリーダーというのはどういう人なのかを理解しておく必要がある。著者はリーダーの役割を下記の4つとしている。

これらを実施する人をリーダーとしている。ではこれらの能力は先天性のものなのだろうか。

答えは否である。

1つ1つ見てもらえれば分かるが、誰でも出来る事ばかりだ。そして実はリーダーシップは至るところで発揮されていたりする。例えば忘年会を実施する時を考えてみよう。

  1. 目標を掲げる → 楽しい忘年会にする
  2. 先頭を走る  → お店を決める、場合によっては協力してもらい下見にも行く
  3. 決める    → お店やコース、当日のスケジュールを決める
  4. 伝える    → アナウンスする

こんな感じだ。リーダーシップが無いと物事が進まないのである。他にも探してみると色々なところで発揮されているのが分かるだろう。

このように個別に因数分解していくと、各項目自体はそう難しくない。どうだろうか?経験さえ積めば誰でも出来る事だと思えるはずだ。

リーダーシップは後天的に身に付ける事が出来る。しかし社会においてまだまだリーダーシップを発揮している人が少ない。これには何か原因があるのだろうか?

リーダーシップ不足問題

日本においてリーダーが不足している最も大きな理由は、リーダーシップを持った人を育成する環境が不足しているためだと著者は言っている。これには原因がいくつか考えられる。

その1つにあるのが学校教育だ。戦後の学校教育はリーダーシップとは無縁の教育をしてきた。リーダーシップは一部の人が取るものであり、多くの人は必要無いといった具合だ。むしろリーダーシップを発揮するような人は周りから浮いてしまう事すらあった。

昭和の時代はそれでも良かった。それで上手くいっていた時代でもあった。しかし時代は変わる。令和の今では、その考えが通用しない。過去の例が役に立たなくなってきているのだ。

ではずっとリーダーシップは学べないのか。いや、リーダーシップを育成する環境は自分で作る事もできる。

本書の中では環境を作る事について、いくつか具体的な方法が記載されている。バリューを出す事、ポジションを取る事、仕事を自分事化する事、ホワイトボードの前に立つ事などである。そして、この中で個人的に一番効果的だと思うのが「ポジションを取る事」だ。

リーダーシップは自分1人だけでできるものでは無い。周囲に仲間や同僚がいて初めてリーダーシップが必要になる。複数人いるという事は、それぞれに考えがある。全員が一致するような答えなどそうそう出るものでは無く、その中でリーダーは自分のポジションを取り、決めていかなければならない事もある。チームとして動く事で、個人では達成出来ないような結果を出す事を目標とするためだ。

極端だが決める事さえ出来れば、走りだす事ができる。ゴールが明確になるからだ。決める事さえ出来れば、それを仲間に伝える事もできる。自分の行動を変えるのは1人でも出来るが、他人の行動を変えるのはリーダーシップが必要なのである。

このように決める事がリーダーがやるべき項目のベースになっているのが分かる。世の中には決められない人がいる。他人に決定権をゆだねてしまうのだ。これは前述のように学校教育も影響している。しかし後天的に身に付ける事もできるのである。

リーダーシップは全員に求められるもの

会社員である以上、仕事は基本的に単独でやる事は少ない。同僚や仲間、上司、部下がいる。その中で著者はリーダーシップは全員に求められるものと言っている。ここには役職は関係無い。個々がリーダーシップを持って日々の業務やタスクに取り組む事が重要なのだ。

ではリーダーシップ経験が無い人がチームに加わると、どんな事が起きるだろうか?

あなたの職場にいないだろうか?戦略会議において、大局には関係無い重箱の隅をつつくような事ばかり指摘してくる人。

このような人はリーダーシップ経験が乏しいか、皆無な事が多いと記載されている。これには完全に同意である。このような人はチームとしての結果よりも自分の疑問点の方を優先してしまっているのだ。無論、生産性とはほど遠い考えになる。

しかしリーダーシップ経験があれば、何を優先すべきかが分かるようになる。今、自分が疑問に思っている質問は、大局関係無い(つまり無駄な質問)だと気づく。そうすれば、質問するのは今じゃないなと分かるようになるのである。

リーダーシップ経験が少ないと、非常に非生産的なメンバーとなってしまうのである。

【まとめ】

自分の生き方を自分で決めるのに必要なのがリーダーシップ

リーダーシップがあると何事も自分で決める事が出来るようになる。つまり自分の主導権を握っているという事だ。

逆にリーダーシップが無いと、他人に決められた事をやる事になる。これは仕事でも家庭でも同じだ。

偉大なリーダーも最初は小さな成功体験がら始まっている。孫正義氏の言葉に、「豆腐を1丁2丁と数えるように、売り上げも兆単位で数えられるようにする」的なものがある。今では日本を代表する企業の1つだが、当時はほら吹きとまで言われていた。そこから強力なリーダーシップを武器に今の状態にまで成長させてきたのである。

誰もがカリスマリーダーのようになる必要は無い。しかし全員に普遍的なリーダーシップは必要だ。

本書はそんなリーダーシップについてケーススタディも含めて記載してある。

リーダーシップとは?という問いに明確な答えが出せない人、また20代の若手には読んでみてほしい1冊である。