ベル麻痺/Ramsay-Hunt症候群(Bell’s palsy/Ramsay-Hunt syndrome)

この前、友達が顔面神経麻痺になってん。

あらら。

ベル麻痺/Ramsay-Hunt症候群(Bell’s palsy/Ramsay-Hunt syndrome)とは

ベル麻痺/Ramsay-Hunt症候群の概要

さてせっかくやから、今日はBell麻痺とRamsay-Hunt syndromeについてやってこうかなと思う。

Bell麻痺

Bell麻痺は突発性の原因不明な急性末梢性顔面神経麻痺で、半数以上が半年程度で自然治癒するのが特徴的や。

特に好発年齢や性差はあらへんと言われてるけど、発症のピークは40代やとも言われとる。

通常、麻痺の原因が不明な場合にBell麻痺と診断されんねんけど、最近は単純ヘルペス1型(HSV-1)が原因とも考えられてるで。

症状は片側の顔面神経麻痺がメインや。

顔面神経麻痺の50~80%程度を占めて、ほとんどがBell麻痺やで。

Ramsay-Hunt症候群

一方のRamsay-Hunt症候群はherpes zoster virus(水痘、帯状疱疹ウィルス)で引き起こされる顔面神経麻痺や。

臨床症状はこちらも顔面神麻痺などなんやけど、顔面神経麻痺を起こしている側に帯状疱疹や難聴、耳通を伴ったりする事もあるで。

Bell麻痺と比較して難治性という報告もある。

これら2つは末梢性顔面神経麻痺の2大原因で、割合的にはRamsay-Hunt症候群症候群が10%程度で、Bell麻痺は前述した通り~80%くらいや。

つまり、この2つで90%程度を占めるって事やな。

臨床症状

両疾患とも顔面神経麻痺が主な症状やで。味覚障害や涙液分泌障害などを伴う事もあって、これらの症状から顔面神経のどの部位が障害されているかの判断をすることもあるで。

Bell麻痺は顔面神経麻痺のみやけど、Ramsay-Hunt症候群は水痘ウィルスが原因やから、帯状疱疹なども併発することもあるで。

治療法

治療法としては早期のステロイドの大量投与が一般的や。ウィルス性の場合は抗ウィルス薬を投与して治療するで。

Ramsay-Hunt症候群は発症後3日以内にステロイド、抗ウィルス薬を投与すると治癒率が70%程度まで上がるという報告もあるらしいな。

この疾患で重要な脳神経の5~7番の解剖と2つの病気の概要をまとめておくわ。

脳神経(顔面、聴、三叉神経)
概要臨床症状
Bell麻痺突発性
半年程度で回復する
末梢性顔面神経麻痺の50~80%
筋力低下や顔面神経麻痺
Ramsay-Hunt症候群herpes zoster virusが原因
末梢性顔面神経麻痺の10%程度
発症後3日以内に治療を開始すると治癒率が上がる
突発性難聴、耳通、顔面神経麻痺、帯状疱疹など
予後

Bell麻痺は自然経過でも数か月の間に半数以上は回復すんねん。せやから予後は良いとも言えるな。治療を開始した場合でも早期に治療効果がみられる場合も予後が良いと言われとる。

Ramsay-Hunt症候群は、自然治癒は40%程度と言われとる。上でも話した通り、発症後3日以内にステロイド薬、抗ウィルス薬を投与すると回復する確率が格段に上がるとも言われとるで。

画像所見

ベル麻痺/Ramsay-Hunt症候群の画像所見

次に画像所見についてやな。診断するにはMRI、それも造影が必須やで。

顔面神経は通常でも造影効果があったり左右差があったりするんやけど、内耳道や小脳橋角部では正常時において造影効果は認めへん点がポイントや。

ここに造影効果を認めると顔面神経麻痺が疑われるで。

これらはベル麻痺、Hunt症候群両方の所見と思ってもらってOKやで。

画像所見
Bell麻痺/Hunt症候群神経に沿った造影効果
顔面神経節は正常でも造影される事があるが、内耳道や小脳橋角部の造影効果は正常では見られない

ちなみに両方に言える事なんやけど、臨床的にBell麻痺やHunt症候群が疑われた時の画像診断の役割は、他の類似疾患のルールアウトになる事が多いねん。

CTやMRIで顔面神経麻痺となるような腫瘍などの除外をするのが目的ってことやな。

っていうのも臨床症状である程度の診断が可能なんや。他に腫瘍性での麻痺なのか等を調べる事がメインで検査する事が多いねん。

実際の症例

実際の画像や。ベル麻痺と診断された例や。左顔面神経に造影効果を認めると思うで。なかなか小さい所見やけどな。

臨床症状を参考にするのが重要やで。

頭部MRI-ベル麻痺

鑑別診断のポイント

神経鞘腫や血管腫など

鑑別診断には、神経鞘腫やウィルス感染、血管腫などやな。

ポイントっちゅうポイントもあらへんのやけど、上でも話した通り正常例でも顔面神経は造影される事もあるから正常例との鑑別は常に必要になってくるかもな。これらは臨床症状や他のデータも参考にしながら、読影するとええで。

基本的には画像診断でBell麻痺やHunt症候群を診断するというイメージよりは、その他の疾患を除外していくという感じやで。

近いところに出来る腫瘍やと聴神経腫瘍なんかがあるで。

後は臨床症状からの鑑別するとしたら、急性期(ラクナ)脳梗塞があるな。

まとめ

今日はBell麻痺とHunt症候群についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

顔面神経麻痺の原因には、原因が不明なBell麻痺と水痘、帯状疱疹ウィルスが原因のRamsay-Hunt症候群がある

Bell麻痺やHunt症候群は顔面神経節、内耳道内、小脳橋角部の造影効果の有無をチェックする

Bell麻痺は自然経過でも半数以上が回復するが、Hunt症候群は治療開始時期によって予後が変わる

これかな。内耳道だけに造影効果があった場合、聴神経腫瘍(鞘腫)との鑑別が問題になる事があるけど、それは他の臨床データも加味して診断してもらえればと思うわ。

今回はボリューム的にはそれほどやないけど、たまに遭遇する症例やから知っておいてな。

ベル麻痺ってどんな感じなんですか?

ホンマに顔の半分が動かへんらしいで。

最終的にベル麻痺として診断されてステロイド治療で軽快してんけど、メッチャ大変やったって話しや。

1番きつかったのが水分をペットボトルから直接飲めへん事やって言ってたわ。麻痺してる側の口角から溢れてくんねんて。ほんで自分ではどうしようもなくて、しょうがあらへんからストローで飲んでたって言ってたわ。もちろん食べ物も溢れてくるから片側だけで咬んでたって言ってたなぁ。

最初は脳梗塞になったと思ったらしいで。朝起きたら顔の半分が動かへんくてヤバイって思ったって言ってたし。

まぁこの仕事してると、そう思うのも分からんくない気はするけど、こういうのは突然出てくるからな。

ビビってまうのも分かるで。

てな感じで、今日はこんなトコにしよか。

ほな、精進しいやー!