YO!YO!今日は卵巣出血についてやで!
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もくじ
卵巣出血(hemorrhagic ovarian cysts)とは
卵巣出血の概要
YO!YO! 早速今日もレクチャーしていくでYO!
今日は卵巣出血についてや。その名の通り、卵巣から出血している状態の事や。婦人科領域での急性腹症に該当する疾患やな。
若年性の女性で腹腔内出血を見たら、卵巣出血か異所性妊娠破裂のどちらかをまず疑えという言葉があるくらいや。
まず月経の流れから確認しとこか。
- 月経後に卵胞が成長(大きく)なる
- 月経後2週間程度で成熟卵胞になりエストロゲンを分泌、そして卵胞が破れて卵子が腹腔内に飛び出す(排卵)
- エストロゲンの影響で子宮内膜が増殖する
- 排卵後の卵巣内に黄体が出来る(また、プロゲステロンにより子宮内膜が厚くなり着床準備の段階になる)
- 飛び出した卵子が卵管を通り子宮内に移動する
- 受精卵が着床すれば妊娠、しなかった場合は内膜が剥がれ月経が始まる
こんな流れや。そして、この流れの途中で何らかの原因で卵巣から出血する事があんねん。
具体的には外因性出血、内因性出血、突発性出血の3つに大別されるで。順に説明してこか。
卵巣出血の原因
外因性出血
外因性は外傷や生殖補助医療の時におきんねん。具体的にいうと交通事故や採卵の時なんかやな。
何らかの外力が加わって出血すんねん。これは月経の時期なんかはあまり関係あらへん。
内因性出血
内因性は血液凝固異常なんかやな。他にも薬剤服用が原因の事もあるで。
突発性出血
突発性は原因によって細分化されてんねんけど、メインは卵胞出血と黄体出血やで。
特に黄体嚢胞が破裂しやすいと言われとる。これらは月経周期に関係してるな。
黄体は新生血管の増殖が盛んで、ちょっとした事でしばしば内腔や壁外に出血すんねん。
月経1週間前が1番黄体が大きくなる時期やから、この時期の出血が多いと言われてるで。
ちなみに卵胞出血は性成熟期に多いと言われとるな。
出血の原因としては性交がきっかけの事が多くて約40%程度、その他の原因不明が30%程度との事や。
卵巣出血 90%ルール
他には、卵巣出血90%ルールっていうのもあって、90%が右側卵巣出血、90%が月経周期の15~28日目の黄体期に発症、90%が24~48時間以内に性交がある、というものや。
どちらかというと臨床医向けの内容やけど、覚えとくとええかもしれん。
- 90%が右側卵巣出血
- 90%が月経周期の15~28日目
- 90%が24~48時間以内に性交あり
卵巣腫瘍破裂による出血
他には、卵巣腫瘍の破裂でも出血を認めるで。内膜症性卵胞嚢胞や成熟嚢胞性奇形腫が該当するな。
これらが破裂すると嚢胞内の血液や消化酵素の流出で、化学性腹膜炎になる事もあるから注意やで。
卵巣出血の臨床症状
臨床症状は、急激な下腹部痛や嘔気、場合によっては下痢なんかも起きる事もあるで。
腹痛は出血源付近が痛む事が多いらしいな。
腹腔内出血した場合やと大量出血でショック症状にもなったりするから注意や。
卵巣出血の治療法
治療法は大きく分けて2パターンあるで。出血が少量の場合は基本的に保存療法や。自然に止血されて吸収されてくで。
ただ出血が多かったり貧血やショック症状にまでなると、外科的処置が必要になるわ。
500ml程度の出血やと保存的治療が取られる事が多いらしいな。どんなに多くても1000ml程度で自然と止血されるという話しも聞くな。
保存療法での経過観察中に症状が悪化する事があって、その時は入院治療が必要になるとの事や。
画像所見
卵巣出血の画像所見
次に画像所見についてや。
卵巣出血はCTで卵巣部分に高吸収域を認める事が多いで。液面形成も認める事があるな。
これが破裂すると血清腹水を認めて相対的に卵巣が低吸収になるんや。
黄体嚢胞の破裂やと造影CTで壁の造影効果を認める事あんねん。
ちなみにMRIやと出血を反映してT1WIで高信号に写るで。ただ急性期の時はT1WIが低信号の事もあるから、T2WIの方が分かりやすい(軽度高信号)事もあるで。
T1WIで高信号になってくるのは、メトヘモグロビンの影響が出てくる亜急性期(7日後)くらいやで。
辺縁から徐々に高信号になってくんねん。
ただし、これが腹腔内に出血すると腹水と混ざってこの限りではなくなるんや。
この辺りの判断は難しい事も多いな。まとめるとこんな感じや。
- CTでは卵巣部分に高吸収域や液面計性を認める事がある
- 黄体嚢胞の壁は造影効果を認める事がある
- MRIでは出血の時期によって信号強度が変化する(T1が高信号になるのは亜急性期以降)
- 急性期の場合はT2WIの信号強度を見る(軽度高信号になる)
- 血清腹水の所見があるかどうかチェックする
婦人科系の画像やけど、CTで診断するのにはどうしても限界があんねん。MRIの方が得られる情報量は圧倒的に多いで。
しかし救急の現場でMRIまですぐ撮影出来る施設は限られてるやろから、CTである程度の所見を拾える事が重要や。
実際の症例
30代 女性 子宮腺筋症で全摘後 下腹部痛精査
実際の画像や。30代女性で腹痛精査になるんやけど、左卵巣に15mm程度の出血性嚢胞を認めるで。
T2WIで軽度高信号、T1WIで辺縁が高信号やから亜急性期(7日程度)の出血と推察されるで。
ちなみに右卵巣は嚢胞やで。T1造影画像で特に充実部を認めてへんのが分かると思う。
20代 女性 下腹部痛精査
別症例や。これも腹痛精査やな。右卵巣に3cm大の卵巣(黄体)出血を認めるで。
鑑別診断のポイント
卵巣出血との鑑別疾患
卵巣出血の鑑別には、腫瘍破裂の他に異所性妊娠破裂があるで。
これは通常は妊娠反応を調べる事で分かる事が多いけども、画像的には胎嚢の同定と妊娠に伴う内膜の脱落膜化の有無の確認という事を知識として知っておくとええな。
他には、部位的に虫垂炎による腹膜炎との鑑別が必要になる事もあるな。
まとめ
今日は卵巣出血についてレクチャーしたで。今日のポイントは3つや。
黄体嚢胞出血が最も多い
血清腹水を見逃さないようにする(卵巣出血の可能性がある)
鑑別は卵巣腫瘍破裂と異所性妊娠破裂で、腫瘍性は卵巣の形態を、異所性妊娠破裂は妊娠反応を確認する
こんな感じやな。血清腹水は他の症状でも見られる事があるで。例えば消化管出血なんかや。
血清腹水をみたら、その原因を特定するのが重要やで。出血量によるけど、まごついているとショック状態になりかねんからな。
ってな訳で、今日はこれくらいにするでYO!
ほな、精進しいやー!