【臨床症状】60代 動作緩慢
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 矢状断
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- T1WI矢状断にて小脳の萎縮を認める
- またT2WIで橋にhot cross bun signは認めないが、基底核(被殻)外側にslit signは認める
- 上記画像所見と臨床症状より、多系統機能萎縮症の基底核タイプ(MSA-P)と診断できる
- その他に異常所見は認めない
【多系統萎縮症】
・多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)は、脊髄小脳変性症の中に分類され、非遺伝性(孤発性)で、神経変性が小脳以外にも広がるものを多系統萎縮症としている
・臨床症状は、パーキンソンニズム、小脳症状、自律神経障害、錐体路障害などの組み合わせで徐々に進行する
・小脳皮質や橋核、オリーブ核、線条体、黒質、脳幹などに変性を認め、そこに疾患特異性の高い封入体(αシヌクレイン)が存在する事から、αシヌクレイノパチーに分類されている
・40代以降に発症し、孤発性がほとんど
・発症時には運動症状か、もしくは自律神経不全の片方の症状を有する事が多い
・予後は悪く、発症後平均5年で車椅子生活になり、8年程度で臥床状態となる
・優位となる臨床症状によって、大きく次の2つに分類されている
- MSA-C(小脳症状優位)
- MSA-P(パーキンソンニズムが優位)
・画像所見はMSA-CとMSA-Pで各々特徴的な所見がある
《MSA-P》
- 被殻の背外側優位の形態変化を認め、T2WIで萎縮による線状の高信号(Slit sign)を認める
- 同部位に鉄沈着を認める事もあり、T2 StarやSWIが有効な事もある
《MSA-C》
- 橋や中小脳脚などの脳幹や小脳の萎縮を認める
- 橋に橋横走線維の変性を示唆する、T2WIで十字型の高信号のhot cross bun signを認める事が多い
・診断にはMRIが有用だが、MRIの感度は76.9%、特異度は100%というデータもある
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版
参考文献:Luke A Massey, Caroline Micallef, Dominic C Paviour, et al:Conventional magnetic resonance imaging in confirmed progressive supranuclear palsy and multiple system atrophy