【臨床症状】70代 男性 軽度認知機能低下
【問題】画像所見と診断名は?(海馬付近のT2WIでの高信号はなに?)
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- 両側側脳室の軽度拡張が疑われる(Evans Indexは0.3)
- また高位円蓋部の狭小化、シルビウス裂の拡大も疑われる事からDESHの所見陽性と取る事もでき、iNPHの除外が必要
- また両側海馬に2mm程度の嚢胞性結節病変を複数認める
- FLAIRで信号が低下している事、海馬に近いという特徴的な部位から海馬溝遺残と診断できる
- その他の所見として、左側脳室近傍、橋正中左側に陳旧性脳梗塞疑い
【海馬溝遺残】
・通常は消失するはずの海馬溝の一部が残存し、脳脊髄液を含む腔として存在している状態
・歯状回とアンモン角との間に存在する事がほとんど
・画像上では、側脳室下角内側に2mm程度の嚢胞性結節として描出される
・頻度は多く、半数近くに見られるというデータもある
・臨床的意義は低く、特に治療の必要は無い
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版
【特発性正常圧水頭症】
・特発性正常圧水頭症(iNPH:idiopathic normal pressure hydrocephalus)とは、くも膜下出血や髄膜炎などの先行疾患がなく、歩行障害を主体として認知症障害、排尿障害をきたす脳脊髄液吸収障害に起因した病態
・高齢者に多く見られ、緩徐に進行する
・適切なシャント術によって症状の改善を得る可能性がある症候群である
・歩行障害、認知機能低下、尿失禁を3徴とする
・60代以上に多く見られ、DESH(Disproportionately Enlarged Subarachnoid space Hydrocephalus)と呼ばれる特徴的な所見がある
《DESH所見》
- 脳室拡大(Evans Index(両側側脳室前角間最大幅/その部位における頭蓋内腔幅)>0.3)
- 高位円蓋部脳溝の狭小化
- シルビウス裂や脳低槽の拡大
・脳梁角(callosal angle:CA)はほとんどが90°以下を示す
・脳梁角はAC-PCラインに垂直な後交連上の冠状断で測定する(AC-PCラインに垂直じゃないと誤差が大きいと言われている)
・MRIでDESH所見を呈しているにも関わらず、症状が無い(無症候)場合もあり、これはiNPHの前駆状態と考えられている
・高齢者の1.5%程度で見られるともいわれている
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版
参考文献:特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第2版