急性腎盂腎炎(acute pyelonephritis) 急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN) 腎膿瘍(renal abscess)

先生、僕、重複腎動脈って言われたんですけど・・・

症状が無ければ特に問題あらへんで。

急性腎盂腎炎(acute pyelonephritis) 急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN) 腎膿瘍(renal abscess)とは

急性腎盂腎炎(acute pyelonephritis)の概要

腎繋がりで、今日は急性腎盂腎炎について話していくで。

ちなみに急性腎盂腎炎と急性巣状細菌性腎炎(AFBN)、腎膿瘍は一連やから同時に説明してくわ。

急性腎盂腎炎は、腎臓の腎盂や腎杯が細菌感染を起こしている状態の事や。細菌感染して増殖する事で炎症が起きてる状態やな。

腎盂は尿を溜めて尿管へ排出する部分の事を指すねんけど、通常は無菌状態やねん。ここに膀胱炎なんかで菌が逆流してきて感染する事で発症するんや。

ただ膀胱炎になったからと言って、必ず腎盂腎炎になるとは限らん。個々の免疫力や治療開始時期にもよるからな。

他の要因として、尿道カテーテル、尿管結石、妊娠、免疫力の低下なんかがあるで。

通常は片側のみの発症の事が多くて、30代までの若い女性に多いというデータがあるわ。

感染経路は単純性尿路感染が多くて、稀に血行感染もあるで。

泌尿器 解剖

この炎症の重症度が進むに従って、急性腎盂腎炎、AFBN、腎膿瘍と移行してくんや。

ちなみにこれらの違いは臨床所見や臨床データ、画像診断が重要な役割を果たしてるで。

画像診断においては、腎盂腎炎の段階やと画像所見に出てこーへん事が多いんや。この段階で画像所見があるのが25%程度と言われとる。

せやから腎盂腎炎は臨床所見と尿検査で診断される事が多いで。

一方でAFBNや腎膿瘍までになると造影不良域などの画像所見が出てくるんや。腎膿瘍までになるとドレナージなんかの外科的治療が必要になる事もあるし、早急に治療が必要な段階やな。

臨床症状

臨床症状は発熱や悪寒、背部痛(腰痛)CVA tendernessなんかやな。

CVA tendernessは炎症が起きている方の背部の殴打痛と痛みが体内に響く現象の事や。

つまり叩いてみて体に響くような痛みがあるかどうかって事やな。

膀胱炎も併発している時は排尿痛や残尿感も感じる事があるで。

一方で、慢性腎盂腎炎になるとあまり自覚症状が無い事も多いな。

ただ放置しておくと慢性腎不全に移行する事もあるから注意や。

治療法

治療法は軽症の段階であれば、抗菌薬の投与で軽快する事も多いで。

高熱なんかの症状がある場合は入院治療になる事もあるな。

ただ結石や腫瘍など、腎盂腎炎の原因がハッキリしている場合はそっちの治療も並行して行う事も必要や。

治療が遅れると敗血症にまでなる可能性があるからな。

画像所見

各々の画像所見

次にそれぞれの画像所見や。

急性腎盂腎炎は造影早期に低吸収、後期だと等吸収や。造影低下域は楔状の形を示す事が多いで。

他に腎腫大や腎筋膜肥厚、周囲脂肪組織濃度上昇がある。

次にAFBNやけど、造影早期に低吸収で、後期でも低吸収域が残るパターンや。

これも楔状の造影不良域を認めるで。

随伴所見は腎盂腎炎と同様で、腎腫大や腎筋膜肥厚、周囲脂肪組織濃度上昇や。腎盂腎炎とAFBNの違いは後期まで造影不領域が残るかどうかやな。

一方で腎膿瘍までになると膿瘍腔を認めるようになって、膿瘍腔が造影されずに辺縁にリング状の造影効果を認めるで。

内部にはガスや液面貯留を認める事もあるな。随伴所見は腎盂腎炎やAFBNとほぼ同じや。

これらから分かる通り造影する事が重要やで。これらの一覧を簡単に表にしたから、参考にしてみてや。

画像所見随伴所見
腎盂腎炎造影早期で楔状の低吸収域 後期で等吸収腎腫大 腎筋膜肥厚 周囲の脂肪組織濃度上昇
AFBN造影早期で楔状の低吸収域 後期でも低吸収 同上
腎膿瘍膿瘍腔の造影不良と辺縁のリング状の造影効果 同上

実際の症例

40代女性で腎結石と左背部痛の精査や。臨床データから腎盂腎炎と診断された例やで。

見てもらえれば分かると思うけど、左腎に欠損像らしき箇所は見当たらんねん。腎結石と腎周囲の脂肪組織濃度上昇を認めてるくらいかな。

腹部CT 腎盂腎炎

別の症例や。40代女性ですでに腎盂腎炎と診断されている症例や。

右腎に造影後期像まで造影不良域を認める事からAFBN疑いの診断となってるで。

腹部CT AFBN疑い

鑑別診断のポイント

腎梗塞や腎腫瘍

さて続いて鑑別診断のポイントやな。

まず腎梗塞や腎腫瘍との鑑別が一番のポイントや。腎梗塞も楔状の造影不良域を認めるんやけども、cortical rim signと呼ばれる梗塞部の被膜下の増強効果を認める事があるで。

知ってるか?cortical rim sign。

これは腎皮質の被膜に沿って造影効果が認められる所見や。腎梗塞の50%に認められると言われてて、鑑別に有用な所見なんやけども、この所見が出てくるまで発症から数時間がかかると言われとる。

他に臨床所見やデータも重要や。腎腫瘍との鑑別も臨床所見やデータを参考にするのは同様やで。

腹部CT 腎梗塞 cortical rim sign
Case courtesy of Bruno Di Muzio, Radiopaedia.org

ただcortical rim signは微妙な事が少なくないんや。やから、あまりこの所見に固執せんでもええかもな。腎梗塞の時は造影不良域がAFBNと比較して明瞭な事が多いのを頭に入れておけばええと思うで。

あとは実際問題として、腎盂腎炎とAFBNは基本的に投薬治療になるから明確に区別していない教科書もあるな。

これが腎膿瘍までになると外科的治療も加わってくるから、区別する必要はあるんやけども。

まとめ

今回は腎盂腎炎から腎膿瘍までをレクチャーしたで。ポイントは3つ。

腎盂や腎杯に原因菌が感染した状態で腎盂腎炎からAFBN、腎膿瘍と経過を辿る

楔状の造影不領域の有無と、造影効果の持続程度を確認する

腎梗塞はcortical rim signが特徴的

こんな感じや。今回は腎盂腎炎とAFBNを分けて話したけど正直、混在する場合もあってガチな鑑別は難しい事があるで。

一方で腎膿瘍は外科的対応が必要になる事もあるから、しっかり診断することが大切や!臨床データも参考にするようにな!!

ほな、精進しいやー!