先生、先生の周りで喫煙者っていますか?
ん、喫煙者か?ほとんどおらんで。若い頃はいっぱいおったけどな。
友達が喫煙者なんですけど、また値段が上がったって文句言ってたんですよ。
文句言うくらいなら辞めればいいのにって思うんですけどね。
この表を見てみぃや。
喫煙率の平均は男性で30%、女性で10%くらいらしいんやけど、定期的に喫煙率が下がっている年があるやろ。これは税金が上がった年に一致してんねん。健康の事を考えて、値上げを機に辞める人が一定数おるんやな。
面白いのは男性は喫煙率が下がってきてるのに、女性はあまり変化無しってとこや。これは何か他の要因があるのかもしれんな。
今日のレクチャーはそんな喫煙と関連が深い喉頭癌についてやで。

もくじ
喉頭癌(laryngeal cancer)とは
喉頭癌の概要
まずは喉頭癌の概要からや。
大きく声門上部癌、声門癌、声門下部癌の3つに分類されるで。このあたりの癌は頭頚部領域で最も頻度が多い癌や。
中年以降に発症頻度が上がって、年間5,000人程が新規で罹患してるで。
男女比は圧倒的に男性が多いのが特徴や。これは喫煙が関係してて、喉頭癌患者の95%は喫煙者というデータもあるくらいや。
だいたい潜伏期間が40年とも言われてるから、20歳から喫煙を始めたとして60歳前後で増えてくるって事やな。確かに好発年齢ともおおよそマッチしとる。
声門癌が1番頻度が高くて、声門癌が60%以上、声門上癌が30%以上、声門下癌が残りってな感じや。
ほとんどが高分化型扁平上皮癌で、放射線施感受性が高いねん。
声門下部癌の初期は無症状の事が多いから、見つかった時は進行している事も多々あるんや。一方で声門癌は嗄声を認めるから比較的早期での発見率が高いとも言われとる。
概要は下の表に纏めておいたから確認してみてくれ。
- 声門上部癌
- 喉の違和感が最初にあり、進行すると痛みや息苦しさが出る
- リンパ節転移しやすい
- 前喉頭蓋間隙への進展はT3となり、放射線治療の抵抗性の原因とされている
- 喉頭癌のうち30%程
- 声門癌
- 嗄声や血痰が早期から認めるために、比較的早期発見率が高い
- 声帯にはリンパ管が存在しないため、T1症例ではリンパ節転移はない
- 声帯の固定や、前喉頭蓋間隙、傍声帯間隙への浸潤があるとT3
- 声門下部癌
- 初期症状は無く、進行すると嗄声や息苦しさが出てくる
- 頻度は少ないが、リンパ節転移しやすい
ちなみに喉頭癌は他の動物には見られなくて人間に特有らしいで?
ホンマなん?って思うけど、このあたりも喫煙が関係しているのかもしれんな。
喉頭癌の解剖と役割
喉頭の解剖
次に解剖やな。喉頭は大きく分けて声門上部、声門、声門下部に分けられんねん。声門は左右一対の声帯があるで。
他に、T診断で前喉頭間隙、傍声帯間隙、甲状軟骨なんかの解剖も必要になるから、下記の図で確認しておいてや。


頸部リンパ節レベル
これは頸部リンパ節の解剖や。画像診断の時は頸部リンパ節への転移の有無の診断が重要やから、覚えておくべき内容やな。
特に舌癌の場合は、Level2までの範囲で転移しやすいと言われとる。
ちなみに、レベルⅠ~ⅡとⅢ、Ⅵの境目は舌骨を、ⅢとⅣの境目は輪状軟骨を基準にするとええで。
ⅢとⅤA、ⅣとⅤBの境目は内頸静脈を基準にするんや。

- レベルIは、オトガイ下リンパ節および顎下リンパ節を含む
- レベルIIは、上内頸静脈リンパ節(顎二腹筋の上方)を含む
- レベルIIIは、中内頸静脈リンパ節(肩甲舌骨筋と顎二腹筋の間)を含む
- レベルIVは、下内頸静脈リンパ節を含む
- レベルVは、後頸三角リンパ節を含む
- 咽頭後リンパ節
喉頭の役割
喉頭の役割は2つあって喉頭蓋が閉じる事で飲食物が肺に入るのを防ぐ事、あとは声帯を振動させて声を発生させるという機能や。
加齢や病気で嚥下機能が低下すると、食べ物が気管に入りやすくなって誤嚥をする事があるで。これを繰り返すと誤嚥性肺炎なんかにもなるな。
誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因の上位やで。
喉頭癌の原因と治癒率
喉頭癌の原因
喉頭癌の原因、これは圧倒的に喫煙や。
喫煙は煙を吸ったり吐く度に化学物質や発癌物質が喉頭を通るからな。発癌物質が何回も繰り返し通る事で炎症が起きて、発癌の確率が上がってくねん。
喫煙者と非喫煙者での喉頭癌の死亡率は、非喫煙者を1とした場合、喫煙者の方が32.5倍も多いというデータもあんねんで。いかに喫煙が悪影響かが分かるな。
喉頭癌の治癒率
次に治癒率についてやな。当たり前と言っちゃなんやけど、やっぱり早期発見した方が5年生存率は格段に高くなるで。
特徴的なのは、放射線感受性が高くてⅠ期なら放射線治療だけで完治も見込める点や。外科的手術をせんでもええって事は、自分の声が守れるって事でもあるんや。ここは大きいところやで。
下のデータは国立がん研究センターの2014年やつや。
- 喉頭癌の5年生存率 ⇒ Ⅰ期:96.9% Ⅱ期:87.1% Ⅲ期:71.3% Ⅳ期:48.3%
喉頭癌のTNM分類
喉頭癌のTNM分類とStage分類についてや。声門上癌、声門癌、声門下癌でT分類に若干違う点があるから注意やで。
ステージングはその後の治療法の選択が変わってくるから特に重要や。
ちなみにN分類とM分類は3つとも同じやから、ここでは喉頭癌としてまとめておいたわ。
T分類 | Tis | T1 | T2 | T3 | T4a | T4b | |
声門上部癌 | 上皮内癌 | 声帯運動が正常かつ声門上部に限局 | 声帯固定無しかつ、声門上部に2部位以上の粘膜に浸潤 | 声帯固定があり喉頭内に限局、または輪状後部、前喉頭蓋間隙、傍声帯間隙、甲状軟骨内側皮質に浸潤 | 甲状軟骨全層性浸潤または喉頭外進展 | 椎前組織、頚動脈浸潤、縦隔浸潤がある | |
声門癌 | 声帯運動が正常かつ限局している T1a:片側声帯に限局 T1b:両側声帯に浸潤 | 声帯運動に制限、声門上下に進展 | 声帯固定、喉頭内に限局または傍声帯間隙や甲状軟骨内側皮質に浸潤 | 甲状軟骨外側板を破って浸潤、または喉頭外進展 | 椎前組織、頚動脈浸潤、縦隔浸潤がある | ||
声門下部癌 | 声門下部に限局 | 声門に進展かつ声帯運動の制限も伴う | 声帯固定、喉頭内に限局または傍声帯間隙や甲状軟骨内側皮質に浸潤 | 輪状軟骨や甲状軟骨に浸潤、または喉頭外進展 | 椎前組織、頚動脈浸潤、縦隔浸潤がある | ||
N分類 | N0 | N1 | N2a | N2b | N2c | N3a | N3b |
喉頭癌 | リンパ節転移なし | 同側リンパ節に3cm以下の転移が1個かつリンパ節外への浸潤なし | 同側リンパ節に3cm以上、6cm以下の転移が1個かつリンパ節外への浸潤なし | 同側リンパ節に3cm以上、6cm以下の転移が2個以上かつリンパ節外への浸潤なし | 同側、または対側リンパ節に6cm以下の転移かつリンパ節外へ浸潤なし | リンパ節に6cm以上の転移があるがリンパ節外に浸潤なし | リンパ節に1個以上の転移かつリンパ節外への浸潤 |
M分類 | M0 | M1 | |||||
喉頭癌 | 遠隔転移なし | 遠隔転移あり |
N0 | N1 | N2 | N3 | M1 | |
---|---|---|---|---|---|
T1 | Ⅰ | Ⅲ | ⅣA | ⅣB | ⅣC |
T2 | Ⅱ | Ⅲ | ⅣA | ⅣB | ⅣC |
T3 | Ⅲ | Ⅲ | ⅣA | ⅣB | ⅣC |
T4a | ⅣA | ⅣA | ⅣA | ⅣB | ⅣC |
T4b | ⅣB | ⅣB | ⅣB | ⅣB | ⅣC |
画像所見
喉頭癌の画像所見
喉頭癌の概要が分かった所で、画像所見について話していくで。
局所診断は内視鏡で行って、CT やMRIは病期診断の為に行われる事が多いで。基本的な画像所見については次の通りや。
- CT
- 喉頭腫瘤を認め軽度造影される
- MRI
- T1強調で低~等信号、T2強調で等信号、造影効果ややあり
- FDG-PET
- 高集積を認める
声門上下、声門癌については、T2までが早期とされてて、部分切除や化学放射線治療で機能温存療法が選択されんねん。
せやからT2とT3の分類が重要で、画像診断でもその辺りの確認が必要やで。
実際の症例
ほな実際の画像を見ていくで。
この症例は80代男性で嗄声の精査や。左声門下に癌を認めるで。画像上で左壁の不整形腫瘤を認めると思う。軽度造影される腫瘤があるで。

次は70代の男性で、嗄声があったんやけど放置してて呼吸苦が出現してきた為に受診した例や。
脂肪抑制画像や造影画像で高信号なのが確認できると思うで。大きさでいうと4cm以上で左側リンパ節にも転移を認めるな。
左の頚動脈への浸潤もあったのと、画像には載せてへんけど肺転移もあんねん。せやからT4bN3bM1の診断となったで。

次の症例はFDG-PETまでやった例や。
CTは単純の画像やけど、甲状軟骨の全層性の融解像を認めてて、そこに一致してFDGの高集積を認めると思う。T4aやな。ちなみに右上内深頚リンパ節転移も認めてん。


鑑別診断のポイント
下咽頭癌や血管腫、ポリープなど
次に鑑別診断や。
これは、ポリープや、血管腫、膿瘍、甲状軟骨肉腫、声帯麻痺なんかがあるな。
ポリープはファイバーで分かるし、骨肉腫は石灰化など画像所見や臨床症状なんかが診断の手助けになるで。
他の頭頚部癌
他の頭頚部癌については下記を参考にしてくれ。
まとめ
今日は喉頭癌についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
声門上癌、声門癌、声門下癌があり、声門癌が最多、声門上下癌は進行するまで発見しにくく予後が悪い
Stage分類が重要で発生部位でT分類が若干違う
CTやMRIは局所の浸潤程度やリンパ節転移の有無を評価する(T2とT3の診断が重要)
こんな感じやな。
喉頭癌といっても部位によって3つのパターンに分かれるのが注意点や。
進行した状態で発見されると原発がどこか判別が付きにくい時もあるんやけど、それは進展様式や腫瘍の中心点なんかで判断する事が多いで。
喉頭癌は放射線治療や化学療法が有効でCCRTも多いですよね。
せやな。T2までなら機能温存療法も選択肢になるし、Tisなら放射線単独で根治を見込めるで。
喉頭癌だけに限った事やないけど、何事も早期発見が重要なんや。
さて、今日はこれくらいにしよかな。
ほな、精進しいやー!