【臨床症状】70代 肝硬変 他院にて上行結腸背側部に腫瘍疑い、門脈浸潤疑い
【問題】画像所見と診断名は?
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- S7に動脈相から平衡相にかけて造影不良域を認める
- 動脈相にて膿瘍腔と浮腫性反応、区域性濃染からいわゆるduble target signが疑われる
- 他院にて上行結腸背側の腫瘤疑いは、この病変である可能性がある
- 上記所見から肝膿瘍が第一に疑われる
- また門脈の抹消(P2やP6、P7中心)にて抽出不良を認め、血栓による塞栓が疑われるが、明らかな浸潤所見は認めない
- 他、右肺胸水、肝嚢胞、腎嚢胞、憩室などを認める
【肝膿瘍】
・肝膿瘍は細菌性と非細菌性(アメーバ性、真菌性)に分けられる
・症状は、発熱や肝腫大、腹痛などだが、非特異的な所見である事が多い
・感染経路は胆道性、門脈性、肝動脈性、隣接臓器からの直接性、外傷性、医原性などがあるが、原因が不明な特発性も少なくない
・胆道性は多発する事が多く、門脈性は孤立性(特に右葉)が多い
・門脈性は骨盤内や消化管の炎症を先行感染とする場合が多い
・アメーバ性は右葉後区域に好発し、単発で大きく円形(卵円形)の形態を認める事が多い
・治療法は抗菌薬の投与やドレナージなど
・画像所見は初期では充実性腫瘤と類似するが、膿瘍を伴う程度までになると、中心(膿瘍腔)が造影されないな単房性、または多房性の低吸収域を呈する
・周囲の肉が組織から成る膿瘍壁は造影でリング状の濃染を認め、平衡相にかけてリング状濃染が厚くなる
・その外側は反応性浮腫のために低吸収域になり、また区域性に造影効果を認める
※動脈相にて区域性に造影を認める理由は、炎症による門脈枝の狭小化や閉塞によって区域性に門脈血流が低下し、代償性に動脈血流が増加することによると考えられている
・これらを総合して、Duble target signと呼ぶ
・~30%程度に膿瘍腔内にガスを認める事もある
参考書籍:すぐ役立つ救急のCT・MRI 改定第2版