腸管気腫症(pneumatosis intestinalis)

なぁ、そんな落ち込むなって。たかが1人の女性に振られたれただけやん。

何が悪かったんでしょうか・・・

アホか! いきなりの初対面で、「毎朝僕のシャンプーを手伝ってくれますか?」とか言うアホがどこにおんねん!
何でシャンプーやねん! 意味が分からへんで! 今頃シャンプー君って呼ばれてるのは確実やで!

腸管気腫症(pneumatosis intestinalis)とは

腸管気腫症の概要

・・・・まぁ、気分を取り直して・・・今日は腸管気腫症についてレクチャーいこか。

腸管気腫症は、腸管ガスが腸管壁の粘膜下や漿膜下に侵入する病態や。

粘膜下は大腸に、漿膜下は小腸に多い傾向があるで。

比較的稀な疾患ではあるんやけど、救急の場面では遭遇する機会も増えてきてるという話しや。

腹部解剖

腸管気腫症の分類

腸管気腫症は臨床的に予後良好なものをbenign pneumatosis intestinalis、予後が悪いものをlife threatening pneumatosis intestinalisと分類してるで。

後者は絞扼性イレウスなどの腸管虚血、壊死でガスが発生して腸管壁内へ入り込むパターンや。

この時、静脈にのって門脈内ガスを認める事もあるで。

つまり腸管壊死と門脈ガスがあると予後が悪いという訳や。まぁ当然やな。腸管が壊死してる状態やからな。

これらは腹痛から発症するケースが多いかな。

一方のbenignは一般的に無症状で偶然発見される事も多くて、特に臨床上は問題にならない事が多いで。

ステロイドや免疫抑制剤等の使用歴がある場合が多いな。画像所見も気腫以外は所見を認めん事も多いで。

つまり腸管虚血や壊死があるかどうかがポイントやっちゅーことやな。

臨床上、問題にならない腸管気腫症もあるんですね。

せや。ワシも初めて読影した時に先輩ドクターにドヤったもん。

「これ、ヤバいやつっすわ!腸管気腫や。速効で依頼医に知らせた方が良いですね。」

って。そしたら後日、依頼Drから、

「いらんパターン(良性)の腸管気腫やったで。」

って言われてビビったもんな。そんなパターンもあんねやって。

腸管気腫症の原因

原因は特発性と2次性があって、2次性は腹腔内疾患が関係してる事が多いで。

割合的には2次性の方が多くて腸管気腫症の8割が2次性というデータもあんねん。

臨床症状と治療法

臨床症状

臨床症状は腹部膨満感や嘔吐、下痢なんかや。あまり特異的な症状やあらへんな。

上で話した通り無症状のケースもあって、この場合は良性である確率が高いと言われとる。

ただあくまで確率であって、ちゃんと原因があるかどうかを調べるのが重要なのは言うまでもないで。

治療法

治療法は原因別で変わってくるわ。

動脈塞栓や腸管壊死なんかがある場合は、そっちの治療を優先せなアカンし、突発性(benign)のものは基本的に保存療法で対応する事が多いな。

画像所見

腸管気腫症の画像所見

さて、画像所見について話していこか。

腸管気腫症の画像所見はなんと言っても腸管壁内に気腫を認める事や。

ただ、これは小さな気腫やと通常ウィンドウやと分からない事が多いから、必ずair viewで見る事が必要や。

Air view知っとるか?ウィンドウを肺野条件に近いレベルにして腹腔をチェックする事や。腸管気腫だけじゃなく消化管穿孔でも使うワザやで。

後は造影してれば造影効果の有り無しで腸管の虚血なんかも分かる事があるから有用やで。

他には、小腸病変や壁の菲薄化、門脈内にガスを認めると予後が悪い方の腸管気腫症の可能性があるで。

腸管気腫症の主な画像所見
良性の可能性がる所見気腫の壁が厚い
消化管の層構造が保たれている
内腔の拡張がない(小腸で3cm以下、大腸で6cm以下)
壁に造影効果がある
予後が悪い可能性がある所見気腫の壁が薄い
層構造の消失
腸管膜の濃度上昇
3mm以上の壁肥厚を認める
鑑別が難しい所見気腫の形態(嚢胞状、層状)
腹腔内、後腹膜気腫
門脈内ガス(致死性のパターンだが、良性でも見られる事がある)
内腔の拡張(小腸で3cm以上、大腸で6cm以上)
壁の造影効果なし(気腫を生じた腸管壁の造影効果はしばしば困難な事がある)
腹水の有無

実際の症例

結腸の拡張と左結腸に気腫を認める事が出来ると思うわ。まぁ特徴的な所見やから1度見ておけば忘れる事もあらへんとは思うけどな。

腹部CT 腸管気腫症 air view
Case courtesy of Mohammadtaghi Niknejad, Radiopaedia.org

別症例や。

腹部CT 腸管気腫
Case courtesy of Mohammadtaghi Niknejad, Radiopaedia.org

鑑別診断のポイント

鑑別診断について重要な事

さて次に鑑別診断のポイントやけど、なんと言ってもbenignとlife threatening を間違えず鑑別する事やな。

life threateningの原因は急性上腸間膜動脈閉塞や絞扼性腸閉塞、腸管イレウスなんかがあるから、これらのCT所見があるか無いかを要チェックや。

頻度的には良性の方が圧倒的に多いんやけれども、逆にそれやからこそ注意深くチェックする事が必要やねん。

予後が悪い方は腹痛が伴う事が多いから臨床症状もチェック必要やで。

まとめ

さて、今日のまとめや。ポイントは1つだけや。

腸管気腫症は腸管の粘膜下や漿膜下にエアーが生じる病態

予後が良いbenignと予後が悪いlife threateningがあり、life threateningは原因特定も必要

こんな感じやな。

腸管壁内ガスを認めた時に患者エピソードも加味して良性パターンなのか、予後が悪いパターンなのか判断できればベストや。

ただ難しい事が多いで。重要なのは所見を拾って消化器にコンサルできる事や。

ちなみに予後が悪いパターンは激烈な腹痛を伴う事が多いと言われとる。これは虚血や閉塞が起きているのにも関係してるかもしれんな。

予後が悪い方なのに、良性と判断する事がないようにせんとな。なっ、シャンプー君!

パワハラだ!訴えてやる!

HAHAHA!さて、帰って昨日の麻雀の続きせな。
ほな、精進しいやー!