【臨床症状】60代 血痰
【問題】画像所見と診断名は?
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- 左肺S6に小葉中心性の境界明瞭な粒状影と連続する樹枝状影(いわゆるtree-in-bud appearance)を認める
- また気管支拡張も随伴している
- 上葉の胸膜下には肥厚、もしくは楔状の瘢痕も認める
- 右肺S9にもtree-in-bud appearance疑い
- 肝、脾臓に石灰化を認めold Tbの疑い
- 上記より(2次性)肺結核の疑い
※精査のために紹介となり、その後の経過が追えなかったため疑いどまりの症例
【肺結核】
・肺結核とは結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染症のこと
・肺結核症は、感染、発病の間にリンパ行性、血行性、管内性といった様々な菌の転移様式をとる
・肺結核症の経過は、感染による滲出性反応、特異的免疫による増殖性反応、壊死細胞が排除されてる事による空洞形成、結核菌の封じ込めによる硬化性反応の順に経過する
・硬化性反応では、肉芽腫による結核菌の封じ込めが起こり、次第に硬い組織に変化していくが、内部には結核菌が存続しており、数年~数十年後の内因性再燃の原因となり得ると言われている
・また結核症は次のように分類される
<一次結核症>
- 結核菌に感染後、すぐに発症した状態
- 免疫が低下した高齢者に多い
- 結核菌が肺胞に達し感染が成立しても、免疫機能などにより被包化され通常は治癒に至る
- しかし一部で治癒が成立せずにリンパ行性、血行性の進展が続き、発症に至る事があり、これを一次性(初感染)結核と呼ぶ
<二次結核症>
- 初感染時に肺胞が被包化されると大部分はそのままだが、一定期間経過後に何らかの理由で病巣が破綻した結果、結核菌が活動し発症した状態
- 経気道的に散布され、上肺野に病変を作る
<気管支結核>
- 結核菌が気管や中枢気管支の粘膜を侵す病態
- 肺病変と比較して気管や気管支病変が著しい場合のことを指す
- 若年女性に多く、左主気管支が侵される事が多い
<粟粒結核>
- 結核菌が全身性に血行性に散布され、微小結核結節を形成する病態
- 宿主が何らかの免疫低下の状態である事が多い
・画像所見は、活動性病変の場合はS1、S2、S6中心に粒状影、結節影を認め、空洞を形成することもある
・またtree-in-bud appearanceも見られる事がある
※tree-in-bud appearance:小葉中心性の境界明瞭な粒状影と連続する樹枝状影
・免疫低下状態での結核では、空洞病変など典型的な画像所見を認めない事がある
参考書籍:困ったときの胸部の画像診断