急性腹症シリーズや。今日は急性胆管炎について話していくで。
張り切っていきましょう!
もくじ
急性胆管炎(acute cholangitis)とは
急性胆管炎の概要
今回は急性胆管炎や。
急性胆管炎は読んで字の通り、胆管内に急性炎症が発生した病態の事をいうんや。
好発年齢は40代以上の女性に多いというデータがあるで。
原因は総胆管結石、胆道狭窄、胆道吻合部狭窄、悪性疾患による胆管狭窄や。
- 上記のような原因で胆管が狭窄し、胆汁の流れが滞る
- 胆管(道)内に細菌が増殖する
- 胆管内圧が上昇する事で、胆管から血中に細菌やエンドトキシンが流出する
- 最悪の場合、敗血症にまでなる場合もある
という流れや。起炎菌はグラム陰性菌が多いと言われてて、進行すると肝膿瘍や敗血症のような重篤な症状までになる事があるで。
基本的に急性腹症は急激な腹痛を伴う事が多いから、放置するって事は無いと思うねんけど、ちゃんと画像診断で指摘する事は重要なんや。
一方で急性胆管炎についてはCTで診断する事が難しいとも言われてる。
臨床症状
Charcot(シャルコ)3徴とReynolds(レイノルズ)5徴
急性胆管炎は、発熱、右上腹部痛、黄疸の3つをCharcot(シャルコ)3徴、さらに意識障害とショック状態を加えたのをReynolds(レイノルズ)5徴と呼んでるわ。
急性胆管炎でCharcot3徴全て症状として出てくるのは50~70%程度やと言われとって、症状が1つや2つだけの場合も少なくないねん。
Reynolds5徴は重症例に該当して、別名、急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC:acute obstructive suppurative cholangitis)と呼ぶ事もあるな。
急性胆管炎の診断基準もあって下記の通りやで。
- Charcot3徴を満たすもの
- Charcot3徴のいずれかと①ALP、γ-GTPの上昇、②WBC、CRPの上昇、③胆管拡張、狭窄、結石所見の①~③全てを満たすものは確定症例
- Charcot3徴いずれかと①~③の中で2項目を満たすものを疑い症例とする
特殊な胆管炎
胆管炎における特殊パターン
胆管炎の特殊パターンとして、Mirizzi(ミリッツィ)症候群とLemmel(レンメル)症候群というのがあるから、これも覚えとき。
Mirizzi症候群は、胆石や浮腫によって総胆管が圧排/拡張により、閉塞性黄疸になっている状態や。
Lemmel症候群は、十二指腸傍乳頭部の憩室にバリウムや食物塊が入り込み胆管や膵管を圧迫する事で胆管炎や膵炎を引き起こしている状態を言うんや。
両方とも特殊な胆管炎に分類されているで。
原発性硬化性胆管炎とIgG4関連胆管炎
他には原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)とIgG4関連胆管炎があるで。
PSCは肝内外の胆管が進行性に線維性硬化する事で胆汁の流出障害を起こす病気や。
2次的な要因を除いた原因不明の胆管炎で、好発年齢は20代と60代の2ピーク型、予後不良や。
IgG4関連胆管炎は、自己免疫性疾患に該当するで。
PSCも自己免疫性疾患とも言われてて、画像所見は同じようなパターンになる事も多いと言われとる。
鑑別点はステロイドの著効、IgG4関連は胆管下部に、PSCは肝内に壁肥厚を認める事が多い事なんかや。
ただこれらは画像やと鑑別するのが難しい場合がほとんどや。
他の急性腹症
ちなみに他の急性腹症はこちから見てみてーや。
治療法
治療法は絶食と補液、抗菌薬投与や。肝障害があったりする場合は胆道ドレナージを実施する事もあるで。
画像所見
急性胆管炎の画像所見
CT所見
急性胆管炎の画像所見やけど、CTやと10mm以上の胆管拡張が代表的な所見やけど、教科書によっては8mm以上を拡張の疑いとする場合もあるな。
他には、胆管壁肥厚や胆道気腫、動脈相での肝実質の不均一濃染があるとより強く疑われるで。
胆管炎で肝臓の不均一濃染ですか?
せや。ちょっと詳しく話すと、胆管の炎症がGlisson鞘に波及する事で、門脈末梢枝の血流障害が起きる為に発生すると考えられとる。
つまり動脈相や門脈相に近いタイミングで撮影すると、門脈抹消枝の血流障害によって斑状の造影効果を認めるって訳や。
平衡相や静脈相では均一な濃染になるからDynamic撮影が必要やな。
グリソン鞘は小葉間結合組織とも言って、肝動脈、門脈、胆管の3つを結合織によって束ねられて部分を言うで。ここにはリンパ管も含まれてるで。
簡単に言うと、肝実質をグリソン鞘で小葉に分けてるってイメージや。
胆管に炎症が起きると、近くにある門脈や肝動脈まで炎症が波及しやすいって事やな。
MRI所見
MRIの所見でも基本的に同じや。胆管拡張や動脈相での不均一濃染なんかやで。
MRCPは結石の抽出にも有効やから撮影しておきたいシーケンスの1つやな。
ただ乳頭部や肝内胆管に微小な結石がある場合は、指摘が難しい事もあるで。
ちなみにMRCPだと5mm以上の結石は結構見えるで。CTでもコロナルで見てみると分かりやすい時もあんねん。
複数の方向から確認する事が必要やな。
画像所見のまとめ
画像所見のまとめはこんな感じや。
- 胆管拡張(10mm以上)
- 胆管壁肥厚
- 動脈相での肝実質の不均一(平衡相、静脈相では均一に濃染される)
実際の症例
80代男性 腹痛精査
実際の画像を見ていこか。早期像で肝臓S2~5にまだら状に濃染を認めると思うで。
有意な胆管拡張は伴ってへんけど、その他臨床データから急性胆管炎と診断されてるで。
鑑別診断のポイント
胆管拡張を示す病変
次に鑑別診断についてやけど、胆管拡張や胆管壁肥厚を示す他の病気という事になるな。
具体的には、急性胆嚢炎や胆管癌、膵炎、膵腫瘍なんかや。
この辺りは、概要の欄で個別のレクチャーのリンクがあるから、そっちから確認してみてや。
特に胆管「壁」の肥厚が5mm以上を呈す場合は胆管癌のみやから1つの参考になるで。
胆管やないで、胆管壁やで。似てるけど違うから注意や。
まとめ
今回は急性胆管炎についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。
臨床症状はCharcot3徴が特徴的だが、全て満たさないケースもある
胆管拡張と胆管壁肥厚、動脈相での肝実質の不均一濃染などが主な画像所見
こんな感じや。
Charcot3徴は発熱、右上腹部痛、黄疸の3つやで。他に2つを加えたReynolds5徴っちゅーのもあったで。
忘れてへんか?大丈夫か?
急性腹症はどれも放置しておくと重症化するケースが多いので、撮影してる側も異常所見に気がつけるかどうかが重要ですね。
せやねん。放射線科医が画像を見るのはどうしても検査終了後が多いねん。
検査中に技師はんが気がついてくれて進言してくれると優先的に読む事も出来るんや。
実はこれをやってくれるとメチャ助かるんやで。
ほな、精進しいやー!