もくじ
HSPってなに?
職場の雰囲気を敏感に感じて取ってしまう人達
すぐ落ち込む、自己肯定感が低い、ストレス耐性が低い・・・
一見すると、あまり部下に持ちたくないような特徴が並んでいます。まだどれか1つだけなら対応も可能でしょう。ただこれが2つ、3つと重なるとかなりの労力が必要になります。あなたの職場にこのような人はいないでしょうか?ひと昔前なら、面倒な人というレッテルを貼られていた人達ですが、実はHSPと呼ばれる人達なのかもしれません。
HSPとは?
HSP(High Sensitive Person)という言葉を聞いた、もしくは知っていますか?
HSPとは人の感情に敏感な人達の事を指します。HSPは医学診断名ではないので病気というよりは、特性というふうに記載されている事の方が多いです。HSPの人達の1番の特徴は「共感性が高い」という事です。つまり周りの雰囲気や空気に敏感かつ、共感しやすいので、例え自分が怒られていなくても同じフロアにいるというだけで、あたかも自分が叱られているかのように感じてしまうのです。なのでHSPの人が職場、特に自分のチーム内にいると管理者として気を付けなければならない事があります。
HSPの概要
HSPは最近よく聞くようになった言葉で、ネット上では「繊細さん」などと記載されている事も多いです。芸能人もHSPである事をカミングアウトした人が何人かいますね。それだけ実際は多くの該当者がいるという事でもあります。
この概念は1996年にアメリカの心理学者のエレイン・N・アーロン博士が提唱した事が始まりです。上でも書きましたが、HSPは非常に感受性が高いために外部からの刺激を受けやすい人の事をさします。
日本では全人口の約20%が該当すると言われており、特徴的な4つの性質があるとされています。これらは各々の頭文字をとって「DOES:ダズ」と呼ばれています。
- Depth of Processing(D):深く様々な思考をめぐらせ結論を出す
- Overstimulation(O):刺激に対する反応が強いために疲れやすい
- Emotional response and empathy(E):共感能力が高く相手の感情の影響を受けやすい
- Sensitivity to Subtleties(S):他の人が気がつかないような音や光、匂いに敏感である
また一概にHSPと言っても、その中でいくつか分類があり、外向的or内向的、刺激追求or非追求に分類されて4パターンがあるとされています。一方でこれらは、ASD(Autism Spectrum Disorder、自閉症スペクトラム障害、発達障害の1つ)の症状と重なる部分も多く、インターネットにあるような簡易問診票で自己診断するのは危険とも言われています。なお参考までにASDは発達障害に該当します。つまり医学的診断名になり症状によっては投薬治療が必要になる場合があります。
HSPについてはこれらの書籍が大変参考になるので、興味がある人は是非読んでみて下さい。
HSPは病気なのか?
HSPという診断名はない
上記で記載した通り、2023年の現時点でHSPは医学的診断名ではありません。また比較的新しい概念のために未だに存在自体を知らない人が数多くいます。またこのHSPは病気というよりは個性や性格に分類されるので、治療するという概念がありません。いかに上手く付き合っていくかが重要になります。
そして管理者はHSPの特徴を考慮する必要があります。HSPの人は感受性が高いがゆえに、それが長所にも短所にもなったりします。この点を管理者が把握、理解出来るかがHSPの人が働きやすい職場になるかどうかになります。
HSPにはまだまだ理解が必要
HSPはまだまだ一般的ではないので自分の職場にいたら、まずは周囲の人に説明や伝える必要があるかもしれません。最初は理解を得るのが難しいかもしれませんが、根気よく周知していって下さい。上司が理解を持たないと実際の当人はどうする事も出来ません。特に昭和生まれの人は、この辺は根性が足りないと言われてきた世代なので理解をしてくれない人が多いです。
HSPの人に任せる仕事内容
配属の注意点
HSPは日本人の20%が該当するというデータもあり、実はとっても身近な特徴です。近い数字でいうと、日本人ががんで死亡する確率が、男性で26%、女性が18%です。(最新がん統計 がん情報サービス)5人中1人は該当するので多くの組織マネジメント者にとって考慮すべき課題なのです。
HSPの症状は共通ではなく個人差があります。ある人と別の人が感じる苦痛の原因は全く違ったりする事もあります。なのでまずその人が何に対して苦手なのか、どんな状況が苦痛と感じるのかを明確にしましょう。
ここを明確にせずに配置すると、心理的ストレスが重なって休職や退職に繋がります。職場に来るのが辛くなったり、無理をすると身体症状も出てきたりします。身体症状が出てからでは回復に時間がかかるケースもあるので、まずは不安の元となる原因を把握するのが重要です。
もし症状が出てきたら、個々で対応するのは難しいです。しかるべき医療機関への受診を促すなどをして下さい。
HSPの人が得意な事
一方でその人の得意なことも把握しておきましょう。HSPの人達は一般的に感受性や共感力が高いと言われる人達です。この特徴を生かせるような業務やポジションを担ってもらえるような土台を作っておくと良いですね。
例えば新人教育なんか良いかもしれません。共感してくれる先輩は後輩にとっても強い味方になります。実際に我々の施設では、若手教育のサポート役になってもらったところ、教育者では気がつかなかった微妙な点を教えてくれたり、細かなサポートをしてくれたりと、十分に能力を発揮してくれています。
でも1番の有効策は、もしHSPに向いていない職種に応募してきたときに不採用にしてあげる事です。例えばコールセンターやクレーム対応のような業務が該当します。不特定多数の人と対応するような業種は本人にとっても辛い職場になります。企業側も人手不足を理由に採用してしまうと、早期退職という形になり双方にとってデメリットしか生みません。
面接の段階で見抜くのはなかなか難しいですが、周囲の空気の変化に敏感かどうか等を聞いてみて下さい。ここでNoと言える人は少なくともHSPの傾向はないとも言えます。あまり空気に鈍感すぎるのも考え物ですが・・・
HSPの人が向いている業務内容は?
HSPの人はその特性上向いていない職種や業務内容があります。おおよそ次の2つが該当する事が多いです。
- 不特定多数の人と接する業務
- スピード感を求められる職場(業務)
不特定多数の人と接する業務は共感性が高いがゆえに気疲れしてしまう可能性が高いと言われています。営業職や上記で述べたコールセンター業務は避けた方が良いでしょう。また深く思慮する事で最初の1歩を踏み出すまでに時間がかかる場合があったりします。日々スピード感を求められるような職場も合わない場合が多いようですね。
もしご自身がHSP疑いで今現在そのような職場に在籍している場合は、無理をせず自分に合った職場に転職するのも選択肢の1つです。無理をして心身を壊しては身も蓋もありません。転職に対してエージェントに不安な点を聞いて1つ1つ解消していきましょう。また先輩や上司は働く場所や方法はいくらでもあるという事を気づかせてあげて下さい。相手の視野や視座を高めるようなアドバイスをするようにしましょう。
一方でHSPの人が向いている業務内容は以下のようなものが考えられます。
- 自分のペースで出来る仕事
- 医療や介護
自分のペースで出来る仕事は向いている事が多いようです。共感力の高さをを武器にインストラクターのような職業が良いかもしれません。また医療や介護職では、相手の気持ちを考える力(共感能力)が必要とされます。特にHSPの人は他者貢献を感じられると精神的に満足する事が多いので、誰かを助ける職業は特徴を生かせる職業の一つかもしれません。看護や理学(リハビリ)なんかは向いてそうですね。
HSPに対してのマネジメント方法
HSPの部下を持ったら
ここからはHSPの人を部下や後輩に持つ人向けの話です。HSPの人は上記の通り、感受性と共感力が高いという特徴を持った人達です。人口の20%が持つ特徴という事は、残りの80%は持っていないという事です。この80%の人達が理解しようと思っても簡単ではありません。人間は経験していない事に対してイメージする事が難しいのです。
実は相手の気持ちになって考えるという事は、自分の認知バイアスを外したりメタ認知が必要だったりと、能力が高くないと難しい事です。皆が皆、理解出来るとは考えないようにしましょう。必ず自分の価値観でしか判断出来ない人達が一定数います。
ではどうするか?
今まではこの理解が進まない事もあって、HSPの人達は生きづらさを感じていました。なので、まずは自分自身がHSPを知らない場合はHSPとはどんな人達かを知る事から始めましょう。該当する書籍を3冊程度読めば概要だけでも分かると思います。それが第1歩です。そしてHSPについてある程度知識が得られたら、そして本人と一緒に解決策を考えてみましょう。こちらが考えている方法が相手にとってベストだとは限りません。HSPの人達が出来るだけストレスを感じないように、かつ能力を活かせるような職場環境を作る事を目指してみましょう。
- あまりスピード感が必要ではない業務を担当してもらう
- 新卒や若手の相談相手になってもらう
- リモートワークを導入してみる
- 配置転換をする
これらをやってみるだけで全然違うかもしれません。大切なのは環境作りです。個々の力で解決しようとしても失敗します。環境や仕組みで解決出来るようにしましょう。
HSPのまとめ
世の中には色んな人がいる
HSPは性格や特徴の一つとされています。走るのが速い人もいれば遅い人もいますよね。これと同じです。世界には色んな人がいます。国や人種が違えば考え方や価値観も全く違ってきます。あなたの常識は他人の非常識かもしれません。自分の価値観の中で判断するのはやめましょう。それが今後、HSPの人を受け入れられるようになる秘訣だと思います。
職場にHSPかなと思われる部下や同僚がいたら、
- まずHSPという特徴について調べる
- 本人と何がストレスになるのか、何が得意なのかを話し合う
- 特徴が活かせるような役割や業務を探すor作る
- 時には転職を促す事も必要
このような事を考えてみましょう。重要なのは、HSPという特徴を持った人がいるというのを知っておく事です。今までは「面倒な人」の一言で片付けられていた事もあるかもしれません。しかし今後はその一言で片づけられない日が近づいてきているのです。
少子高齢化に直面する日本
今後、日本では少子高齢化で労働力が少なくなっていきます。就職氷河期と言われる2000年前後のような状況はもう来ません。国立大卒のような能力を持った人が時給800円程度で採用出来た時代はもう終わりました。
また2023年11月現在、円はドルや他の通過に対して大きな円安状態になっています。つまり円の価値が下がったという事なので、この円をわざわざ稼ぎに来る外国人も少なくなります。
つまり今後は限られた人員で結果を出せるようなマネジメント能力を持った人が必要になるのです。部下のタイプに合わせてマネジメントが出来る、ぜひそのような上司になって下さい。