もしもーし、すまんやで、ちょっと教えてくれや。この症例のSagitalって撮影してるかな?
そうか、ええんや。了解や、大丈夫やで。
ふむふむ、それってSagも追加しておいた方が良かったんですか?
あるに越したことはないって感じやな。
読影してて思うのは、どうしてもワシらは撮影済みの画像を読む事になんねん。
そん時に追加で欲しい画像がピンポイントで撮影してあったりすると、コイツは分かってるなって思う訳よ。
分かってるやん!ってな。
たまにおんねん。ホンマに技師はんか?ってレベルの読影能力を持った人が。
もくじ
筋肉内血腫(muscle hematoma)とは
さて、今日は筋肉内血腫についてレクチャーしてくで。これはスポーツ外傷なんかでたまに見るヤツやな。
「ぶつかった」、「転んだ」、「痛みが出てきた」なんかで精査してみると発見される事があんねん。これは簡単に言うと筋内に出血が起きて血液が溜まった状態の事やで。
筋肉内血腫の概要
基本的に外傷が原因の事が多いんやけど、外傷歴が無い場合は病歴を確認してみると読影の参考になる場合もあるで。特に高齢者なんかで普段から運動の習慣が無い人が、急に運動したりすると、筋損傷が起きて血腫が出来る事があんねん。
ほんで、ワーファリンなんかを飲んでると血液が固まらなくなって大きな血腫になったりする事があんねん。この時の運動はいわゆるスポーツやなくて、階段の上り下りなんかの普段の事も含むんや。せやから一見すると原因が不明で発症したようなケースも多く見られるで。
つまり若い人はスポーツ外傷、高齢者は薬物的原因が関係している可能性があるって事やな。
もう1つ加えると、実は病歴の確認が必要な事も多いんやで。何かしらの術後の出血が血腫となる場合もあんねん。
これらを含めて考えられる原因には次のようなものがあるわ。
- 外傷、術後出血、血友病、抗凝固薬療法中など
外傷だけや無いって事やな。
筋挫傷と肉離れの違い
ちなみに筋挫傷と肉離れの違いって分かるか?あらたまって聞かれると、答えられへん人も多いんちゃうんかな。
筋挫傷は相手とぶつかったりする事での外力によって筋肉が損傷を受けた状態、肉離れはジャンプなんかの自分自分の負荷による損傷した状態を指すねん。
筋肉が損傷しているのは変わらんけど、発生原因が違うって事やな。相手がいるか、自分でやってもうたかや。まぁトリビア的な感じで知っておくと、後で役に立つ事があるかもしれんわ。
臨床症状
臨床症状は疼痛や神経の圧迫や。筋損傷による痛みや、血腫が神経を圧迫する事によっての神経障害が起きたりするで。血腫が大きいとかなりの痛みになる事もあるらしいで。
治療法
治療法やけど、コンタクトスポーツなんかの原因が判明しているものに対しては、基本的にアイシングして出血の程度を少なくする事が重要や。時間の経過と共に吸収されていくんやけど、大きい場合は中々時間がかかったりする事があんねん。その時は血腫溶解した後で吸引する事もあるで。
画像所見
筋肉内血腫の画像所見
次に筋内血腫の画像所見について話していくで。基本は血腫(出血)やからMRIでの時期別での信号強度は次のような感じになるで。これは脳出血のパターンにも似ているから、合わせて覚えてしまった方が後々楽になるで。
- 受傷(出血)後1~4日:T1WI、T2WI共に低信号(細胞内デオキシヘモグロビンの影響)
- 受傷(出血)後2~7日:T1WIで高信号、T2WIで低信号(細胞内メトヘモグロビンの影響)
- 受傷(出血)後1~4週:T1WI、T2WI共に高信号(細胞外メトヘモグロビンの影響)
- 慢性期:血腫の辺縁が全てのシーケンスで低信号(ヘモジデリンの影響)
まぁ、実際は上記のように明確に分かれるパターンは少なくて、不均一なパターンを示す事がほとんどや。内部に脂肪成分が疑われる場合はT1脂肪抑制画像が有効やで。腫瘤性病変との鑑別は造影効果の有無が参考になるで。
実際の症例
ほな実際の画像を見ていこか。10代の学生さんで、MRI検査の10日前に部活動中に痛みが発生してん。USで右大腿部に血腫疑いとなってMRIを実施した例やで。右大腿直筋損傷と血腫を認めると思うで。
こっちは60代男性の症例で、1週間前に皮下の軟部腫瘤に気がついて精査となった例や。右の腓腹筋内に血腫を認めるのが分かると思う。
こっちは臀部の血腫の症例やな。誘因なく痛みが出現して精査となった例や。右の大殿筋内に血腫が確認出来ると思うわ。
鑑別診断のポイント
神経鞘腫ほか
さて鑑別診断についてやけど、血腫が出来る場所によっては神経鞘腫なんかの鑑別が必要になる事があるで。これには経過を確認したりする事で鑑別が可能な事が多いで。
他には、造影検査は腫瘤と血腫の鑑別に有用な事が多いのは上で話した通りで、血腫は辺縁のみ造影効果が見られる事が多い事、腫瘍性病変は全体的に造影される事が多いは知っておくべき内容や。血腫も慢性期になると、肉芽腫形成して充実性腫瘍と紛らわしい造影効果を認めるのを知っておくようにな。
まとめ
さて、今日は筋内血腫についてレクチャーしてきたで。ポイントは2つや。
外傷などの直接的原因と、薬剤性などの2次性の原因が関係している事がある
出血時期によって各シーケンスの信号強度が違う
こんな感じや。上で時期別に信号強度のパターンを話したけども、信号強度は均一になる事の方が少ないで。その辺りを考慮して読影するんや。
そういえば、この間、血小板が減少している人が血腫疑いで検査しに来てました。下腿に10cmくらいの大きな血腫がありましたね。
せやな。血小板が減少しているパターンなんかは、小さな損傷でも血液が止まりにくいから血腫が大きくなる事もあんねん。実際に撮影して大きな血腫が偶発的に見つかるのはこのパターンや。
筋内血腫は学生のようなコンタクトスポーツをやっている人に多いと思われがちやけど、実は高齢者なんかにも発生する事があんねん。そういった事を頭の中に入れながら検査すると、より読影しやすい画像が撮れると思うで。
ワシらは撮影はせーへんからな、あくまで撮影されたものを読む事しか出来ん。せやから技師はんのスキルで読影の難易度が全然違ってくんねん。よろしく頼むで。
さて、ってな訳で今日はこんな感じにしよかな。
ほな、精進しいやー!