なに小便チビっとんねん。ちっちゃいシミ出来てるで。
冒頭からウソを言わないで下さいよ。明日の技師内カンファの担当で緊張してるんでちょっとリアルなんですよ。
なるほどな。誰しも未経験な事に対してはビビるもんや。失敗したらどうしようとか思いだすねん。
でも大丈夫や!失敗なんて他人は覚えてへんねん。
例えば後輩の失敗って覚えてるか?覚えてへんやん。言われて、そう言えば的な感じやん。
そんな程度なんよ。せやから気楽にやったらええねん。
ワシかて放射線学会で笑かしたろ思て、発表スライドの中に10個くらいボケ入れてんけど、誰も気がついてくれへんかった時もあるしな。
でも、今となってはそんな事は誰も思えてへんねん。
Take it easyや!
もくじ
脳出血(cerebral hemorrhage)とは
脳出血の概要
さて、今日は脳出血についてレクチャーしてこうかと思う。
これも脳梗塞と並ぶ頭部救急でのよく遭遇する&見逃したらダメな疾患やな。
まず脳出血とはどういう状態の事かと言うと、何らかの原因で脳内に出血を起こした状態の事や。出血すると何がマズイかと言うと、出血する事でその部位の脳機能が障害されてしまう事、脳ヘルニアを合併する可能性がある事があげられるで。その結果、意識障害や最悪の場合は死亡する事もあんねん。
原因としては外傷だったり動脈瘤の破裂だったり高血圧だったりやな。外傷は別として、生活習慣病と関連が深いねん。原因を大別すると、高血圧性、非高血圧性に分けられて、実は高血圧性が脳出血の80%をしめるとも言われてんねん。動脈瘤破裂なんかも高血圧性に該当するで。
出血する部位によって以下のように分類する事も出来るで。
部位 | 原因 |
---|---|
脳実質 | 動脈瘤やもやもや病など |
くも膜下出血 | 動脈瘤や脳動静脈奇形、外傷など |
硬膜外出血 | 外傷や腫瘍性など |
硬膜下出血 | 外傷など |
ほんで、今日はその中でくも膜下出血と高血圧性脳出血について話していこうと思う。全部やってもええんやけど、それだと今日中に終わるかどうか微妙な感じになってまうからな。
硬膜外、硬膜下血腫についてはこっちでレクチャーしてるから確認しておいてや。
くも膜下出血
まずはくも膜下出血についてや。まずは下のイメージ図を見てくれや。脳出血や脳梗塞の概要が分かると思うで。
脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜を経て脳実質が保護されとるのは知っとるな?くも膜下出血はくも膜と軟膜の間のくも膜下腔に出血が起きた状態の事を言うねん。
くも膜下出血は外傷性と非外傷性の2つに大別されんねん。非外傷性は動脈瘤の破裂で、外傷性は落下や頭部への衝撃によって起きるパターンや。この動脈瘤はほとんどが嚢状動脈瘤で血管分岐部に多く発生するで。高血圧なんかで血管分岐部に流圧がかかって瘤が出来る。そして大きくなって破裂して出血するという流れや。この辺りは動脈瘤の回で説明してるから、合わせて確認しておいてくれや。
動脈瘤以外の非外傷性の原因としては、脳動静脈奇形(AVM)、もやもや病、動脈解離、アミロイドアンギオパチー(CAA)、血管炎、他の脳出血の穿破などがあるで。これらは別で解説してるから、1度は見ておいてな。
リスクファクターは加齢や喫煙、肥満、高血圧なんかで生活習慣に密に関係してんねん。中年以降でやや女性に多いとされとる。
臨床症状は、なんと言っても頭痛や。よく言われるのがバットで殴られたような痛みや。バットで頭殴られた事があらへんから、どんなもんか分からんけど、それくらい痛いっちゅー事やな。一方で出血が軽微の時は痛みも少ない事があるらしいから、中には自分で鎮痛剤を飲んで対処してしまってる人も多いかもしれん。あとは意識障害や失禁、歩行障害なんかが程度に応じて出てくるで。
搬送されて来た時には意識が無い状態の患者さんも多いですね。
そうやな。まずCTで検査する事が多いと思うねんけど、CTで確認できる出血の分布でおおよその破裂部位も分かるで。
高血圧性脳出血
次に高血圧性脳出血や。
概要で話した通り、脳実質内の出血原因として高血圧性と非高血圧性があって、高血圧性の方が高頻度で80%を占めるで。高血圧性と名前がついているだけあって、これも生活習慣と関連が深いで。肥満や高血圧、喫煙、運動不足なんかが原因や。
ほんで高血圧性出血には好発部位ってのもあんねん。頻度が高い順に、被殻(40%)、視床(30)、脳幹(~10%)、小脳(~10%)、皮質下出血(~10%)や。基本的にくも膜下出血との違いは、出血する部位がくも膜下腔かそうじゃないかやで。
臨床症状は次の通りや。
- 被殻出血:頭痛や麻痺など
- 視床出血:頭痛や麻痺、意識障害
- 脳幹出血:頭痛や麻痺、意識障害
- 小脳出血:頭痛や嘔吐、運動障害
- 皮質下出血:部位に応じて
ワシが学生の頃は「出血は比較(被殻)しましょう(視床)」ってゴロ合わせで覚えたもんや。
くも膜下出血と高血圧性脳出血の特徴
簡単に2つをまとめるとこんな感じになるで。
原因 | 特徴 | |
---|---|---|
くも膜下出血 | 動脈瘤の破裂や外傷など | 中年以降でやや女性に多い 加齢や喫煙などがリスクファクター バットで殴られたような激しい痛みが特徴 出血が軽微なら痛みが少ない事もある 症状は意識障害や尿失禁、歩行障害など |
高血圧性脳出血 | 高血圧による動脈瘤の破裂など | 脳出血で高血圧性が80%を占める 好発部位は被殻(40%)、視床(30%)、脳幹、小脳、皮質下出血(~10%) 部位に応じた症状が出る |
治療法について
治療に関してやけど、治療法は大きくわけて2つあんねん。内科的治療と外科的治療や。
内科的治療は出血量が少ない場合で、降圧剤や抗浮腫剤を使って進行しないようにすんねん。外科的治療は、開頭して血腫を取り除く方法やな。脳ヘルニアが確認できたり、意識障害が起きてたりすると外科的治療になるで。
他に脳出血は手術適応かどうかの条件があんねん。それはサラッと紹介するだけにしとくわ。そこまで覚えきれへんやろしな。
手術適応 | 被殻出血で血腫量が31ml以上(直径4cm以上)、圧排が高度 皮質下出血は脳表からの深さが1cm以下 小脳出血は最大径が3cm以上で神経学的症候が憎悪している場合 |
手術適応なし | 部位に関係無く血腫量が10ml未満(もしくは直径2.5cm以内) |
画像所見
脳出血の画像所見
次に画像所見やな。
くも膜下出血も高血圧性脳出血も基本は出血やからCTでは高吸収に写るで。これは急性期からよく見られる所見や。
一般的に発症6時間以内のCT検査の感度や特異度はほぼ100%に近いんやけど、時間が経つにつれて感度は下がっていくで。
ちなみに、くも膜下出血を見る時のポイントは、
「本来黒く見えるくも膜下腔が、その通りに写っているかどうか」
これや。ここが黒く写っていないという事は何かしら原因があるという事や。これはホンマに微妙な所見の時があるから注意してーや。
脳出血における具体的な所見には下記のようなものがあるからチェックしてや。
- CT上での出血における高吸収域
- くも膜下出血の場合は脳溝の消失と高吸収域
- ペンタゴンサイン
MRIでも画像の見え方としては出血と同じや。T2強調は時間的経過によって様々、T1強調は亜急性期からは高信号として描出されるで。
急性期には低信号となる点に注意や。他にT2スターやFLAIRも有効な時もある。
出血箇所の特定
ちなみにくも膜下出血は破裂動脈瘤がどこかによって画像所見が違ってくるで。破裂動脈瘤の場所によって、出血量の左右差があったり、出血の濃度が違ったりするんやで。
なお、出血部位から動脈瘤を推定するときは下記を参照してな。
瘤の部位 | 出血箇所 |
---|---|
A-com | 前頭葉、透明中隔部 |
ACA | 脳梁、帯状回 |
IC-PC | 側頭葉 |
MCA | 側頭葉 外包 |
VA~BA | 第4脳室付近 |
時間経過の所見の変化
あとは時間的経過の表も作っておいたわ。これも脳出血の時の時間的経過を推察する時に参考にしてや。CTやMRIに限らずやけど時間的経過によって見え方が変わってくる点には注意が必要やな。
超急性期 | 急性期 | 亜急性期早期 | 亜急性期後期 | 慢性期 | |
---|---|---|---|---|---|
CT | 高信号 | 高信号 | 高信号 | 徐々に低信号 | 低信号 |
T2WI | 軽度高信号 | 低信号 | 低信号 | 高信号 | 中心は高信号、辺縁は低信号 |
T1WI | 軽度低信号 | 軽度低信号 | 中程度高信号+周囲は高信号 | 高信号 | 低信号 |
脳出血と合わせて確認するポイント
ちなみに脳出血を見つけた時に、合わせて確認する所見があんねん。知ってるか?
脳出血を見つけたら次の5項目も確認すんねん。特に脳実質の圧排所見の有無は重要やで。特に脳幹とかやと生命維持に関わるからな。これも覚えとき。脳室穿破していれば、その部位からも出血源特定の参考になることもあるで。
確認項目 | 詳細 |
---|---|
脳実質の圧排所見の有無 | mid line shiftの有無など |
脳ヘルニアの有無 | 鉤ヘルニア 大脳鎌下ヘルニア 下行性ヘルニア など |
脳室穿破の有無 | 被殻出血なら側脳室 視床出血なら側脳室と第3脳室 小脳や脳幹出血なら第4脳室 |
水頭症の有無 | 2次性水頭症、脳室の拡大など |
くも膜下出血の有無 | ペンタゴンサインなど |
ペンタゴンサイン
他にはくも膜下出血におけるCT画像で両側シルビウス谷や鞍上槽、脚間槽に高吸収を認めるものをペンタゴンサインとかヒトデサインとか呼ぶこともあるで。くも膜下出血の特徴的な所見や。これは1回見ておけば記憶に残るやつやから是非見といてな。是非覚えとき。
実際の症例
さて、実際の症例を見ていこか。
80代の女性で頭痛精査の例や。右側脳室穿破と左視床付近に出血を認めるで。
60代女性で転倒してからの倦怠感があって精査となった例や。小脳出血を認めるで。ただこれが転倒によるものか、動脈瘤破裂(高血圧性)によるものかの診断がつく前に転院になってるで。
50代男性で頭痛と吐き気精査や。くも膜下出血やな。この人は自力で来院してんけど、検査の結果、すぐに救急の施設に転院となったで。出血部位はA-com付近が疑わしいな。
50代男性で激しい頭痛と吐き気の精査や。こちらもくも膜下出血や。分布から脳底動脈からの出血が疑われとるで。
70代男性の症例や。各シーケンスの信号強度から急性期から亜急性期にかけての症例やと思われるで。
陳旧性脳出血のMRI画像も載せておくで。これはあまり緊急性はあらへんけど、参考までにな。
鑑別診断のポイント
髄膜炎や髄膜播種
鑑別診断やけど、髄膜炎や髄膜播種ではFLAIRでくも膜下腔に高信号を認める事があるから注意やな。
造影すると髄膜軟膜に増強効果を認めるで。
同様にFLAIRでくも膜下腔に高吸収を認めるものに低酸素脳症があるわ。これはくも膜下腔が高吸収になっているんやなくて、脳実質が低吸収になってる事で相対的にくも膜下腔が高吸収になっているパターンや。覚えておくとええで。
まとめ
さて、今日は脳出血についてレクチャーしたで。絞って解説したつもりが、脳梗塞と並んでかなりのボリュームになってもうたわ。ただそれだけ知っとかなアカンって事の裏返しでもあるからな。ポイントは次の通りや。
脳出血の部位別分類と出血源、頻度
時間経過による画像所見の変化(特にMRIにおける各シーケンスの信号強度)
脳出血を見つけた時に合わせて確認する所見(脳実質の圧排所見、脳ヘルニア、脳室穿破、水頭症、くも膜下出血の有無)
高血圧性脳出血には好発部位があったで。覚えてるか?脳出血の随伴所見と共に手術適応かどうかの基準もあったで。忘れてしまってる人は要復習や。
せっかくやから、このへんをカンファに組み込んでみると自分のアウトプットにもなって一石二鳥ちゃうん?是非やってみてや。失敗した所でどーせ誰も覚えてへんからな。せやから自信たっぷりに挑んでこいや。
なんか不安が無くなってきて、準備を念入りにしなくても大丈夫なような気がしてきてました!
アホ!それとこれは話が別や!事前準備はしっかりせぇ!しすぎるくらいせぇ!それがプロってもんやで。まったく、少し誉めるとすぐコレや。
ええか、気を抜くなよ。
ほな、精進しいやー!