さてさて、今日は下垂体関連疾患についてレクチャーしてくで。
ラジャリンゴ!
もくじ
下垂体腺腫(microadenoma、macroadenoma)とは
下垂体腺腫の概要
microadenomaとmacroadenoma
今日は下垂体腺腫や。
これも髄膜腫と並んで日頃の検査でよく目にする疾患やな。
下垂体腺腫にはmicroadenomaとmacroadenomaに分類出来るんやけど、この分類方法って知ってるか?
大きさですよね? 確か1cm以上で分けてた記憶があります。
1cm以下をmicroadenoma、それ以上がmacroadenomaかと。
その通りや。たまには正解すんねんな。ちょっと驚いたで。
下垂体腺腫は、下垂体前葉から発生する良性の腫瘍で、成人におけるトルコ鞍内腫瘍の中で最多の疾患や。
ちなみに腫瘍内に出血や梗塞を起こした状態は下垂体卒中になるで。
参考までに、無症状で検診なんかで偶然見つかるパターンを incidentaloma とも呼んでるで。
機能性腫瘍と非機能性腫瘍
下垂体腺腫はホルモン過剰生産の有無で機能性と非機能性腺腫に分類されるんや。過剰産生される方が機能性や。
機能性下垂体腺腫でのホルモン過剰分泌は、プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどがあるわ。ほとんどが甲状腺刺激ホルモン以外の3つやで。
副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍は、ほとんどが女性で、下垂体後葉前部から発生する事もあんねん。
下垂体腺腫の臨床症状
症状としては、次のようなものがあるで。産生ホルモンによって違いがあんねん。
- プロラクチン産生腫瘍の場合は、月経不順など女性ホルモンに関係する症状
- 成長ホルモン産生腫瘍は、小児では巨人症、成人では末端肥大症が有名
- 副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍は、全身倦怠感や食欲不振、中心性肥満などで、病名としてはCushing病(クッシング病)がある
非機能性下垂体腺腫は腫瘍の大きさによっては視野異常が出現してくるわ。
下垂体腺腫の概要まとめ
下垂体腺腫は、冒頭にも話した通り、実はかなり頻度が高い腫瘍で、脳腫瘍全体の10~20%程度を占めるとも言われとる。
非機能性はmacroademomaの事が多いんやけど、サイズが大きくなると海綿静脈洞への進展の有無が重要になるで。なぜなら、手術で取り切れるかどうかの重要なファクターの1つやからや。
まとめるとこんな感じやな。
分類 | 内容 | 臨床症状 | 他 |
---|---|---|---|
機能性腺腫 | プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン 甲状腺刺激ホルモンが過剰産生される | プロラクチンは月経不順など 成長ホルモンは巨人症など 副腎皮質刺激ホルモンは全身倦怠感や食欲不振など | 1㎝以上はmacroadenoma 以下はmicroadenomaと呼ぶ microadenomaは海綿静脈洞への進展の有無をチェック |
非機能性腺腫 | ホルモンを産生せず、周囲の組織を圧迫しながら増大する | 視野障害など | 同上 |
頭部の解剖
次に下垂体周辺と頭部の解剖を載せておくわ。忘れてしまった人がおったら、コレを見て思い出しておいてや。


画像所見
下垂体腺腫の画像所見
次に画像所見についてや。
基本的には、充実性の腫瘍で、出血を10%程度で、石灰化を数%程度で確認できるで。
一方で実はこれという特異的な画像所見はあらへんねん。産生ホルモンによって違ってきたりするしな。
その中でも1番診断に有効なのが造影剤を使ったDynamic検査や。下垂体は元々血流が豊富やから腺腫があると相対的に欠損像として観察されるんやで。
ただ注意が必要なのは下垂体腺腫自体は血流が乏しい訳や無いという事や。あくまで下垂体と相対的に比較してって意味やで。
ちなみにMacroadenomaになると、内部に出血性嚢胞変性を来す事があるで。
下垂体腺腫で重要なのは腫瘍が出来る部位と臨床症状やな。これらと画像所見を総合的に合わせて診断してくんや。
下垂体腺腫の画像所見 |
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【microadenoma】 ・T1WIで等~軽度低信号、T2WIで等~軽度高信号 ・Dynamic検査(特に60秒あたりのフェーズ)で欠損像を示し、遅延造影を示す ・他のシーケンスでは非特異的な所見は無い ・内部に出血性嚢胞変性がある場合がある 【macroadenoma】 ・T2WIで等~軽度高信号を示すが、出血や壊死、嚢胞変化があると内部不均一になる ・大きさが1cm以上で、充実性腫瘤 ・MRAでA1付近が挙上しているのが特徴的な所見と言われている ・内頚動脈の狭窄や2/3以上の取り囲みがあると海綿静脈洞への浸潤のサイン ・内部に出血の有無(macroadenomaの30%程度に見られる) ・鞍上部に進展する場合は、鞍隔膜でくびれを形成して雪だるまのような形状を示す事が多い 【プロラクチン産生腺腫】 ・男性では頭蓋底や海綿静脈洞への浸潤傾向がある 【成長ホルモン産生腺腫】 ・下方伸展とT2強調で低信号 【副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫】 ・Microadenomaが多く、下垂体前方からも発生する |
実際の症例
次に実際の画像や。Dynamic画像で下垂体右側に欠損像を認めるで。下垂体腺腫と診断された例や。Dynamic以外のシーケンスやと分かりづらいけどな。

次は50代男性でmacroadenomaの例や。海綿静脈洞への浸潤を認めるで。

鑑別診断のポイント
Rathke嚢胞 下垂体卒中
鑑別診断やけど、同じような部位に出来る主な腫瘍としてRathke嚢胞や下垂体卒中があるな。
まずRathke嚢胞やけど、辺縁が平滑で境界明瞭な嚢胞や。嚢胞やから造影効果はあらへん。また腫瘍の出来る位置も重要や。
腺腫の7割は外側に偏位しているんやけど、Rathke嚢胞は9割近くが正中に位置してるわ。またRathke嚢胞はT1強調で高信号、T2強調で低信号なのが特徴や。
下垂体卒中は、腫大した下垂体の出血や梗塞性変化の有無、下垂体の偏位があるかどうかで判別可能や。出血があるからそれに応じたCTやMRIの信号強度になるで。
後は特徴的な臨床症状があるから、それを参考にしてもええな。頭痛や視力障害、眼痛などで、下垂体腺腫の内分泌負荷試験中に発症する事も知られとるわ。
他の鑑別診断が必要な疾患は、頭蓋咽頭腫や鞍上部くも膜嚢胞、視床下部過誤腫、髄膜腫なんかがあるで。
今回はこれら全部はやらへんけど、興味があったら自分で調べてみるとええで。
一応関連記事も載せておくわ。
まとめ
今日は下垂体腺腫についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
比較的高頻度の腫瘍で、トルコ鞍内腫瘍の中で最多
microadenomaとmacroadenomaがあり、大きさ1cmを境に分類する
microadeomaはDynamic画像で欠損像があるかどうかが有効
これらが他の疾患との鑑別診断ポイントになるで。
結構メジャーな疾患やけど、知らない事も沢山あったやろ。
そいうえば以前にレクチャーしてもらった疾患が、この前の当直の時にあって当直医から感謝されました。
ええやん!素敵やん!
そういったのをどんどん増やしていきーや。そうすればモチベーション維持にもなるやろしな。
今日は救急やあらへんから、そんなに急ぎで診断する必要は無いかもしれへんけど、こういった症例もいつか役に立つかもしれん。
またドクターから感謝されるように頑張るんで。
ほな、精進しいやー!