これ読んでみぃや。メッチャ参考になるで。
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もくじ
アルツハイマー病(Alzheimer disease:AD)とは
アルツハイマー病の概要
普段検査してて認知機能低下の精査は少なくないやろ。こっちからすると普通だと思ってた事が、出来ひんかったりすんねんて。相手の心境を理解する意味でも一読しておくとええと思うで。
てな訳で、今日はアルツハイマー病や。通称ADとかAlzとか記載される事が多いで。
アルツハイマー病(AD)は海馬萎縮が原因の認知機能低下症で、1906年にアルツハイマー医師が報告したのが最初や。
まずは概要を確認してくれや。
アルツハイマー病の特徴 |
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・海馬傍回のアミロイド沈着や神経原線維変化での海馬萎縮による記憶障害が主な症状 ・進行すると易怒性などの症状も出てくる ・現在の罹患人数は600万人とも言われている ・アルツハイマー病の前段階としてMCIが提唱されている ・MCIのうち年間15%がADに移行するが数%は改善する ・これはMCIのなかにうつ病などの類似疾患が含まれているため ・アリセプトやレカネマブなどの治療薬が出てきてはいるが、いずれも根治薬ではない |
40~90代で発症して、認知症の60~70%がアルツハイマー病やというデータもあるで。
日本における罹患者数は500万人とも600万人とも言われてて、計算上やと高齢者の5~6人に1人はADに罹患している計算になるな。
65歳以下で早発性、66歳以上やと晩発性に分けられて、女性に多いというデータもあるで。早発性の若年性ADはアルツハイマー病のうち5%程度という数値もある。
こう見るとかなりメジャーな疾患や。しかも高齢化によって、この数字は今後も増えてくると予想されとるんや。
アルツハイマー(型認知症)病の原因
ADの原因は海馬の萎縮や。
じゃあ、なんで萎縮が起きるのかというと充分に解明されてへんのが現状や。
ただ海馬傍回のアミロイド沈着と神経原線維変化などで、それが海馬や扁桃体、側頭頭頂葉に病変が進展して萎縮が起きるのは分かってんねん。
この辺りは記憶を司る部分やから、萎縮なんかで機能が失われると認知機能が低下してくんねんな。ちなみに神経原線維変化はタウ蛋白が関係していると言われているで。アミロイドとタウ蛋白の2つが関係しているのは、ほぼ確定っぽいんやけど、詳しい原因解明は未だに出来てへんのが現状や。
アルツハイマー病の症状
症状はもの忘れなんかの軽度認知機能の低下から始まり、進行すると徘徊、失禁、性格の変化なんかが起きてくるで。これは病変が側頭葉や頭頂葉、前頭葉に進行してくるためや。病期診断はFAST(functional assessment staging)で分類されてるで。
FAST Stageと臨床診断 | FASTにおける特徴 | MMSEスコア | HDS-Rスコア |
---|---|---|---|
1.正常 | 主観的、客観的機能低下なし | ||
2.年相応 | 物の置き忘れ、物忘れなど | ||
3.境界状態 | 熟練を要する仕事の場面では機能低下が同僚によって認められる 新しい場所に旅行することは困難 | ||
4.軽度アルツハイマー型認知症 | 夕食に客を招く段取りをつけたり、家計を管理したり、買い物をしたりする程度の仕事でも支障をきたす | 19.6±4.1 | 19.1±5.0 |
5.中等度アルツハイマー型認知症 | 介助なしでは適切な洋服を選んで着ることができない 入浴時は説得が必要になることもある | 14.4±4.1 | 15.4±3.7 |
6.やや高度アルツハイマー型認知症 | 不適切な着衣 入浴に介助を要する 入浴を嫌がる トイレの水を流せなくなる 失禁 | 8.7±3.9 | 10.7±5.4 |
7.高度アルツハイマー型認知症 | 最大約6語に限定された言語機能の低下 理解しうる語彙はただ1つの単語となる 歩行能力の喪失 着座能力の喪失 笑う能力の喪失 混迷および昏睡 |
海馬付近の解剖
海馬付近の解剖を少し詳しく話すと、海馬体(hippocampal formation)という大脳辺縁系の一部があって、これは側脳室下角底部に突出してんねん。
海馬体は、海馬と歯状回(dentate gyrus)、海馬台(subiculum)、前 海 馬 台(presubiculum)、傍海馬台(parasubiculum)なんかで構成されてるで。一般的には海馬体=海馬みたいな感じになってる事が多いな。
ちなみに海馬はCA 1 からCA 4 までの4つの領域から構成されていて、アンモン角(cornu ammonis)とも呼ばれてんねん。
空間記憶障害
ちなみにADの症状の1つである徘徊の原因に、空間記憶障害があんねん。この空間記憶障害は、海馬の近くに嗅内皮質という部位があんねんけど、ここと海馬が萎縮する事で起きんねん。この2つには、「場所細胞」と「グリッド細胞」ってのがあって、各々の役割は次の通りやで。
- 場所細胞は特定の場所にいる時にだけ活動する細胞
- グリッド細胞は、場所細胞に位置情報を送って場所細胞が活動できるようにサポートしている細胞
つまり、グリッド細胞で空間地図を作って場所細胞が自分の位置を認識する事で、「自分はいま〇〇にいるな」という認識になる訳や。ここが障害されて自分が今いる場所が分からんくなるってメカニズムやで。
この嗅内皮質は海馬傍回の一部やで。海馬傍回は海馬の周囲に存在してる灰白質と大脳皮質領域の事や。合わせて覚えておき。
MCI(軽度認知障害)
MCI(軽度認知障害)
ちなみに、最近はMCI(軽度認知障害)って聞くようになったと思うねんけど、ADとMCIの違いって分かるか?
簡単にいうと認知症の前段階というイメージや。というのも、MCIの診断基準はいくつかあるのと、結構ふわっとしてんねん。ある程度の診断軸は同じなんやけどな。FASTでいうと、stage2程度の時やな。
またMCIの中でもその後ADに進行するパターンとせーへんパターンもあるらしいねん。だいたい年で15%程度がADを含む認知症に移行してるって言われとる。一方で数%程度やけど、MCI群の中には正常化するパターンもあるっちゅー話もある。
これはどういう事かというと、MCIと診断された群の中にはうつ病なんかの海馬萎縮以外の他の原因による疾患も含まれているっちゅー事や。これらが回復するパターンに該当するんやな。アルツハイマー病は基本的に回復はせーへん病気やで。
Petersen診断基準
ちなみにMCIではPetersen診断基準ってのがあって、以下の通りや。
- 以前と比較して認知機能の低下がある(本人、家族、医師からの指摘を含む)
- 記憶、遂行、注意、言語、視空間認知のうち1つ以上の認知機能領域における障害ある
- 日常生活は自立していが、以前よりも時間を要したり非効率であったり、間違いが多くなったりする場合がある
- 認知症ではない
臨床認知機能テスト
臨床での認知機能テスト(スクリーニング検査)ではHDS-R(長谷川式スケール)やMMSE(ミニメンタルステート検査)がメジャーやで。外診察の時にテストされたりするな。
【HDS-R】
- 即時記銘や遅延再生、計算などを行う
- 30点満点中20点以下が認知症疑い(感度93%、特異度86%)
【MMSE】
- 時間、場所の見当識や即時再生、遅延再生などを行う
- 30点満点で27点以下がMCI疑い(感度45~60%、特異度60~90%)
- 23点以下が認知症疑い(感度81%、特異度89%)
- 認知症疑いで、23~21点が軽度、20~11点が中等度、10点以下が重度となる
他の診断基準
この他にもDSM-5の診断基準やICD-10の診断基準があるで。
基本的にMRIなどで分かるようになるのは、ある程度進行した状態(海馬の萎縮を認めるように)になってからや。せやからMCIの段階で検査しても画像所見としては出てこーへん事がほとんどや。最近はAIを使って海馬体積の統計比較を行っているのもあるみたいやけどな。
早期発見検査方法
MRIよりも早期に発見したければ核医学検査が有効やと言われとる。有効血流を見たければSPECT、糖代謝が見たければFDG-PET、アミロイド沈着が見たければアミロイドPETなんかやな。
これらはMRIやCTよりかは早期に見つかる可能性はあるで。ただ難点はSPECT検査以外は保険適応外になるから自費での検査を受けるしかないって事や。かなり高額になる事がほとんどや。
アミロイドPETは2023年12月に、条件を満たせば皆保険で検査する事が可能になったで。
治療法
治療法は基本的に対処療法で投薬治療や。アリセプトなんかがメジャーやな。アリセプトを初めとする従来の治療薬やとアセチルコリン(記憶や学習に関係する神経伝達物質)の減少に対しての投薬やってんけど、これは数年で効果がなくなるのが難点なんや。
その一方で、最近はレカネマブっていうアミロイドβを分解する薬も出てきているんや。これはアルツハイマー病にはアミロイドβの蓄積が関係しているのを利用している治療薬なんや。でもこれも進行を遅らせるだけで根治じゃないねん。なかなか難しい疾患やで。
画像所見
アルツハイマー病の画像所見
次に画像所見についてやな。
- MRIやCTで海馬萎縮の有無を確認
- 同様に、脳血管障害、水頭症、硬膜下血腫などを否定する
- SPECT(脳血流)では、頭頂葉から側頭葉連合野皮質の血流低下
- FDG-PETでは後部帯状回と頭頂側頭葉皮質、そして進行期には前頭葉の集積低下
- アミロイドPETではアミロイド沈着が画像化できる
こんな感じや。
認知機能が低下する原因は血管性認知症など他にもいくつかあるんや。原因によって治療法も変わってくるからMRIで認知機能低下の原因を特定する事が必要なんやで。
ただ海馬の萎縮はAD初期には中々視覚的に評価が難しい場合が多い事も知っておくようにな。
これらは客観的な視覚評価が難しい(読影者によってバラツキが出てまう)事から、正常例のデータベースを作成して統計解析する事がほとんどや。MRIの海馬萎縮ソフトはVSRADが超有名やな。もちろん核医学にも統計解析をして評価する方法もあるで。
VSRAD(Voxel-Based Specific RegionalAnalysis System for Alzheimer's Disease) エーザイ(外部リンク)
実際の症例
70代 女性 アルツハイマー病 MMSE 19点
実際の画像を見てみよか。右側の画像が典型的なアルツハイマー病の画像や。
左の正常例やと海馬の萎縮があらへんやろ?一方で右側の画像は海馬が萎縮して容積が小さくなってるのが分かると思う。
この評価は冠状断像が1番分かりやすいで。是非とも追加で撮影しておくべき1枚や。というか必須やで。
80代 認知機能低下精査
次の症例や。海馬の萎縮が確認出来ると思う。難しいのは加齢による年齢相応の萎縮なのか、病的な萎縮なのかの判断が難しい場合があるって事や。これは特にMCIで問題になるで。というのも加齢と共に認知機能は少なからず低下していくものやからな。
ただ海馬が萎縮していても記憶障害や認知機能低下が全くあらへん人もおんねん。海馬萎縮とADは関連性はあるんやけど、発症するには何か他の条件があるのかもしれんな。
70代 女性 もの忘れ精査
次の症例や。MRI画像上で海馬の萎縮を認めるで。VSRADの数値は3.47と高値や。FDG-PETも撮影してて、両側側頭葉に集積低下を認めるで。ただ診察時点やと、臨床症状的にはもの忘れ程度で大きな支障はあらへんかってん。
鑑別診断のポイント
他の認知機能低下を示す疾患
次に鑑別診断についてや。認知機能低下を認める疾患には次のようなものがあるで。
- アルツハイマー病
- Lewy小体型認知症(DLB)
- 前頭側頭葉変性症(FTD)
- 血管性認知症(VaD)
- 進行性核上性麻痺(PSP)
- 大脳皮質基底核変性症(CBD)
これらの疾患には各々原因があって治療法も違ってきたりすんねん。せやから画像診断ではその原因を特定するために行うんや。
もちろん臨床症状も大切なのは言うまでもあらへんで。
ADは海馬の萎縮やけど、うつ病は海馬を含む側頭葉内側の萎縮はあらへんし、血管性認知症は基底核や前頭白質に梗塞や血管障害があったりすんねん。
これらは下記でも話してるから確認してみてーや。
脳転移による認知機能低下
記憶を司る部位に腫瘍が出来ても、認知機能が低下する場合もあるで。
まとめ
今日はアルツハイマー病についてレクチャーしたで。ポイントは3つ。
海馬萎縮が原因の認知機能低下で、罹患者数が600万人とも言わており、今後も増加傾向が予想される
現時点で対処療法しか方法はなく、根治は難しい
画像診断では認知機能低下の原因が海馬萎縮によるものか、それ以外なのかを判別する
こんなとこや。認知症と一言で言ってもいろいろな原因があるからな。
ちなみにアメリカやとADに対するFDG-PETが保険適応になってるしな。認知症における画像診断の役割はメチャ重要やって事や。
あまりにも認知機能が低い人だと、検査中にどうしても動いてしまうんですよね。
中々難しい問題やな。
診断する側としては正確な画像があった方がええのは間違いあらへん。
ただどうしても無理なものは無理やねんな。それも分かっとる。セデーションするって言っても出来る施設も限られてるやろし、この当たりは施設の方針によるんやないかな。
そんな中でも自分で色々と試してみると良い方法が発見できるかもしれんで。
ほな、精進しいやー!