こう見ると沢山あるんやな。
確かにそうですね。
まだ何も言ってへんやん。適当に返事すなよ。
ワシが多いって言ったのは小児の脳腫瘍や。そもそも小児の脳腫瘍自体少ない方ではあるんけど、その中でもいくつもの種類があんねん。ざっと挙げただけでも、神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍、遺伝性脳腫瘍・・・
神経膠腫にはさらにグレード別で分類されてるからな。これだけ種類があるって事は、罹患した人もおるって事の裏返しやからな。
ちなみに気になったから小児がんと診断された数がどれくらいおるか調べてみたで。
0~14歳 | 内訳 0~4歳 | 内訳 5~9歳 | 内訳 10~14歳 | |
総数 | 2117 | 926 | 554 | 637 |
男 | 1151 | 483 | 303 | 365 |
女 | 966 | 443 | 251 | 926 |
これは国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」の2019年のデータやねんけど、この総数の中で脳腫瘍の割合は33%程度らしいで。つまり年間600人程度って事やな。これを多いとみるか少ないとみるかは個々による所やけど。
なんで小児の脳腫瘍の話しになったかって言うと、今日のレクチャー内容をジャミノーマにしようと思うてたからなんや。ジャミノーマは完治率が高い脳腫瘍でもあるんやで。ほな、さっそくいこか!
胚細胞腫瘍(germinoma)とは
胚細胞腫瘍の概要
まずgerminomaってのはな、胚細胞腫瘍の中の1つなんや。
そもそも胚細胞腫瘍は何かっていうと原始生殖細胞が腫瘍化したものや。じゃあ、原始生殖細胞って何かって話しなんやけど、これは将来的に生殖細胞になる大元の細胞と考えてもらえればOKや。
同じ胚細胞腫瘍に奇形腫があるんやけど、成熟奇形腫以外は悪性の分類になるで。つまり胚細胞腫瘍は悪性に分類されるって事やな。
30歳未満に多く発症し男性に多い脳腫瘍や。脳腫瘍全体の2~3%くらいの割合やな。約50%が松果体に、20~30%が鞍上部に発生するで。中枢性尿崩症がきっかけで判明する事が多いで。このあたりは奇形腫と似てる部分が多いな。
臨床症状としては、基底核部に出来ると進行性片麻痺、不明熱、視力障害などや。松果体部は眼球運動障害なんかがあるな。
正中に単発、時に多発性に発生して、腫瘍は被包化せんと周りに浸潤していくねんて。
現状の治療方法は生検で確定したら、化学療法と放射線治療や。オペで切除術は行ってへん事が多いで。なによりMRIで見える範囲以外にも広がってる事が多いらしねん。やからオペでMRIの範囲を切除してもほぼ再発してくんねんて。
あと放射線感受性がメチャ高いねん。せやから化学療法に加えて、放射線治療も必須らしいな。
簡単に表に纏めておいたわ。これ覚えとき。
特徴 | 臨床症状 | |
---|---|---|
germinoma | 原始生殖細胞が腫瘍化 30歳未満の男子に多い 50%が松果体に20~30%が鞍上部に発生 放射線感受性が高い 治療は化学療法と放射線治療 多発する事もあり | 腫瘍が出来る部位によって変わる 主な臨床症状は中枢性尿崩症 他に片麻痺、不明熱、視力障害、眼球運動障害など |
画像所見
胚細胞腫瘍の画像所見
次に画像所見についてやな。
T2強調では基本的に低~等信号やけど嚢胞成分を伴うと高信号部分が出てくるで。T1強調では等信号、拡散強調では軽度高信号、造影では均一に濃染される事が多いな。増大により出血や嚢胞性変化を伴うと不均一な造影効果になることもあるで。
これらが基本的な画像所見や。単純CTで高吸収を示す事が多のも特徴やな。
これらも簡単に表にまとめるとこんな感じや。
DWI | T2WI | T1WI | FLAIR | CE | |
---|---|---|---|---|---|
germinoma | 軽度高信号 | 低~等信号だが、 嚢胞成分があると高信号 | 等信号 | T2強調と同様 | 均一に造影されるが、 出血や嚢胞成分があると不均一になる |
ちなみに特異的な所見があらへんと思った人もおるやろけど、むしろそいうった所見がある方が少ないで。ジャミノーマに関しては画像所見の他に発生部位や臨床所見、腫瘍マーカーの値を参考に読影する事が重要やねん。
ちなみに今回の例で言うと、臨床症状に一致した部位、例えば松果体や鞍上部、基底核などに上の画像所見があった場合は、HCG-β、AFPの値を確認してみると、よりgerminomaの診断がつけやすくなるで。ただそこまで情報が揃ってない事もあるから、実際はgerminoma疑いって形で記載する事になるやろな。読影については出来るだけ情報があった方が助かるのは間違いないで。
実際の画像
実際の画像や。今回は適当な画像が無かったからRadiopediaから参照してるで。この例は松果体に腫瘍を認めて、胚細胞腫の診断となっとる。
別症例や。こっちもGerminomaの症例やで。
鑑別診断のポイント
他の胚細胞腫
germinomaの鑑別診断やけど、まずはgerminoma以外の胚細胞腫瘍があるな。例えば、奇形腫、絨毛癌、卵黄脳腫瘍、松果体細胞腫などや。
ただこれらは鑑別が困難な事も多いで。なんせ元々は胚細胞腫瘍というくくりで同じやからな。胚細胞腫瘍の中にgerminomaがあったり奇形腫があったりすんねん。
また、基底核に発生したgerminomaで神経膠腫との鑑別を要する場合があったりすんねんけど、神経膠腫との鑑別はCTが有効な事があるで。germinomaは細胞密度の高さを反映して高吸収になるねん。一方で神経膠腫は低吸収になるから、ここで鑑別出来る事が多いで。
まとめ
今日のまとめや。今日はgerminomaについてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
30歳未満の男児に多く、好発部位は松果体と鞍上部で70~80%を締める事
主な臨床症状は尿崩症や視覚障害、ふらつきなど
基本的な画像所見はT2強調で基本的に低~等信号、T1強調では等信号、拡散強調では軽度高信号、造影では均一に濃染される。他の臨床情報(HCG-β、AFPなど)も確認する事が大切
こんな感じや。ジャミノーマは化学療法と放射線治療がメチャ効くという話や。ただMRIでは境界明瞭に見えても浸潤性やから以外と範囲が広かったりするらしいねん。その為に全脳室照射する事が多いらしいな。何にせよ、他の脳腫瘍と比較すると完治を見込める率が高いのは何よりや。
一方で治療効果判定なんかでMRIは撮影するから、所見や病気の知識を覚えておくのは重要やで。
ほな、精進しいやー!