もくじ
【概要】
- 著者:ちきりん
- 発売日:2011年10月27日
- ページ数:247ページ
本の目次
序 「知っている」と「考える」はまったく別モノ1 最初に考えるべき「決めるプロセス」
2 「なぜ?」「だからなんなの?」と問うこと
3 あらゆる可能性を検討しよう
4 縦と横に比べてみよう
5 判断基準はシンプルが一番
6 レベルをそろえて考えよう
7 情報ではなく「フィルター」が大事
8 データはトコトン追い詰めよう
9 グラフの使い方が「思考の生産性」を左右する
終 知識は「思考の棚」に整理しよう
【結論(1番の訴求ポイント)】
人は考えているようで考えていない
「知識」と「知恵」の違いが分かるだろうか。では「仕事」と「作業」の違いは?
このように改めて聞かれると回答に苦慮する人も多いのではないだろうか。簡単に言うと、考えているかどうか?なのだが、本書は考えるという事はどういう事かを具体例も含めて記載されている。脳神経科学では「Use it, or Lose it」という原則がある。これは神経回路が使われないと神経細胞同士の結びつきが弱くなる事だが、何も脳神経科学に限った事ではない。筋肉(筋細胞)も使わなければ衰えていくし、筋トレをすれば肥大していく。つまり使わないと、機能が弱くなっていくという事だ。
今現在を含めて、これからの時代、情報過多やAIによって益々自分の頭で考える事が必要になる。知識レベルではGoogleやChat GPTに敵う人間はいない。そのような時代をどう生きていくのかを本書を参考にしながら考えてみるのもいいと思う。
【ポイント】
思考と知識の違い
冒頭でも出てきた、「思考」と「知識」の違い。これをもう少し掘り下げてみよう。
これらの違いは、自分なりの1つの解釈案だが、知識は過去に誰かが考えて答えが出ているもの、思考は今現在、自分が考えている事であると言えると思う。これら2つの差(違い)は何かというと、自分の頭で考えている「プロセス」が入っているかどうかという事である。例えば、頭痛薬。これは過去に誰かが考えて答えを出したものであり、今を生きる人にとっては知識である。単純にロキソニンが鎮痛薬と知っているかどうかだ。ここに考えるというプロセスは発生しない。(ちなみに医者のように患者の症状やデータから、どの薬が効果あるかを判断するのは思考になる)一方で、新しい癌治療薬を考えている場合は正解が出ていないので思考になる。
そして思考にはその性質上、必ずトライ&エラーが必須になる。そしてトライ&エラーには仮説を立てる必要がある。仮説にはデータが必要だ。つまり、思考とは仮説を立てると言い替える事も出来るのではないかとも思う。そして仮説を立てる以上は、少なくとも自分の中で答えが出ていない事ではないと成り立たないのである。
このように、一見すると同じように見える「思考」と「知識」だが、実は中身は全然違うものなのである。
考えるという事はインプットをアウトプットに変換する事
上記で思考とは仮説を立てる事だと記載した。これは言い替えるとインプットしたデータから仮説という名のアウトプットを出すという事でもある。ここで考えるという行為が必ず入る。何故なら仮説(今までにない事)は、考えないと出てこないからだ。データから導き出される推論を自分の考え、解釈を加える事でその人の意見(仮説)になる。インプットした内容をそのままアウトプットするのは他人の意見であり自分の意見ではない。
またこの考えるという行為は、体力を使う行為でもある。やってみると分かるが、多くの情報から精度が高い仮説を立てるのは、そうそう出来る事ではない。かなりのエネルギーを使う。慣れないうちは、もう何も考えたくないとさえ思う事もあるだろう。しかし、自転車に乗れるようになるのと一緒で、最初は繰り返し経験していくしかない。この過程で失敗などを経験する事で、それが精度の高い仮説への第一歩になる。
世の中にはインプットして満足してしまっている人が多い。これではもったいない。情報やデータ、知識をインプットしたら、自分なりに解釈してアウトプットしてみよう。
思考の深さは、どれだけ反論を自分の中に作れたかで決まる
同じデータや知識をインプットしてもアウトプットに差が出る場合がある。両者とも同じ条件で考えているはずなのに、なぜ差が出てしまうのだろうか。
これは次の2つが関係している。
- 問いかけ(深掘り)の回数
- 反論の回数
本書ではその深掘りに対してます、「なぜ」、「だから何なのか?」の2つを実行してみると良いと記載してある。「なぜ」はその事象が起きた理由を、「だから何なのか?」はその情報から起きる事象を考える事である。
「体がだるい」→(なぜ)最近、体力やストレスが多かった
→(だからなんなのか?)風邪を引くかもしれない
こんな感じだ。これをする事で、因果関係が分かる。そして出てきた事に対して、自分の中で反論を作ってみる。上記の例でいうと、「体がだるい人が全員風邪を引く訳じゃないよね?」というようなイメージだ。
そうすると、じゃあ、風邪の前駆症状は何が一番多いのかを調べてみようという事になる。そうすれば、体がだるいのと風邪との因果関係が分かり、よりパワフルな意見になる。
この「反論を作る」というのは、ほとんどの人がやっていない。でも強力なツールだ。是非やってみる事をお勧めする。【個人的補足】
頭の回転が早い人がやっていること
俗に言う、頭の回転が早い人。実はこの頭の回転が早い人は程度の差はあれ、誰でもなれると思っている。この頭の回転が早い人は、何もその場で1から情報を精査している訳じゃない。
普段から「なぜ」「だからなんなのか」「反論」の3点セットを実行しているのだ。
そしてこの経験を頭の中にストックしておく。そして後日、似たような事象が起きた時に参考にする。これをアナロジー力とも言ったりするが、要は普段から考えているかどうかという事だ。
繰り返しになるが、多くの人は自分が思っている以上に考えていない。知識を思考だと思ってしまっている。それではあまりにも勿体ない。
本書は上記以外にも、自分と相手の議論のレベルを揃える、事象についてあらゆる可能性の探り方、情報よりもフィルターの重要性などがケーススタディと共に記載してある。
上記で興味が湧いた人は、一読してみると良い。
関連書籍
著者は他に3つの書籍がある。本書を含めて、これからに必要な能力について執筆したと言ってる。興味があれば他の書籍も一読してみると良いと思う。