もくじ
【概要】
- 著者:伊賀 泰代
- 発売日:2016年11月25日
- ページ数:248ページ
本の目次
序章 軽視される「生産性」第1章 生産性向上のための4つのアプローチ
第2章 ビジネスイノベーションに不可欠な生産性の意識
第3章 量から質への評価へ
第4章 トップパフォーマーの潜在力を引き出す
第5章 人材を諦めない組織へ
第6章 管理職の使命はチームの生産性向上
第7章 業務の生産性向上に直結する研修
第8章 マッキンゼー流 資料の作り方
第9章 マッキンゼー流 会議の進め方
終章 マクロな視点から
【結論(1番の訴求ポイント)】
成長する事とは生産性が上がる事
仕事において人が成長するという事はどういう事を指すか。業務を覚える、知識が増える、担当する事が増える、新しい事に取り組む事ができる。おおよそこのようなイメージだろう。
これらに共通する事は何だろうか?それは個人の生産性が上がるという事である。生産性とは次のように定義されている。
「生産性=産出量(アウトプット)/投入量(インプット)」
つまり過去と比較して、多くのアウトプット(出来る事)を出せるようになった状態という事だ。
100万円の売り上げという結果を出すにしても、定時内に終わらせる人もいれば、残業をする人もいる。結果という点で見れば同じアウトプット量という事になるが、そこに至るまでのプロセス(インプット)は全然違う。100万円の売り上げを出すのに1万円で出せる人と、100万円必要な人では、同じ売り上げ100万円でも全然意味合いが変わってくるのだ。そしてこの概念は日本人に不足している事だとも著者は述べている。
業務量が多い、だから人を増やそう!ではなく、今いる人数で対応できないか?削れる業務はないか?を考える。量より質で考えるのだ。
GDPが全ての指標になるとは思っていないが、今や1人当たりのGDPが2023年現在で31位だ。(人口が5,000万人以上で換算すると6位)であり、バブル期と比較すると低下しているのが分かる。
international monetary fund(IMF),GDP current prices
より少ないインプットで、より多くのアウトプットを出す。
これが今の日本に必要な事なのだ。
【ポイント】
生産性向上には2パターンある
「生産性を上げる」と聞いてどんな事をイメージするだろうか。
機械化する、コスト削減する、人件費を削る、ノー残業Dayを作るなどが上がるかもしれない。
著者は一言で生産性を上げるために2つのパターンがあるとしている。それが「改善」と「革新」だ。上記で上げた項目は「改善」に分類されるだろう。
しかし生産性を上げるには「革新」というアプローチ方法もある。そしてその「革新=イノベーション」を起こすにあたって、Time for inovationとMotivation for inovationの2つが必要だと述べている。
Time for inovationとMotivation for inovation
Time for inovationは日頃の改善による生産性向上で、それによって生み出された時間をイノベーションを起こすために使うという考え方だ。これは「改善」に近い考え方だろう。
一方のMotivation for inovationは目の前の不便さを解決したいという思いから生まれるイノベーションだ。これには問題意識と問題解決意欲が必要になる。これを達成するためには売り上げを2倍にするには?などの通常では難しい課題を設定し、それに望む事がイノベーションに繋がってくる。
このような不便さを改善しようとして生まれたのがインターネットやスマートフォン、AI技術とも言える。インターネットの登場で国外の従業員とも簡単にコミュニケーションが取れるようになり、交通費やその他の経費が格段に下がったし、AIで単純な作業は自動化出来るようになった。スマホもパソコンを手のひらサイズにした事で、出来る事が格段に増えた。
しかし目の前の不便さは意識して見ないと見えてこない。なぜなら人は良くも悪くも慣れる生き物だからだ。
最初は不便だと思っていた作業も、繰り返していく内に「こんなもんか」と思い始める。そうすると不便が不便じゃなくなる。そうなると低い生産性のまま業務をこなしていく事になるのである。このような状態はあなたの職場にも無いだろうか?
例えば書類の電子化もそうだろうし、エクセルでマクロを組めば数秒で終わる事も、わざわざ数値を打ち込んでいたりしないだろうか?
慣れる事の非効率さ
この間、部下がやっていた事で下記のような事があった。
パソコンでCDやDVDを読み込むハードディスクが壊れたので修理を依頼したらしいが、少し時間がかかるとの事で、それまでの間は他のパソコンで代用して欲しいとの事だった。
やはり自前のパソコンで光学ドライブが使えないと不便だ。最初はそう思っていたのだが、それを繰り返している内に段々と慣れてくる。終いにはそれが普通になっていた。
そんなある日、わざわざ他のパソコンでデータを読み込んでいる様子を不思議に思った上司が、それを指摘して本人も非効率さに改めて気が付いたという例だ。結局、外付けのHDを付けて対応し、ものの1分で完了したのだが、実はこのような慣れにマスクされているものは多くある。
生産性を上げるには、なにもインターネットのような社会全体に対する大きなイノベーションは必要無い。個人レベルの生産性を上げるだけでも会社にとっては大きなメリットになる。そしてこのイノベーションには、ある程度の制限があって生まれる事が多い。制限があるからこそ別ルートで物事を考えるようになるためだ。その結果、従来の方法とは違った解が出てくるのだ。
生産性とは時間を作る事
そもそも生産性を上げる必要があるのか?
答えはYesだ。企業は成長していかなければならない。なぜなら成長し売り上げを上げる事で、新たな設備投資が出来るようになるからだ。その設備投資がさらなる成長を生み、しいては雇用を守っていく。
企業は人間と同じだ。成長を止めると老化していく。筋肉も使わなくなれば衰えていく理屈と一緒だ。だから常に成長をしていく必要がある。そして成長する為には新しい事業や商品を作っていかなければならない。
しかしこれらには時間が必要だ。一方で現場には、やらなければならないルーチン業務もあり余裕は無い。なので仕事は常に増えていく一方になる。
ここで生産性の考えが必要になる。生産性を上げる事で今までと同じ結果をより少ないインプットで出せるようになれば、生産性向上で作れた時間を新規事業に充てるのだ。
つまり生産性を上げるという事は時間を作る事とも言える。生産性を持ち込んでいい業務とダメな業務
著者は生産性の考えを全ての業務に持ち込む事は違うと言っている。Time for inovationには、考える時間や実験する時間が必要なのだ。ここに生産性を持ち込むと実験回数が少なかったり、熟考が足らなかったりする質が低いアウトプットになってしまう。生産性の概念を持ち込むのは「改善」の方になる。「革新」の方では無いのだ。
現場では生産性の概念が浸透していない為に、業務が次から次へと増えていき、結果パンクしている所も少なくない。業務には優先順位がある。昔は有効だったが、今はそれほど結果に繋がっていないものもあるだろう。
生産性が低いという事は、生産性が上がる余地は多くあるという事でもある。
管理職の仕事はチームの生産性をアップさせる事
今の時代、全ての部門で生産性の考えが必要になる。管理職はこの事を頭に入れておかなければならない。
まずは自分のチームや組織を確認してみよう。いわゆる「働かないオジサン、オバサン」がいるのではないか。年功序列制度の影響もあり、これらの人達は給与に対して十分なアウトプットを出していない事が多いとされている。つまり生産性が低い状態だ。
このゾーンの人達は一定数のボリューム数がある。他に転職出来ないからだ。著者はこのゾーンに再教育して、全体の生産性を上げる事が必要なのでは?と言っている。
一般的に「働かない~」は誰からも期待されていない。与えられる業務もワクワクするものではない。人は未来を見いだせないオペレーション作業の繰り返しが働く人の疲弊の1つだと言われている。
ここを再教育して生産性を上げる事で大きな時間を生み出せるのではないだろか?
相手に求めるものを明確にする、そのために必要な研修は実施する、定期的に評価面談を実施し期待している事を伝える、結果に対してフィードバックをする。これくらいやれば変わってくるだろう。
そして管理職の役目はここでもある。全体を見通してどこにテコ入れすればチームの生産性が上がるかを考え実行するのだ。大きなアウトプットを出すために何が問題なのか、どこがボトルネックなのかを見つける。そしてそこに対する改善策を打つ。イメージして欲しい。「働かない~」が生き生きと仕事をするようになったら生産性が大きく上がると思わないだろうか?
個人の生産性を上げて対応するには限界がある。チーム全体で考える必要がある。
【まとめ】
量ではなく質をコントロールする
著書は他にもトップパフォーマーをどうやって育成するか、マッキンゼーではどのように生産性を上げているかなどの具体例も交えて記載されている。具体例だけあってイメージしやすいものもあるだろう。
人手が足らない、残業が日常化している、効率が悪い、このようなものを感じている人は、一読してみてはどうだろうか?
仕事においてコントロールするものは、量ではなく質である。
そしてこの生産性の概念は仕事だけじゃなくプライベートにも必要になる。
超高齢化社会を迎えるにあたって、子供の育児だけでなく親の介護もやる必要があるかもしれない。仕事、育児、介護、どう考えても時間が足りない。じゃあ、どうやって時間を作るか。Time for inovationで解決できるのか、Motivation for inovationも必要なのか。
このように、生産性の考えは仕事だけではなく普遍的に必要なのだ。