今日は消化管穿孔についてやっていくで!
急性腹症シリーズですね。
もくじ
消化管穿孔(gastrointestinal perforation)とは
消化管穿孔の概要
今日は消化管穿孔や。この消化管穿孔やけど、これも急を要する疾患やで。
消化管穿孔は潰瘍や炎症なんかが原因で消化管に穿孔を来している状態の事や。
この穿孔部位から食物やエアー、糞便なんかが腹膜に漏れると膿瘍を形成したり腹膜炎になったりすんねん。腹膜炎が全身に広がると敗血症や多臓器不全で生命の危機になる事もあんねんで。
消化管穿孔には2パターンあって、1つめが上部消化管穿孔で、2つめが下部消化管穿孔や。各々の特徴は次の通りや。
- 上部消化管 → 胃、十二指腸
- 下部消化管 → 小腸、大腸
フリーエアーがある部位で大体の穿孔部位の目安がつくで。
横隔膜や肝臓付近に大量のフリーエアーを認めていれば上部消化管、小腸やダグラス窩に認めれば下部消化管からの穿孔が怪しいな。
ただ、これはある程度、時間が経過しているとその限りやあらへん事を知っておくとええで。
なぜなら時間経過でエアーが動いてまうからや。
消化管穿孔の原因
穿孔の原因やけど上部消化管の時と下部消化管で違うで。
上部消化管は潰瘍による穿孔が一番多いわ。十二指腸潰瘍や胃潰瘍なんかがメジャーやな。
下部は悪性腫瘍や、憩室炎などの炎症が原因である事が多いな。潰瘍で穿孔する事は頻度としてはかなり少ないで。
他に原因不明の突発性穿孔も12~27%程度あって、高齢者のS状結腸に発生しやすいのが特徴やな。大腸穿孔は性質上、糞便性腹膜炎を来す事が多いと言われとるわ。
稀に異物挿入で穿孔するパターンもあるらしいな。ワシは経験あらへんけども。
高齢者のPTP誤嚥なんかで穿孔する場合もあるで。
消化管穿孔の臨床症状
臨床症状は痛みや嘔気、嘔吐、食欲不振なんかや。
急激な痛みがある事が多くて、穿孔部位に圧痛を伴う事もあるで。
進行して腹膜炎になったりする事もあるから注意が必要や。痛みが肩にまで放散する事もあるらしいな。
腹膜炎から敗血症にまでなると重篤な状態になる事もあるから、画像診断で穿孔部位を特定して治療まで迅速に繋げられるのが重要や。
治療法
治療法は何よりも穿孔部分をふさぐ事や。内容物が漏れ出すと腹膜炎や敗血症になる可能性が高いからな。
最近は開腹術やなくて、腹腔鏡で対応出来る事も多くなってきたで。
他には抗菌薬の投与やったり、膿瘍を形成している場合はドレナージも実施するで。
ちなみに、穿孔までに至ってへん潰瘍の段階やったら投薬治療で経過を見る事もあるとの事や。
画像所見
消化管穿孔の画像所見
次に画像所見についてやな。
まずなんと言っても腹腔内や後腹膜腔へのフリーエアー(free air)を認める事や。
このフリーエアーの場所や量によって穿孔部位がある程度絞れるんやで。フリーエアーが小さいと、腸管内ガスとの鑑別が難しい場合があるんやけど、その時は腸管を丹念に追っていくと鑑別できるで。
穿孔部位 | ガス量 | ガス分布 |
---|---|---|
胃十二指腸 | 様々(多量の場合もあり) | 肝円索裂、前傍腎腔、モリソン窩、胆嚢床 など |
小腸 | 微量 | 腸管膜、前方腹膜 |
大腸 | 様々(多量の場合もあり) | 骨盤内、腸管膜、後腹膜 |
胃や大腸が穿孔してる場合はフリーエアーが多量になる事もしばしばなんやけど、これはあくまでも傾向や。
穿孔から時間が経過してると、フリーエアーの位置が移動してる可能性もあるのを頭の中に入れておくようにな。
ちなみに、フリーエアーについては通常のウィンドウ幅だと観察しずらい事が多いから適時ウィンドウ幅を調整して確認してな。
air viewなんて呼び方してる施設も多いで。
他に特徴的な所見としては、穿孔部位は肥厚している事が多いな。そこに管腔内から壁外にけかて連続するガスがあれば穿孔しているサインや。
下部消化管穿孔はdirty mass signなんかもあるで。
これは穿孔部位から漏出した便などが、内部に気胞などを伴った腫瘤状の低吸収域の事を言うねん。糞便からの腹膜炎は敗血症性ショック、多臓器不全へ移行する事から、特に免疫力が低下しがちな高齢者では注意が必要やで。
「dirty mass sign」、覚えとき。
特徴的なCT所見はこんな感じや。
- 腹腔内、後腹膜内のフリーエアー
- 穿孔部位は肥厚している事が多い(膿瘍を形成する事もある)
- 下部の場合は、dirty mass sign
実際の症例
80代 男性 腹部痛
さて、実際の症例や。S状結腸穿孔の結果、膿瘍形成と内部に気胞を認めるで。
50代 男性 下腹部痛 圧痛あり
中心部にフリーエアーを認めてS状結腸の憩室からの穿孔が疑われてるで。
上部消化管穿孔
次は上部消化管(胃)穿孔の例や。大量にフリーエアーを認めるで。
鑑別診断のポイント
鑑別診断について
次に鑑別診断についてやな。とはいっても鑑別診断よりは、穿孔の原因を特定するのが重要やな。
上で話したけど、潰瘍や炎症の他に外傷性の穿孔もあんねん。患者サマリーや臨床経過と照らし合わせる事が重要やな。
紛らわしい事があるんやけど、フリーエアーと腸管内のエアーを間違わへんようにな。
ここを間違うとその後の対応が全然違ってくるで。
他に関連する腹痛の原因になりそうな疾患は次のようなもんがあるで。合わせて覚えておいてもらえるとええな。
まとめ
今日は消化管穿孔についてレクチャーしたで。特に下部消化管からの穿孔による糞便性腹膜炎は重症化する可能性もあるから注意や。
ポイントは2つ。
フリーエアーを発見したら穿孔のサイン! 量や場所を参考に穿孔場所を特定する!
穿孔箇所を発見したら、その他の所見(腹膜炎や膿瘍形成)が無いかを確認する!
こんな感じや。他に特徴的な所見としてDirty massなんかがあったで。覚えてるか?
忘れてもーた人は復習しといてや。以外と夜間の救急で遭遇する場合があるで。
ほな、精進しいやー!