大動脈解離(aortic dissection)

さて、今日は大動脈解離でも話していこかな!

血管の中に血管腔が出来てしまうアレですね!

大動脈解離(aortic dissection)とは

大動脈解離の概要

大動脈解離について話していこうかと思うねんけど、まずは大動脈の構造からや。

内膜、中膜、外膜の3層から構成されていて、胸部から腹部にかけて位置してんねん。

胸部で3cm前後、腹部で2cm前後の直径やと言われとる。

ほんで大動脈解離は中膜に何らかの原因で剥離が出来て、別の血液腔が出来てしまうことや。

これが破裂したりすると大量出血になって生命の維持が難しくなったりすんねん。

大動脈解離 イメージ図

大動脈解離の分類

次に分類や。大動脈解離は次の3つに分類されとるで。偽腔開存型、ULP型、偽腔閉鎖型や。

ちなみにULPとはulcer-like projectionの頭文字で、真腔から血栓化した偽腔内への突出像を指すねん。

言葉にすると良く分からんから、下記のイメージ図で確認しておいてや。

偽腔開存型は剥離によって出来た偽腔に入った血流がまた真腔に戻ってくる状態、ULP型は偽腔の中が血栓(血腫)になってて流入した血液がそのまま血栓になる状態、偽腔閉鎖型は偽腔が完全に血栓で塞がっていて血流の流入が無い状態の事を言うんや。

この偽腔が大きくなって破裂したり、血流障害を起こしたりして致死的ダメージを与えるんや。

この中でもULP型は解離腔が増大する可能性があるから注意が必要や。

大動脈解離 分類

Stanford分類とDebakey分類

さて次に解離が起きた場所での分類もあるから、それも話していくで。

Stanford分類とDebakey分類の2つや。

Stanford分類は予後や治療方針の決定に使われてて、Debakey分類は解離の範囲と解離の入り口(これをエントリーと呼ぶで)の場所によって分類しとる。

傾向としては、Debakey分類は循環器科が使うイメージやな。基本はStanford分類が出来れば問題あらへん事が多いと思うで。

大動脈解離 分類(stanford,debakey)
・解離の範囲による分類
Stanford分類A型:上行大動脈に解離がある
B型:上行大動脈に解離がない
DeBakey分類Ⅰ型:上行大動脈にtearがあり、大動脈弓部より末梢に解離が及ぶもの
Ⅱ型:上行大動脈に解離が限局するもの
Ⅲ型:下行大動脈にtearがあるもの
Ⅲa型:腹部大動脈に解離が及ばないもの
Ⅲb型:腹部大動脈に解離が及ぶもの
DeBakey亜型分類弓部型:弓部にtearがあるもの
弓部限局型:解離が弓部に限局するもの
弓部広範型:解離が上行または下行大動脈に及ぶもの
腹部型;腹部にtearがあるもの
腹部限局型:解離が腹部大動脈のみにあるもの
腹部広範型:解離が胸部大動脈に及ぶもの
・偽腔の血流状態による分類
【偽腔開存型】 偽腔に血流があるものや、部分的に血栓が存在する場合、大部分の偽腔が血栓化してもULPから長軸方向に広がる偽腔内血流を認める場合はこの中に入れる
【ULP型】 偽腔の大部分に血流を認めないが、tear近傍に限局した偽腔内血流(ULP)を認めるもの
【偽腔閉塞型】 三日月上の偽腔を有し、tear(ULPを含む)および、偽腔内血流を認めないもの
・病期による分類
【急性期】  発症後2週間以内、この中で発症48時間以内を超急性期とする
【亜急性期】 発症後2週間を超えて3ヶ月以内のもの
【慢性期】  発症後3ヶ月を超えるもの
※2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインを参考に作成

Stanford分類は上行大動脈に解離があるかどうかでA型とB型を分けてるんや。

なんでここで分けてるかっちゅーと、上行大動脈に解離があって進行すると心タンポナーデや心不全に移行するからなんや。

極めて予後不良な病態やねん。せやから早めの外科的処置が必要やで。

原因と臨床症状

原因

大動脈解離は高齢者に多いのと、高血圧などの外的要因の他に、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群、家族性大動脈解離などの遺伝性要因もあると言われとる。

ただメインは動脈硬化、高血圧、糖尿病なんかの生活習慣病の影響が大きいな。

marfan症候群

ちなみにmarfan症候群は変異性常染色体優性遺伝の結合織病や。

簡単にいうと体内の結合組織が脆弱になって、大動脈瘤、大動脈解離、高身長、骨格変異なんかが起きる遺伝病や。

進行性の大動脈基部の拡張は大動脈弁輪拡張症(annulo-aortic ectasia:AAE)と呼ばれててMarfan症候群診断の基準の1つになっとる。

臨床症状

臨床症状は主に背部痛があるんやけど、解離した場所によって多彩な症状になるで。

中には無症状の人もおるって話しや。重症例やと意識障害や失神するケースもあるらしいな。

多くは突然発症するで。

治療法

StanfordA型は上行大動脈に解離がある関係で外科的に人工血管置換術やオープンステント術(弓部大動脈置換術)が行われてるで。

というのもStanfordA型は治療せんと、発症後2週間の死亡率が50%にもなると言われとんねん。

StanfordB型は投薬にて経過観察する事が多いらしいな。ただ定期的に解離が進行してへんかどうかの画像診断は必要やで。

大動脈解離 治療法

Adamkiewicz動脈

他に知っておく事として、胸腹部大動脈手術の合併症の1つに脊髄虚血があんねん。

これは大動脈手術をする時に、脊髄を栄養するAdamkiewicz動脈が障害されることで起きんねんけど、これを予め画像診断にて同定しておければ最高や。

Adamkiewicz動脈について簡単に説明しとくと、第7肋間~第2腰動脈のいずれか1本から分枝する動脈で、前脊髄動脈と合流する所で特徴的なヘアピンカーブを描くとされてる。

ただ結構個人差が大きい血管でもあんねん。脊髄の尾側の1/3を栄養してて、これが障害されると下肢障害が起きたりするで。

Adamkiewicz動脈を知らなかった技師はんは、ネットで検索して調べておくとええで。

たまに整形外科医からAdamkiewicz’ arteryどこって聞かれるかもしれんからな。

adamkiewicz' artery

画像所見

大動脈解離の画像所見

続いて画像所見についてや。

単純CTやと内膜石灰化の内方偏位が解離を示唆する所見になりうるで。

造影CTの時は偽腔内造影効果の有無の確認が必要や。偽腔開存型で遅延して造影される事もあるから後期相での評価もしたいとことやな。

偽腔閉塞型解離の急性期には、偽腔が三日月状の高吸収域として認められるで。

後はStanford分類やったりDebakey分類の評価も需要やで。

特にDebakey1型や3a型でどこまで偽腔があるかは、MPRして複数方向から確認してみる事が重要や。

特にStanfordA型の診断は重要や。治療への早さがそのまま予後に直結するからな。

後は解離による狭窄や閉塞を来す場合があるから、腹腔動脈や上腸管動脈、腎動脈のチェックも必要や。

  • 単純CTでは内膜石灰化の偏位
  • 偽腔内造影効果の有無と形状(偽腔開存、偽腔閉塞、UIP型)
  • 偽腔の範囲(Stanford分類)

これらをチェックや。

実際の症例

70代 男性 単純検査で大動脈解離疑い

実際の画像や。上行大動脈に解離を認めてStanford分類やとA型になるで。

Stanford分類-A型

別のStanfordA型の症例や。

胸部CT画像 大動脈解離 StanfordA型
Radiopediaより

別症例(Stanford B型)

こっちは大動脈解離疑いで検査になった例や。こっちは上行大動脈に解離を認めへんからStanfordB型で、偽腔閉塞型や。

胸部CT画像 大動脈解離 偽腔閉塞型

50代 女性 背部痛精査

参考までに腹部大動脈解離の例や。合わせて確認しておいてや。

腹部CT画像 大動脈解離

鑑別診断のポイント

背部痛を伴う疾患

最後に鑑別診断のポイントやけど、これは胸痛や背部痛を伴う疾患の鑑別が必要になるかな。

具体的には心筋梗塞や急性膵炎、胆嚢炎あたりや。

これは解離が出来る部位によって痛みの位置が変わるから臨機応変に対応する事が必要や。

造影CT検査をすれば、おおかた診断に迷う事は無いと思うねんけど何より早期の診断が重要やで。

急性解離と慢性解離の鑑別、切迫破裂の有無、臓器障害の有無あたりを観察する事が必要やで。

まとめ

今日は大動脈解離についてレクチャーしたで。ちょっと色々あったからポイントをまとめておいたで。

これを頭の中に入れておけば、ほぼ大丈夫や。

  1. 急性解離か慢性解離か
  2. 偽腔開存型、ULP型、偽腔閉塞型を確認する
  3. 解離範囲の診断(Stanford分類、Debakey分類)
  4. entry、re-entryの有無
  5. 上行大動脈に解離がある場合は心臓への波及の有無(心タンポナーデや心不全など)
  6. 解離による大血管の狭窄や虚血による血流障害の有無
  7. Adamkiewicz' arteryの評価

さてレクチャーもそろそろ終わりやし、なんか腹減ったなー。飯食いにいこか?

ラッキー!行きます!

よっしゃ、そうと決まればダッシュや。
ほな、精進しいやー!