放射線壊死(radiation necrosis)

分からんなー。メチオニンPETをやりたいところやな。

やっぱそうですよね。

どうしても放射線治療後のフォローやとな、壊死か再発が微妙な時があんねん。

こんな時にメチオニンPETが出来ればええんやけど、そもそもウチの施設にPETがあらへんからなー。

しかもPETを入れるとなると、機器や部屋の設備投資だけで結構な金額がかかるし、技師はんや医者も追加で補充せなアカンくなるしな。

患者さんの為にはあった方がええんやろうけど、なんとも難しいところやで。

レポートには可能ならメチオニンPET、難しければ1ヶ月後のMRIをオススメしますと書くしかあらへんかな。

放射線壊死(radiation necrosis)とは

放射線壊死の概要

今日は放射線壊死についてレクチャーしてくで。

正確には疾患とはちゃうねんけど、これも比較的良くみるヤツで、しばしば鑑別が必要になる事も多いんや。

放射線壊死ってのは、脳腫瘍なんかに対して放射線治療を行った後に出てくる障害の1つや。ちなみにこの辺りは知ってると思うからサラッといくけども、放射線障害には急性と遅発性があんねん。

急性は脱毛なんかで、放射線壊死は遅発性に該当するのは知っての通りや。放射治療後の数ヶ月~数年後に出てくるで。

周囲に浮腫を伴う事が多くて局所線量が60Gyを超えたり、照射範囲が広いと起きやすいという話もある。

放射線壊死に付随する症状の治療はステロイド投薬が多いんやけど、アバスチンを投与する例も増えてきたで。

脳腫瘍における放射線治療(SRS/SRT)

最近は定位放射線治療(Stereostatic RadioSurgery:SRS/Stereotactic radiotherapy:SRT)で小さな脳転移を治療する事が増えてきた事も関係してるんやけど、冒頭で言った通り再発と壊死の鑑別は難しい事が多いねん。

ちなみに定位放射線治療は、病巣に対して多方向から放射線を照射する事で周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えつつ高線量入れる放射線治療やねん。SRSとSRTの違いは照射回数だけやで。1回で終わるがSRS、数回に分けて照射するのをSRTと言ってんねん。

スード・プログレッション(pseudo progression)

放射線治療直後に病変が大きくなって増大が疑われるパターンの中にスード・プログレッション(pseudo progression)ってのがあんねん。

これは一時的に病変が増大してるように見えるだけで、悪化はしてへんねん。

もうちょっと詳しく言うと、免疫療法なんかによって活性化したリンパ球が腫瘍に集まって、あたかも増大してるように見えるのが理由やねん。せやからスード・プログレッションならいずれ治るんやけど、これもMRIじゃ見た目が再発/増大とほぼ同じやから鑑別が難しいねんな。

やっかいな事に、再発とスード・プログレッションが混在してる場合もあるしな。何にせよ鑑別が難しいって事や。

概要のまとめ

これまでの概要を記載しておくで。

原因特徴
放射線壊死高線量(60Gy以上)や広範囲の放射線治療再燃(再発)と鑑別が難しい
浮腫が著明
pseudo progressionがあり再燃と混在するパターンもある
治療はステロイドやアバスチン投与

画像所見

放射線壊死の画像所見

続いて画像所見や。

一般的には造影効果がある腫瘤と周囲の脳浮腫や。ただこれらはグリオーマや転移性脳腫瘍なんかとモロかぶりやから、実際問題でMRI画像のみで鑑別は難しいで。

以前は、soap bublle様、Swiss cheese様ちゅー所見も参考にしてる時もあったんやけど、最近はそのサインが出る前の小さな段階で所見が分かるようになってきたから、微妙やという意見もある。

ただsoap bublle appearanceやSwiss cheese configurationというのはどんなんかを調べて見ておくのはええと思うで。

画像診断のポイントは、「MRIだけでの鑑別診断は無理」って事や。せやから臨床経過で放射線治療後の人は、安易に再発とするんやなくて放射線壊死の線も考慮する必要があるって事やな。

実際の症例

実際の画像や。

肺癌の脳転移に対して放射線治療を実施した症例なんやけど、治療後にもリング状の造影を認めてて再発か壊死かの診断が難しかってん。

結局、定期的にMRIでフォローして増大を認めへんかったから壊死と診断されてフォローされとるで。

頭部MRI-放射線壊死
上段左かrあT1WI、T2WI、下段左からFLAIR、CE

鑑別診断のポイント

脳腫瘍再発との鑑別

鑑別診断やけど、これも何度も言ってるとおり再発と脳壊死のMRIでの鑑別は難しいねん。通常のMRI検査やと迷う事もしばしばや。

Methionine-PET

核医学のMethionine-PET検査は再燃か壊死かの鑑別に有効やと言われてるで。

Methionineはアミノ酸の1つやねんけども細胞分裂が活発な腫瘍に取り込まれんねん。Methionineの取り込みがあるかどうかで診断する事もある。ただやってる施設が少ないからやりましょうって言っても出来ひん事の方が多いのが難点や。

後は2022年度時点で保険適応になってへんから全額自己負担になってまう点も痛いトコやな。施設によってバラバラやけど、それなりにはするで。他にはMRSやperfusionMRIなんかも有用かもって言われてた時があるんやけど正直微妙って話や。

まとめ

今日は放射線壊死についてレクチャーしたで。ポイントは1つだけや。

MRIだけで放射線壊死と再燃(再発)を鑑別するのは難しい

まさにこれやな。

鑑別が難しい理由として、放射線壊死は再燃と同じような所見である事、スード・プログレッションで一時的に増大し再燃と紛らわしい事がある事、放射線壊死とスード・プログレッションは混在する場合がある事なんかや。

メチオニン(Methionine)PET検査がもっと色んな所で出来るようになれば、また話しは変わってくるかもしれんけどな。

一方で広く普及してへんって事は、それだけ需要も少ないって事の裏返しでもあるんやで。保険適応になってへんってのも大きいな。まぁ有効な検査ではあるんやけどな。

まぁ、嘆いててもしゃーないわ。今できる事をやるのみや。

ほな、精進しいやー!