ほうれんそう、ちんげんさい、きくな、こまつなでおひたし。
先生、野菜ソムリエに転職するんですか?
ちゃうわ!しかも「おひたし」は野菜ちゃうやん!
これは部下と上司の間で気をつける事の頭文字をとったヤツや。この中でホウレンソウは有名やん?報告、連絡。相談や。
その他にもあるらしくて、ホウレンソウに対しては「おひたし」、業務量が多いと感じたら「こまつな」、あとは部下が「ちんげんさい」にならないように「きくな」をチェックすんねん。まぁ意味不明やろ?
「おひたし」は、怒らない、否定しない、助ける、指示するの頭文字や。
「こまつな」は、困ったら、使える人に、投げる。
「ちんげんさい」は、沈黙する、限界まで言わない、最後まで我慢する。
「きくな」は気にせず休む、苦しい時は言う、なるべく無理をしない、の頭文字や。
特に真面目な子は「ちんげんさい」になりやすいから注意しとかんと。先に若い後輩に言っておくとええで。度が過ぎた我慢は美徳やないでってな。
もくじ
進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)とは
進行性核上性麻痺の概要
さて、若造に対しては逆おひたしで行くで。覚悟しぃや、ボケカスが!
今日は進行性核上性麻痺、PSPや。これはパーキンソニズムを呈する原因疾患の1つなんやけど、PD(パーキンソン病)やMSA(多系統萎縮症)と鑑別するためにも知っておくのは重要やで。
PSPはパーキソニズムを呈する疾患の中やとPDの次に多い疾患や。安静時振戦が少ないのがPDとの違いやとも言われとる。
原因や臨床症状
PSPは淡蒼球や視床下核、黒質、中脳被蓋の神経細胞が変性脱落して、残った細胞内にタウ蛋白が細胞内に異常蓄積している状態やと言われとる。神経の変性脱落やタウ蛋白の蓄積で上記のようなパーキソニズム症状が出てくんねん。ただ、そもそも何故これらの神経細胞が変性脱落するのかは分かってへん。
主な症状しては、易転倒性、核上性眼球運動障害、頚部後屈、無動、認知症状や。中年以降の男性に多いで。初期の特徴としてよく転ぶという事が言われとるわ。ほんで転倒時に上肢による防御反応が無いから顔面を負傷する事が多いらしいで。
ちなみにADL低下のスピードが速くて、易転倒性から始まって、すくみ足や姿勢保持障害、頸部後屈、眼球運動障害、構音嚥下障害と進んで、歩行不能や立位保持不能となって寝たきりになるんや。そういった意味やと予後はあまり良い方やあらへんな。車椅子が必要になるまで3年くらい、臥床状態は5年くらいという話や。最終的には肺炎なんかが死因になる事が多いで。
PSPの病型
最近研究が進んで色んな病型がある事が明らかになってきてるらしいで。具体的には下記の通りやけど、まぁここまでは覚えんでもええかもしれんな。こんなのがあるくらいでええと思うで。
- 典型的な症状:Richardson症候群 PSP-RS
- パーキンソン病類似 PSP-P
- 進行性のすくみ足 PSP-PFG(progressive gait freezing)
- 大脳皮質基底核症候群 PSP-CBS
- 発語や言語障害 PSP-SL(prominent speech/language disorder)
- 小脳性運動失調 PSP-C
PSP概要のまとめ
まとめるとこんな感じや。5秒で覚えろや!
概要 |
病型 |
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進行性核上性麻痺 PSP |
中年の男性に多い 淡蒼球や視床下核、黒質、中脳被蓋の神経の変性脱落と残った細胞内にタウ蛋白蓄積が原因と言われている 易転倒性、核上性眼球運動障害、頚部後屈、無動、認知症状が主な症状 |
典型的な症状:Richardson症候群 PSP-RS |
パーキンソン病類似 PSP-P |
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進行性のすくみ足 PSP-PFG(progressive gait freezing) |
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大脳皮質基底核症候群 PSP-CBS |
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発語や言語障害 PSP-SL(prominent speech/language disorder) |
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小脳性運動失調 PSP-C |
重症度分類と治療法
ちなみに重症度分類があって、0~6まで分類されてるで。0が無症状で、数字が大きくなるに従って重症化していって6が死亡や。PSPの重症度分類というよりは、脳血管障害や神経障害疾患の重症度スケールと思ってもらえればええかなと思う。
日本版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書 | ||
modified Rankin Scale | 参考にすべき点 | |
0 | 全く症候がない | 自覚症状及び他覚徴候が共にない状態である |
1 | 症候はあっても明らかな障害はない: 日常の勤めや活動は行える | 自覚症状及び他覚徴候はあるが、発症以前から行っていた仕事や活動に制限はない状態である |
2 | 軽度の障害: 発症以前の活動が全て行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える | 発症以前から行っていた仕事や活動に制限はあるが、日常生活は自立している状態である |
3 | 中等度の障害: 何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える | 買い物や公共交通機関を利用した外出などには介助を必要とするが、通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要としない状態である |
4 | 中等度から重度の障害: 歩行や身体的要求には介助が必要である | 通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、持続的な介護は必要としない状態である |
5 | 重度の障害: 寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする | 常に誰かの介助を必要とする状態である |
6 | 死亡 |
治療法については、今現在で根本的な方法はあらへんとの事や。パーキンソン病治療薬(L-dopa)を投与する事もあるんやけど、効果は一時的との話しやな。転倒せんようにリハビリなんかも並行して行われるとの事や。
画像所見
進行性核上性麻痺の画像所見
さて画像所見についてやな。
これは脳幹部、特に中脳被蓋の萎縮が有名やな。ペンギンシルエットサイン(penguin silhouettesign)とかハチドリサイン(humming bird sign)とか言われてるで。矢状断で確認しやすいサインや。ちなみに、脚間窩から中脳水道の距離が9mm以下なら萎縮ありと判断される目安やで。
ただこれはPSPに特異的な所見やなくて、他の疾患(CBD、Machado-Joseph disease)なんかも中脳被蓋が萎縮する事があるで。
中脳被蓋、橋被蓋、小脳あたりにどれだけ萎縮があるのかで各疾患の鑑別のヒントにすんねん。
実際の症例
ほな、実際の画像で見ていこか。PSPの症例なんやけど、中脳被蓋が5mm程度で萎縮してるのが分かると思う。横断像でも分からなくはないけど、絶対的に矢状断の方が分かりやすいで。
撮り損ねたらマジでシバくからな。
PDやMSAはこの所見があらへんから重要な画像所見やで。他の画像所見としては、前頭葉の萎縮もある事が多いから覚えておいてな。
鑑別診断のポイント
パーキンソニズム症状を呈する疾患との鑑別
鑑別診断や。これは何度も言ってるように他のパーキソニズムを呈する疾患の鑑別が重要や。具体的にはPD、MSA、CBD、ET(essential tremor)なんかや。
主な種類 |
画像所見 |
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パーキンソニズム |
パーキンソン病(PD) |
MRI上は特異的な所見がない |
進行性核上性麻痺(PSP) |
中脳被蓋の萎縮と第3脳室の拡大 |
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多系統萎縮症(MSA) |
基底核外側にスリット上と橋底部に十字状のT2高信号 |
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大脳皮質基底核変性症(CBD) |
左右対称性の前頭後頭葉~頭頂葉の萎縮 中脳被蓋の萎縮 |
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本態性(薬剤性)振戦(ET) |
DAT-SCANで被殻の集積低下の有無 |
この表はパーキンソン病の項目の時にも出したヤツや。これを頭の中に入れておけば最低限は大丈夫やな。
ちなにみ上でも話したけど、中脳被蓋の萎縮はCBDでも見られる所見やから注意が必要や。また突発性正常圧水頭症によるDESH(disproportionately enlarged subarachnoid space hydrocephalus)はPSPと同じような所見を呈する事が知られてるで。
他の鑑別疾患については下記を参考にしてくれや。
他にはPSP-RSは中脳被蓋の萎縮を認める事が多いんやけども、早期の場合や他の亜型の時には萎縮を認めない事もあるらしいねん。
ここも注意ポイントやな。つまり中脳被蓋の萎縮だけで判断すると危ないって事や。
易転倒性、進行が早い認知症状、L-dopa無効なんかがあればPSPを疑う必要はあるかもしれんな。
まとめ
今日は進行性核上性麻痺、PSPについてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
パーキンソニズムを呈する疾患の1つだが、PDと比較して進行が早い
中脳被蓋の萎縮が特徴的
一方で中には萎縮を認めない場合もあり、易転倒性や進行が早い認知症状などの臨床症状も参考にする
こんなことろやな。これらの変性疾患は個別というようりは、関連疾患で紐付けて覚えた方が断然頭に残りやすいで。
別の機会でMSAについてもレクチャーしようと思ってるから、PDとPSP、そしてMSAを一連として覚えておくとええな。
さて、ポンコツ君、今日のレクチャーは理解したかな?過度なプレッシャーはダメやけど、適度なプレッシャーは有効やねんで。
今日の僕は「ちんげんさい」でした。
HAHAHA!度が過ぎた我慢は美徳やないで。
さて、今日は店じまいや。
ほな、精進しいやー!