【臨床症状】30代 CA19-9:256
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 拡散強調、T2-FS矢状断
➡ 造影MRI
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- 各種シーケンスにて弓状子宮を認める
- これによる泌尿器奇形の合併は認めない
- 右卵巣には3.5cm程度のT1WIで高信号の多房性嚢胞を認め、背側にやや濃染される部分を認める
- 内膜症性嚢胞を疑うが、定期的に病変の増大がないかの確認は必要
- また子宮体部他に複数の子宮筋腫も認め、いずれも筋層内に存在している
- 子宮頚部にはナボット嚢胞も認める
- その他、リンパ節腫大などなし
- 上記より右卵巣内膜性嚢胞疑い(要フォロー)、複数の子宮筋腫、ナボット嚢胞、弓状子宮となった
【Müller管奇形】
・子宮や膣は胎生10週あたりからMüller管の発達や癒合、尿生殖洞により形成される
・この時、Müller管の発達、癒合障害によって様々な子宮奇形を生じる事が知られている
・主なものとしては次のようなものがある
《Müller管の癒合に障害が起きた場合》
- 中隔子宮:中隔が消褪せずに残存している状態
- 弓状子宮:子宮の上部が弓状の形のもの
- 双角子宮(単頚):癒合不全により子宮体部が2つに分かれて存在する状態
- 双角子宮(双頚):癒合不全が子宮頚部にまで及んでいる状態
- 重複子宮/重複膣:膣まで2つに分かれている状態
《片方のMüller管の発育不良による場合》
- 副角子宮:発育不良の子宮(副角)が付属している状態
- 単角子宮:片方の子宮が全く発育しない状態で、角状の子宮や卵管が1つだけ存在する
・いずれの場合も正常例と比較して妊孕性や流産率が高い(流産率は32~44%で、正常の場合における30歳の流産率は高くても20%程度)
・Müller管の奇形がある場合は、しばしば尿路系の奇形も合併する
・これらはMRI画像(T2WI)で容易に診断可能だが、双角子宮と中隔子宮の鑑別は難しい場合がある
・その他に子宮低形成や無形性の場合もあり、原発性無月経症の原因にもなったりする
・原発性無月経症の原因には次のようなものがある
参考書籍:婦人科MRIアトラス 改定第2版
- 子宮や卵巣の奇形:Rokitansky–Küster–Hauser症候群など
- 染色体異常に伴う性腺の異常:Turner症候群、Swyer症候群など
- 視床下部異常などによるホルモン異常:副腎性器症候群
- アンドロゲン不応症:外性器は女性であるにも関わらず、精巣が停留睾丸として存在し、子宮や膣上部が欠損している状態
ジェネラリストを目指す人のための画像診断パワフルガイド 第2版