脳動静脈奇形(cerebral arteriovenous malformation:AVM)

なぁMRIってメチャうるさいやん。あれってもうちょっと静かにならんの?

ほんとですよ!こっちが聞きたいくらいです!

なんで逆ギレしてんねん!

いやな、実はこの間MRI検査を受けてんけど、こんなにうるさかったっけって思うくらいやかましかったんよ。

あれってワシらは慣れてるからあれやけど、始めて受ける患者さんとか小っさい子供とかダメな人もおるんやないかと思うんよ。

実際おるやろ。予想以上にうるさかったとか、泣き出してまう子供とか。

もうちょっと静かになる技術が出来てもええんやと思うねんけどな。

MRIを撮影する事で得られる画像情報はメチャ大きいねんから、ちょっともったいない気がするわ。

脳動静脈奇形(cerebral arteriovenous malformation:AVM)とは

脳動静脈奇形の概要

今日は脳動脈奇形を話していこかな。

脳動静脈奇形は知ってるやろ。むしろ頭文字の略語の方が有名かもしれんな。せやAVMや。Arteriovenous malformationの略やで。

AVMは先天性の血管異常で、通常は動脈と静脈の間に毛細血管がある事で血流圧なんかが調整されとる訳やけど、AVMは毛細血管が何らかの理由で作られへんくて動脈と静脈が直接繋がってまってる状態の事を指すんや。

ほんで動脈と静脈が繋がってて血管塊が出来てる部位をnidusと呼んでんねん。Nidusにはfeederと呼ばれる流入動脈と、drainerと呼ばれる流出静脈があって短絡がある状態やで。

好発年齢は若い人(15~40歳)に多くて性差は特にあらへんで。

好発部位やけど、8割はテント上の一側性大脳半球に発生して、その内の7割程度が脳表に発生するんや。発生箇所の残りの2割は正中深部やテント下やで。

nidusの説明

このnidusが破綻すると脳出血やくも膜下出血になるんや。

一般的に年に2~4%程度で破裂すると言われとる。臨床症状は痙攣発作や頭痛なんかや。

これは別で解説した脳動脈瘤の1cmくらいの破裂率よりも高い数値なんやで。せやから若い人で外傷以外で脳内出血があった時は、まずAVMを疑えっちゅー言葉もあるくらいや。

Spetzler-Martin分類

以下にSpetzler-Martin分類を載せておくわ。これは治療方針の決定の為に用いられてるやつやで。

nidusの大きさ3cm未満:1点 3~6cm:2点 >6cm以上:3点
周囲脳の機能的重要性non-eloquent:0点 eloquent:1点
drainerの型表在性のみ:0点 深在性:1点
3因子の合計でgrade1~5に分類 grade3までが予後良好
eloquentは感覚、運動、言語、視覚皮質、視床下部~視床、内包、脳幹、小脳脚、深部小脳核など

治療法

治療法は開頭してのnidasの摘出や、カテーテルによるAVM塞栓術、他に放射線治療なんかがあるで。

放射線治療は照射してから、効果が出るまでにある程度の期間が必要な点が大きな違いやな。また、大きさや程度によっては経過観察になる場合もあるとの事や。

簡単に概要を纏めるとこんな感じや。

原因特徴
脳動静脈奇形原因不明(先天性の血管異常)若い人(15~40歳)に多く性差は無い
先天性の血管異常でnidusという血管塊が出来る
流入動脈(feeder)と流出静脈(drainer)がある
8割はテント上の一側性大脳半球に単発で発生し、さらに脳表が7割
稀に多発する時もある
年間の破裂確率は2~4%程
Spetzier分類でgrade判別をする
治療法は外科的治療や放射線治療などがある

画像所見

脳動静脈奇形の画像所見

次に画像所見についてやな。

未破裂時のMRI画像所見はT2強調で無数の蜂巣状の無信号領域(nidus)と拡張蛇行する血管が特徴的や。

破裂の既往があった時は、T2スターやSWIで検出しやすいで。造影MRAやとより詳細に描出出来るんやけど必須というほどでもあらへん。ただ確定診断や術前評価には血管造影が必要や。

AVMは結構特徴的な画像所見やから未破裂である程度大きいやつはほどんど間違う事があらへん。ただサイズが小さかった時なんかは、ちょっと判断に迷う事もあるかもな。

他に注意点は血流の遅いnidusは単純のTOFでのMRAでは信号を検出できひん事もあるから気いつけーや。可能ならfeederとdrainerまで指摘出来るようになるとええな。

簡単に画像所見について纏めておいたで。少なくともこれは覚えておき。

覚えておき。

なんで真似したん?

T2WI
脳動静脈奇形無数の蜂巣状の無信号領域のnidusと拡張蛇行する無信号の血管が特徴的確定診断や術前診断には血管造影が必要
血流が遅いnidusではTOF-MRAでは描出されない事があるので注意

実際の症例

実際の画像を見ていこか。T2強調で蜂の巣状の特徴的な画像所見やな。

頭部MRI-AVM2
上段左からT1WI、T2WI、下段左からT2スター、CE

10代女性で頭痛精査で発見された例や。FeederはMCAとPCA、Drainderは上矢状静脈と思われるで。

頭部MRI-AVM
上段左からMRA元画、T2WI、T1WI、下段左からT2WI矢状断、T2WI冠状断、MIP

これも10代女性の症例やな。前頭部にAVMがあるで。

頭部MRI-脳動静脈奇形
上段左からT2WI、T1WI、SWI、下段左からT2WI冠状断、MIP、MIP

鑑別診断のポイント

硬膜動静脈瘻や静脈奇形

鑑別診断やけど、脳出血を見た場合は他の原因があるかどうかの確認が必要やな。

ただ上でも言ったけど、若い人の脳内出血を見たらまずAVMを疑えって言葉もあるくらいや。その点は頭の中に入れておき。

他には硬膜動静脈瘻や静脈奇形ではnidusがあらへん事が鑑別ポイントや。Nidusを腫瘍と間違う事もあるかもしれへんけど、充実成分の有無を見ればおおかた判別出来ると思うで。

まとめ

さて、今日はAVMについてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

nidusという血管塊があって、Feeder(流入動脈)とDrainder(流出静脈)を特定する

若い人に多い(若い人の脳内出血を見たら、まずAVMを疑え!)

特徴的な画像所見(無信号のnidusと拡張蛇行血管、ただ血流の遅いnidusはTOFでは描出されない事がある)

この3点や。AVMも日頃の検査でたまに見かける症例やから、これを機に復習しといてな。

検診以外の人は基本的に何か症状があって検査しに来とる訳やから、何かある前提で画像を見るのも個人的には大切やと思うとる。

まぁ、これはワシの意見であり価値観やから他の人もそうやとは限らんけどな。人それぞれや。

さて、脳で糖分をかなり消費したからお腹が減ってきたわ。そろそろ終わりにしよかな。

ほな、精進しいやー!