理想の上司になるためには

上司とは何か?

上司とはどんな人か?

まず上司とはなんでしょうか?課長?部長?役員?社長?一般的にはこれらの役職者が上司になる事が多いです。でもこれらは役職名ですよね。じゃあ上司とはなんなのでしょうか?

wikipediaによると上司とは次のように記載されています。

「上司は、組織において自分より上位の役職に位置し、自分に対して指揮命令・監督などの権限を持つ人物のこと」(wikipedia 上司

上司は自分の仕事や業務に対して影響を及ぼす権限を持った人になります。自分の評価に直結する人で、仕事をしていく上では関わる事を避けては通れません。つまり上司とどうやっていくか、どんな上司なのかを把握するのが会社員にとって必要な能力になります。

理想の上司とは

部下なら誰しもが思った事がある理想の上司の元で働きたいという思い。では理想の上司とはどんな上司でしょうか?

うるさい事を言わない、決断力がある、最後は責任を取ってくれる、管理がゆるい、サボってても何も言わない、等々・・・

人によっては厳しくしてくれる(成長させてくれる)人が理想だったり、また仕事に干渉してこない(管理が甘い、結果を求めない)人がベストだと思う事もあるでしょう。ただこれは部下側から見た上司で、会社側から見た上司は、やはり結果を出す上司が理想の上司になります。この両者の方向性が一致していれば良いのですが、問題は一致していない時です。

理想の上司ランキング

明治安田生命が毎年出している「理想の上司ランキング」というのがあります。これは部下側から見たランキングですが、2023年を見ると、男性が内村光良さん、女性が水ト麻美さんがトップでした。他には櫻井翔さん、枡太一さん、天海祐希さん、アンミカさんなどが上位にランキングされています。

これらからイメージされるのは、理想の上司とは「優しさ」と「厳しさ」が共存しているという事ではないでしょうか。どちらも普段は優しそうな印象ですが、締める所は締めるといったイメージがありませんか?恋愛と一緒で、優しいだけでもダメなんです。 今、部下がいて上司の立場にある人も、これから部下や後輩を持つ人も、キーワードは「優しさ」と「厳しさ」です。まずはこの2つを覚えておきましょう。これらで部下を成長させることで結果的に会社も成長していき、利益を出せるようになります。

本当に怖い上司とは

一方で【本当に怖い上司とは】というネット記事を過去に見つけました。その内容は確かこんな感じだったと思います。

  • 出世しようと思っていない:いま目の前に集中することに快感を見出し結果的に出世している
  • 嫉妬しない:同僚の出世を自信の目的のためにどう利用できるのかの方に関心がある
  • 陰口を言わない:陰口を言うほど他人に関心がない
  • 挑戦が好き:刺激を好む
  • 残業しない:効率主義で部下の能力、時間を上手く使い切る
  • 会社に依存していない:依存ではなく利用している
  • 家庭第1:家族と過ごす時間に重きを置いている
  • 個人第1:自分の時間も確保している
  • へつらわない:上司に気に入られようと思って働いていない
  • 休む時は休む:自分がいなくても組織が動くように作り上げている

当時のメモと記憶から絞り出してみるとこんな感じだったと思いますが、組織構築する上で色々と参考になる箇所も多いですね。特に「残業しない」の項目では、自分の能力だけじゃなく結果的に部下の能力も伸ばす事が必要になります。これは部下側から見ても自己成長が感じられるのでメリットが大きいのではないでしょうか。

なお、これらは「他者に依存していない」という事がキーワードになります。つまり何があっても(会社が倒産やクビになっても)自分1人で生きていけるようにしているという事ですね。そもそもこれが出来ている人がクビになる事は考えずらいのですが・・・

クラッシャー上司

ここ最近、クラッシャー上司という言葉を見るようになりました。クラッシャー上司とはwikiでは次のように記載されています。

「クラッシャー上司とは部下を自主退職にさせたり、働きを悪化させる事が多い上司で、人格が未熟であり、極めて高いプライドを持つ反面、精神的に傷つきやすく気の小さい人物に多いとされている。」

これは元・東京慈恵医大の牛島教授と筑波大の松崎教授が命名したと言われています。このように文字にしてみるとそもそも上司になってはいけないような人物ですが、実際にこのような上司がいます。これは自分が仕事が出来て挫折を経験していない人に多く、自分が出来るが故に他人にも求めてしまうのが理由としてあるのではないでしょうか。どちらかというと、会社の利益のためではなく自分の自尊心を満たすためにやっているような人かもしれません。

このクラッシャー上司になると、部下は成長しないどころか退職していきます。会社としても損失なので、自分がクラッシャー上司になっていないかどうかはチェックが必要です。

上司ガチャというパワーワード

「上司ガチャに失敗した」

これも最近耳にするようになった言葉です。部下や後輩から上司ガチャに失敗したと思われているんじゃないかという不安を持っている人、意外と多いと思います。いったん上司ガチャ失敗というレッテルを貼られると、業務にも支障が出てきます。部下が指示を聞いてくれなかったり、独自の行動を取るようになったりして全体の統率が取れなくなります。そして部下は退職、転職していきます。こうなると業務が回らないのは勿論、人材採用と育成に大きなコストが掛かり続けます。

他にも親ガチャなんて言葉もありますが、共通しているのは自分では選べないという点です。部下にとってどんな上司にあたるかは運なのです。

過去に実際にいた上司達

ちなみに私が今まで経験した上司のタイプはこんな感じです。

  • 自分は安全圏にいて、そこから指示だけ出すマン
  • たまに現場に来て文句だけ言って帰ってくマン
  • 精神論オンリーマン
  • 感情のコントロールが出来ないマン
  • 公衆の面前で鬼詰めしてくるマン(もちろん後日にフォローなど無し)
  • 権力をバックに反論出来ない雰囲気を出すマン
  • 組織上は決定権があるのに、決めないマン
  • 質問に対して答えないマン
  • 評価基準が曖昧で、個人の好みが出ているマン

これらは1人で複数の要素を持っている人がほとんどで、どれか1つだけというケースはありませんでした。こうやって文字にしてみると最悪ですね。

ちなみに過去に全要素を持っている人が1人だけいました。その人が「誰も後輩が慕ってこない」と愚痴を言っていましたが、何も気がついていないというのも凄いなと思った記憶があります。今は私も部下を持つ身なので、その人を反面教師とするように心がけています。

ちなみにちゃんとマトモな上司もいましたよ。

理想の上司がいない事で起きる問題点

理想の上司が不在だとどんな事が起きるか

大学時代の同期や仲間に聞いてみても、自分の上司が理想の上司であると答える人は少ないんじゃないでしょうか?もしくは自分が上司の立場なら自信を持って理想の上司であると言えますか?Yesと答えられる人はそれほど多くは無いと思います。

部下から見るか、会社がら見るかで理想の上司の定義が違ってくると思いますが、いったんここでは「部下を成長させられる上司」とした上で、この上司が少ない事での問題点を考えていきます。

  • 部下が成長しない
  • 部下がついてこない
  • 職場の雰囲気がゆるいor悪い
  • 若手のロールモデルがいない
  • 退職率が高い

ざっと考えてもこのような内容が出てきます。順にポイントを見ていきましょう。

部下が成長しない

まず問題なのが部下が成長しないという事です。人は働き始めた新社会人の頃は誰しも成長意欲を持っています。この成長意欲を適切に刺激する事でチャレンジと失敗、成功を繰り返します。その過程で上司からの優しさや、厳しさを伴ったフィードバックを経て成長していきます。ここが機能しないと、せっかく入社した社員も成長出来ませんしついてもきません。つまりは会社の成長も止まってしまうのです。これでは人材を上手く活用出来ていないとも言えますね。

部下の育成についてはこちらの記事も参考にしてみて下さい。

職場の雰囲気がゆるい

これは部下の育成に関心が無い組織にありがちです。部下の育成や成長にはチャレンジと、それに対するフィードバックが必要です。このフィードバックが無いと部下はどこを改善していけばいいのかが分かりません。適切なフィードバックがあれば部下は同じ失敗をしないように注意をします。そしてこの注意をしている状態であれば、雰囲気が緩んでいるという事はありません。なぜなら失敗をしないように集中しているからです。つまり、上記の部下が成長していなと同じ意味にもなるのです。

若手のロールモデルがない

これも大きな問題です。入社した若手は最初の数ヶ月~1年で先輩や上司を見て自分の将来をイメージします。この組織に残って自分にメリットがあるのか、自分の3年後、5年後、10年後はこんな感じなのかを判断します。ここで後輩や若手が目指すようなロールモデルがいないと、自分にメリットが無いと判断してさっさと転職してきます。

退職率が高い

若手が退職や転職する理由はある程度決まっています。給与、労働条件(休み)、仕事内容、人間関係のいずれかです。これらはある程度、上司がコントロール出来るもので、管理能力次第で変わる事でもあります。個々の能力と組み合わせを考慮して、仕事内容を振り分けて、休みの取りやすさを調整し、その結果で評価する。このあたりが上手くいっているチームは退職率が低い事が多いです。

せっかく入社してきてくれた若手が、成長も出来ずに数年で退職していく。上司の管理能力の有無で結果に大きな差が出るのです。

退職率を下げる方法についはこちらの記事も参考にしてみて下さい。

理想の上司が生まれにくい原因

責任の所在

では理想の上司が生まれない原因は何があるのでしょうか?優しくて厳しい人なら多くいます。でもその人達全員が理想の上司かと言われるとちょっと違うような気もします。他に何か要素があるのかもしれない。

なので理想の上司というのをもう少し因数分解してみましょう。部下からすると、優しさと厳しさ以外にどんな要素を持った上司なら安心して働けるでしょうか?

若手はベテランと比較すると能力に未熟な部分もまだ多いです。なのでミスをしてしまう事もあります。当然、ミスしたらリカバリーが必要になるのですが、このリカバリー方法で差が生まれます。

信頼出来る上司には、最終的には責任を取ってくれる、何とかしてくれるという安心感があります。一方でダメ上司は、失敗の責任を全て若手に投げます。自分で何とかする事はありません。我関せずといった顔します。

つまり理想の上司の条件に「責任の取り方」がある事が分かります。言う事はマトモでも、最後の責任を部下に押しつけるのはダメ上司あるあるではないでしょうか?これが起きると部下は一気に冷めます。

出世条件

実はこの問題は上司自身の出世と関係があります。

今の日本組織の中で出世する条件はなんでしょうか?実績や結果を出す事は当たり前ですが、他にも「失敗していない事」があるような気がします。どうも日本の風土的に1回失敗したら終わりのようなものがあるように思えて仕方がありません。言い替えると減点主義でしょうか。人間は失敗しないなんて事はあり得ません。どんなに優秀なバッターでも10回中3回しかヒットを打てません。これが4回になると神様扱いになります。そんなもんなんです。

でも出世には失敗の有無が関係してくる。なので99%失敗が起きないような案件ばかり担当するか、失敗しても現場に押しつける。これではどこにもメリットが生まれません。

一方で海外では違うと聞きます。失敗経験が無いとチャレンジ能力が低いと見なされ、これはこれで出世に関係してくるようですね。(実際に外資で働いた事が無いので本当かどうかは分かりませんが)

これが元凶なのではないかと思うんです。

失敗出来ないという事は積極的にリスクが取れないという事です。なぜならリスクを取ってチャレンジして失敗したときに責任問題になるからです。これは失敗を悪い事としている前提があります。失敗をする事は悪い事ではなく、経験や後の成功のために必要だというふうに考える事が出来れば、違った捉え方をする事も可能なのではないでしょうか?

もう一つの原因

実はもう一つ原因があります。それは「孤独に耐えられない上司が多い」という事。

上司は部下の成長のために、時には耳の痛い事も言わなければなりません。その結果、嫌われる、ウザがられる事も多々あります。結果として孤独になったりもします。人は否定されるのを嫌う生き物なので、これが耐えられない人も一定数います。でも上司はこれを行わなければなりません。なぜなら部下が成長しないからです。短期的に見ると嫌われたりマイナス面ばかり強調されるかもしれませんが、中長期的に見ると成長して会社に貢献してくれるなら十分やる価値はあるのではないでしょうか?

部下からすると、何だかんだで成長を望んでいます。ここが満たされるには厳しいフィードバックをしてくれる上司が必要なんです。そして上司は会社にメリットや利益をもたらすために存在しています。ここを理解していない人が多いのも事実です。

過去の失敗

「部下は上司を選べない、自分の上司がポンコツだったら終わり。あたなは部下にとって世界一の上司だと言えますか?」

ある動画に出てきた文言です。けっこう刺さりましたね。当時はポンコツ上司としてリアルに現在進行形状態でした。部下は勝手に成長するもの、辞めるのは根性が足りてないからだ的な昭和の体育会系的な感じだったと思います。ただ何気なしに見ていた動画で上記の文言が出て来た時に、確かに自分は上司に恵まれてはいませんでしたが、今の部下はそんなの関係が無い。自分の上司運は無かったが、部下の上司運が無いのは変えられるんじゃないかと思ったのです。

そこからコーチングやティーチング、傾聴、モチベーション管理、1on1などの本を読み始漁りました。最初は手探りで色んな事を実施し、その都度で若手や部下からフィードバックをもらいました。「やる意味が分からない」、「時間のムダだと思います」。最初はこんな意見が出てきて、さすがにメゲそうになりましたが、そこは体育会系で培ってきた根性論の出番です。メゲずにそう思った原因を丁寧に深掘りして修正案を実施していきました。なかなか結果が出てきませんでしたが、半年経過したくらいから少しづつではありますが、肯定的な意見も出てくるようになりました。

そして改善点をピックアップし改善していった結果、退職率が80%だったのが10%に、部内の公的資格取得数が2倍以上に、職場の雰囲気の良さが「よくも悪くもない、やや悪い」がメインだったのが「やや良い」が大多数になりました。

  • コミュニケーション数の増加
  • 定期面談の実施(目標設定とフィードバック、現在の状態把握)
  • 採用人物像の見直し

具体的にはやった事はこれくらいです。採用の段階で間違えない、採用後はちゃんとコミュニケートを取って、適切なフィードバックを実施する。これだけで部下からの印象はかなり変わるのではないでしょうか?

コミュニケーションの重要性

この中でコミュニケーションの頻度は特に重要だと思います。なぜなら日ごろからコミュニケーションをとる機会を作っていれば小さな変化にも気が付く事ができるようになります。小さな変化に気がつければ早めに対処も出来ます。傷が大きくなってからではリカバリーにも時間が必要になります。

ただそうは言っても忙しい人も多いと思います。そこでコツがあります。それは、

「コミュニケーションの機会を強制的に設定してしまう事」

です。私はこれを隔週の定例MTGとして設定しました。半ば強制的にスケジュール登録する事でコミュニケーションの頻度が低下する事を防いだのです。

ちなみにコミュニケーションを重ねていくと、部下から相談が来るようになります。それを全力でサポートしましょう。そうする事で信頼されてきます。信頼されるとまた相談されます。その相談に答えることで信頼が増える無限ループに突入します。

コミュニケーションについてはこちらでも話しています。興味があれば読んでみて下さい。

また信頼についてはこちらで話しています。

ちなみに、この時の要望が無理なら無理と言いましょう。改善が無理なのに下手に請け負うと不満に繋がるので注意です。

最近、部下と話しましたか?

上の質問にNoが返ってきた人は試しにやってみてはどうでしょうか?

まとめ

理想の上司になるために

部下から理想の上司と思われる。これ自体は良い事のように聞こえます。ただ上司の最終目的はチームの生産性を上げる事です。部下から気に入られたいが為にチームとしての生産性や結果を蔑ろにするのは間違っています。

「部下からの信頼されて、チームとしての生産性も上がる。」

これが正しいあり方だと思っています。そのためには部下の成長を優先的に考えられる事がリーダーや役職者として必要になってきます。そのためには嫌われたり孤独になる事もあるのです。それが嫌なら上司という立場から降りましょう。それが双方のためです。どんなに嫌われても相手やチームのためになると思えば、厳しいフィードバックもしてチームの結果を出す事を優先する。

皆さんもそんなマネジメントスキルを磨いて会社からも部下からも理想の上司になってもらえればと思います。