自分の意見で生きていこう

【概要】

  • 著者:ちきりん
  • 発売日:2022年1月22日
  • ページ数:336ページ

本の目次

  1. 「意見」とはなにか、なぜ必要なのか
  2. 「反応」だけではダメな理由
  3. SNS時代に「自分」を創る
  4. 生きづらさから脱却しよう
  5. リーダーシップの最初の1歩
  6. オリジナルの人生へ
  7. 練 「意見」をもてるようになる4つのステップ

【結論(1番の訴求ポイント)】

自立しよう

自立と聞いてどんな事をイメージするだろうか?親元から離れて、1人暮らしする事が多くの人が思い浮かべる事だろう。

自立には2つのパターンがある。金銭的な自立と精神的な自立だ。金銭的には親の援助を受けずに自分で生活費を稼ぐ事、精神的は他人への依存度を無くす(少なくする)事で、自分で物事を決めていく事である。基本的に、決めるという事は自分の意見を必要とする。言い替えればポジションを取るという事なのだが、世間にはこのポジションを取る事ができていない(もしくは意図的に取らない)人が多いとされ、本書はこの自分の意見を持つ事を強く推奨している。

自立する事は責任が発生する反面、自由になるという事でもある。自由に振る舞い、責任は他人が取るという事は通常はあり得ない。しかし自由に生きてこそ人生は楽しいものでもある。

自分というのが分からない、なんとなく周りに流されている人生だと感じた事がある人は一読をお勧めする。

【ポイント】

多くの人は「意見」と「反応」の違いを知らない

「意見」と「反応」の違い。これが本書のキーワードの1つである。

この違いが分かるだろうか。多くの人は言語化するのが難しいのではないかと思う。

定期的に目にする有名人のSNS炎上。これはある(極端な)意見に対して、世間の常識という名の正義感が増幅してコメントが集中する事で起きる。しかし、そのコメント内容をよく見てみると、2パターンに分けられる事が分かる。それが「意見」と「反応」だ。

  • Aさんの主張「世の中には病気などで生きていくのが逆に辛いと感じる人もいる。日本にも安楽死制度を導入するべきだ!」
  • Bさんの意見「私は反対です。なぜなら××なので~」
  • Cさんの反応「そんな意見は横暴だ!問題発言だ!」

この違いが分かるだろうか。実は炎上と呼ばれるものの多くのコメントは、「反応」が占めている事が多い。これらの違いは本書では「自分のポジションを取っているかどうか」という言葉で示している。この表現は冒頭にも使ったが、まさに目から鱗だったのを記憶している。ポジションを取るというのはどういう事か?

それは、自分の立場が分かるようにするという事である。

つまり賛成なのか、反対なのか。ここをハッキリさせましょう、話しはそれからですという事だ。これを当てはめると上記のやり取りの違いが分かると思う。これが「意見」と「反応」の違いだ。「意見」が持てれば「自分」というのが形成されていく。「自分」が形成されれば、自分の人生を自分で生きていく事が出来る。まずは自分の意見を持つ事から始めようと本書は語っている。

世の中には正解がある問題と正解が無い問題があり、意見には正解も不正解もない

上記で「反応」と「意見」の違いを述べたが、多くの人が勘違いしている問題がもう1つる。それは「全ての事柄に対して、正解があると思い込んでいる事」だ。簡単な例を出してみよう。

「シイタケは美味しいか?」

これに対して、Yesと答える人もいればNoと答える人もいるだろう。これらの回答に正解はあるだろうか?人の味覚の問題なので、どちらもあり得る。つまりどちらも正解だ。不正解は無い。しかし世の中には、この問題に対して絶対Yesだ。Noなんて間違ってる!と言ってしまう人がいる。これは「意見には正解も不正解もない」という事が分かっていないのだ。

戦後、何十年も変わらない学校教育の弊害

これは学校教育(義務教育)が影響していると思われる。早ければ幼児の段階から偏差値教育を受ける。この偏差値教育は基本的に正解がある問題ばかりだ。すでに誰かが作った答えを知っているか(もしくは解き方を知っているか)どうかが問われるので、正解か不正解しかない。このような教育を10年以上も受けていれば、そう考えてしまうのも無理はないようにも思える。

また年齢によるクラス分けという閉鎖的な空間も多様性を排除する要因になっている。同じクラスには今も昔も基本的に同じ年齢の日本人が大半である。裕福の差はあれど、基本的に日本人なので価値観にそう大差は無い。なので1つのアイデンティティの中で過ごしている。違う価値観に対してかなり排他的だ。

今まではそれでも良かった。人口増加で仕事は充分にあったからだ。ただし、今後は少子高齢化により医療などの一部を除き内需が減ってくる。つまり多くの業種では日本人相手では厳しくなってくる。これは観光業を見てもらうと分かりやすいだろう。今や京都などは外国の人の方が多かったりする。当然、海外の人と仕事をする事もあるかもしれないし、お客になる場合もある。国が違えば文化も価値観も違う。意見も違ってくる。特に海外の人は日本人と比較して自己主張が強いと言われている。

そのような時代に、正解が無い問題もあるという事を認識していないと、自分の価値観を押しつけるような多様性のかけらも無い人になってしまうだろう。当然、チームも上手く回らない。そんな人に対して世間や会社の評価はどうだろうか。想像に難しくない。

【補足】

反応がメインになってしまう理由

また本書ではポジションが取れない理由も考察されている。それは「意見」には少なからず反論が来るからというもの。

これは確かにそうで、意見に対して賛成の人もいれば反対の人もいる。考えてみれば誰でも分かる当たり前の事で、当然全世界共通の常識なんてものは無い。

人は否定される事を恐れる。実際には「意見」に対して反論が来ただけで、自分が否定された訳では無いのだが、ここが混同してしまっている。これがポジションが取れない(意見を言えない)理由になる。だから、どっちとも言えないような「反応」がメインになる。反応は否定される事も無い。ポジションが分からないからだ。

しかし自分の意見が無いという事は、言い替えれば他人の人生を生きているとも言える。

冒頭で自分の人生を生きたければ意見が必要と言った。まずは簡単な事からでいいので自分の意見を表明してみよう。晩ご飯のメニューを提案するのでもいい。「自分はカレーが食べたい」と表明する事で、自分の人生を生きている事になるのだ。

反応がメインで周りに流されながら生きるか、自分の頭で考えて意見を表明し自立するか。どちらの生き方が正解という事はない。自分の生き方を選んでもらえればと思うが、個人的には自分で人生を決めて生きたいと思う。

関連書籍

著者は他に3つの書籍がある。本書を含めて、これからに必要な能力について執筆したと言ってる。興味があれば他の書籍も一読してみると良いと思う。