成長する部下と成長しない部下
部下の成長
- なかなか部下が成長してくれない
- いつまでたっても指示待ちだ
- 指示した事と違う事をやり出す
- 入社時に想定していたほどではなかった
- 見込みがあると思って、ビシバシ鍛えたら退職届を持ってきた
今の中間管理職の悩みの1つに部下の育成があります。部下が成長しない(出来ない)理由はなんでしょうか?指示したのに自分流にアレンジを加えてしまう理由はなんでしょうか?部下がモチベーションが保てない理由はなんでしょうか?すぐ辞めてしまう理由はなんでしょうか?
一方で会社が期待する通りに育成して十分に戦力として育成しているチームや部署もあります。退職者がほとんどいない部署もあります。
これらの差はなんでしょうか?入職者のレベルの問題でしょうか?それも多少はあるかもしれません。それもゼロとは言いませんが、基本的には教える側に問題がある事が多いのです。
理想の部下
あなたが思い描く理想の部下はどんな人物でしょうか?
- 入社半年で十分な戦力になってきている
- 教えた事を吸収する能力が高く、知識やスキルを習得するのが早い
- 成長意欲が高い
- コミュニケーション能力やリーダーシップもある
- ライバル他者の同年代と比較しても市場価値は断然高い
こんな部下達がいたら最高ですよね。理想論のようにも見えますが、実際にこのような育成が出来ている企業もあったりします。ただそういった企業は大企業である事が多く、資源も環境も人材も整っている事が多いです。じゃあ中小零細では無理なのでしょうか?いえ、中小零細でもポイントさえ押さえておけば、十分に育成する事も可能です。
ちなみに部下がイメージする理想の上司はこちらです。参考までに読んでみて下さい。
部下が成長しない事での問題点
どんな事が問題点として出てくるのか?
部下が想定通りに成長しないとどうなるか。それはグループや会社の成長に関係してきます。
まず会社としての達成目標があります。この目標を達成するためには個々の生産性を上げる事が必要になる事が多いのですが、生産性を上げるには個々の能力を上げる必要があります。能力が向上して出来る範囲が増える事で、生産性が上がり、新しい業務に着手する余裕が生まれます。そして新しい業務に着手する事で会社が成長していくのです。つまり若手が成長して、会社も成長していくのです。
また若手が成長してこないと新しいサービスも生まれません。今の市場ではどんなサービスが必要とされているのか、どんなマーケットがあるのか、どんな事にお金を使うのか、それは購買意欲が高く普段から市場に接している若者の方が敏感なのです。
- 会社やチームが成長できない
- 新しい変化をキャッチできない
このような問題点が起きてきます。やはり下からの突き上げがある組織やチームの方が活気があって成長している印象がありますね。
成長させなきゃという呪い
とはいっても実際どうやればいいのかが分からない人も多いと思います。
実は私もつい数年前までどうすればいいかと悩んでいました。当時は相次ぐ退職で人手不足だったこともあり、在籍してもらう事を第1に考えていた時です。幸いな事に仕事は十分にありました。ただそれをこなす人が不足していたのです。退職されては現場が回らなくなるので、言うべき所でも言う事が出来なかった時代です。今思い返すと、退職とフィードバックは関係無いと分かるのですが、退職者が続いていた事もあり部下にビビっていたのかもしれません。
その結果どうなったか?確かに退職者は減りましたが、極端に成長する部下と全然成長していない部下の2極化が起こりました。取りあえず業務は回るようになりましたが、同期の間で大きな差が生まれ、あまり良い状態とは言えませんでした。この時に分かった事ですが、成長する人というのは、どこの場所でも成長します。つまり勝手に成長していて、私が何かをしたという訳ではなかったのです。
中小における育成のセンターピン
ここで言いたいのは、なにも90点の人材を100点にする必要はないという事です。そもそも90点の人材は抽象零細には入社してきません。
我々がやるのは50点の人を70~80点にする事です。中には40点の人が入社してくるかもしれません。これも普通に考えたらハズレと思うかもしれませんが、一方で見方を変えると大きな伸びしろがあるとも言えないでしょうか?塾講師や家庭教師の経験がある人なら分かると思いますが、元々の点数が低い所から中の上にする事の方が実は簡単なのです。むしろ80点を95点にする事の方が至難の業なのです。
ちなみに70点が複数人いればチームとしての成果は十分に出せます。むしろ高パフォーマンスにさえなります。まずはここを目指すべきなのです。
部下が成長しない(できない)原因
原因は1つではない
ではなぜ想定通りに部下が成長してくれないのでしょうか。これにはいくつが原因があります。
- 育成する仕組みが整っていない
- 育成する側の能力不足
- 育成される側の能力不足
大体この3つのうちのどれかだと思います。この中で1番重要なのが仕組みです。特に中小企業での育成は現場に任せっきりという事も多いでしょう。なのでその育成者の能力次第で、若手の上限が決まってしまう事もあり得ます。また育成する側も、専門の研修などを受けていない事も多く、たいていは我流で育成しています。また入社してくる若手の能力は皆同じではないので育成結果にもバラツキが生じます。当然評価も違ってくるので、不公平感が出てくるかもしれません。これらの問題を仕組み化する事で全員を一定レベルまで引き上げるような事が可能になるのです。
ちなみに最後の育成される側の能力不足ですが、これは採用面接の段階で見極めるしかありません。育成にはコミュニケーションが必要なので、こちらの質問に対して質問の意味を理解して回答しているかどうかなどを確認すると良いでしょう。ただ基本的にコミュニケーションがダメな人は面接で落とされる事が多いので、どちらかというと育成する側の問題の方が大きいです。
部下の成長方法
部下が成長するとういう事はどういうことか?
部下の成長とは何でしょうか?なにを変える必要があるのでしょうか?これは大きく2つあります。
- 知識やスキルの向上(生産性が上がる事)
- マインドセットの変化
順に見ていきましょう。
知識やスキル(生産性)の向上
新人や若手において知識やスキルが向上する事とは、まずは仕事をする上で基本的な事をマスターして、今現在の自分キャパシティをどんどん広げる事になります。言い替えると、自分の生産性を上げる事とも言えますね。
仕事に必要な知識やスキルを習得し、更にリーダーシップやチームマネジメント、課題発見能力などの普遍的な能力を習得していく。
これは比較的イメージしやすいのではないでしょうか?
知識やスキルの取得方法
では習得するにあたって注意すべき事はなんでしょうか?それは、
「行動する事」です。最初から出来る人はいませんし、皆、失敗をして覚えていきます。そのためには、まず行動する必要があります。ここが無いとその先には進めません。自転車も何回も転んで乗れるようになります。乗り方を言葉で教わっても実際に乗れるようにはならないのです。
どんな小さな事でもかまいません。目標を立てて実行してもらいましょう。成功する事も失敗する事も出てくると思いますが、上手くいかなかった時は2人で改善策を一緒に考えて、再度実行してもらいましょう。
成功体験がカギ
そうやってチャレンジしていくと、いずれ成功体験を感じられる日が来ます。この成功体験が重要なんです。計画して実行する事で結果が出る。成功すれば当然嬉しい。ドーパミンが出る。次もチャレンジしようとなる。また実行する。この繰り返しが最短でスキルアップする方法なんです。なので小さな事でも目標達成したら、まずは認めてあげて下さい。実際にどんな事をやって達成したかを興味を持ってヒアリングしてみるのも良いですね。
これらのポイントとしては、何かしら実行させる仕組み(やらざるを得ない環境)を作ってしまう事です。そして同時に定期的に上司/先輩とフォロー、フィードバックを得られるような機会も作ってしまいましょう。これで実行、結果、承認、フィードバックの一連の流れが出来ます。また他人を巻き込む事で約束という縛りが生まれ、実行する確率がアップします。
こちらにも他人を巻き込む事のメリットを書いてあります。参考までに読んでみて下さい。
今現在の部下レベル
ではもう少し具体的な内容を話していきましょう。
知識やスキルアップに必要なのが課題設定です。課題設定で大切なのが、部下自身のレベルを把握しているかどうかです。相手のレベルが分かれば、どのレベルの課題がコンフォートゾーンなのか、ラーニングゾーンなのか、パニックゾーンなのかが分かります。ここの見極めが出来ていないと、間違った課題設定になり結果が伴いません。これは課題の進捗状況や普段の仕事状況から判断しましょう。
コンフォートゾーン
コンフォートゾーンとは、すでにやり方をマスターしている状態です。通常行う分には特別プレッシャーを感じずに実施出来る仕事レベルのことを言います。
なお、このコンフォートゾーンの業務ばかりだと部下は飽きてきます。またこの状態のままある程度経過すると、自分は出来る人間だと勘違いしたりするようになります。しかしまだ本当の実力が伴っていない事も多いので、少し難しい業務にあたると途端に結果が出ません。人は基本的に楽な方にいこうとする習性があるので、部下がこの状態になっていないかを上司が定期的にチェックする事が必要です。
ラーニングゾーン
ラーニングゾーンは適度にプレッシャーがかかっている状態の事で1番望ましい所です。これは頑張れば達成可能なレベルで、キツすぎず、ユルすぎずですが理想です。この案配が難しいので、ラーニングゾーンの見極め方は日頃からのコミュニケーションが必要です。どんな業務を担当しているのか、達成度はどれくらいなのか、負荷度合いはどれくらいなのかを把握していないと必ずミスマッチが起きてきます。
パニックゾーン
最後にパニックゾーンですが、これは自分が達成するイメージが到底沸かない業務の事を言います。分かりやすくいうと無茶振りです。かなり負荷が高い状態なので、この状態が続くと相手の心身が病んできます。これは避けるべき状態です。
一方でベンチャー企業のような、入社する方も分かっててお互い納得の上であれば問題ありません。世の中には逆境が好きな人もいます。その人は進んで自分を追い込む事があります。実際、他人からみるとパニックゾーンにいるように見えても、むしろそれは本人にとってはラーニングゾーンだったりする事もあるのです。結果が出るかは別として、ラーニングゾーンとパニックゾーンの境目は自部次第な所もあるのです。
マインドセットの方法
次にマインドセットについてです。これは仕事に対する考え方とも言えます。ここで質問です。仕事とは何なのでしょうか?
それは「相手の悩み解決する事」だと考えています。人は何かしら問題を抱えています。お金であったり健康であったり、物欲だったり。これらを商品やサービスを購入して解決しています。
相手の悩みを解決した(するだろうと想定した)結果として、対価や報酬が支払われるのです。つまり商品やサービスは問題解決の方法なのです。
これが分かると相手目線で考える必要があるという事に気がつきます。これが重要で、いくら知識やスキルが優れていても、顧客の要望とマッチしていないとただの自己満足で終わります。ここにギャップがあると、よかれと思ってやった事が余計なお世話だったなんて事が起こりえるのです。
いきなりこれは難しい事も多いので、まずは入社したばかりの若手には「自分がしてもらって嬉しい事をお客さんにもする」というイメージでやってもらうと良いでしょう。そうすれば段々と相手の悩みや希望が分かるようになってきます。相手の悩みを解決するという事は、売り上げに貢献するという事にもなり、会社の利益に繋がるという事になってきます。
メタ認知の必要性
参考までにメタ認知というのがあります。これは自分を客観的にみる事を言うのですが、人は他人の事を客観視する事は得意ですが、自分の事を客観視する事はなかなか出来ません。どうしてもバイアスがかかってしまうからです。
私がいる医療業界で働いていると、癌などの大病を患った時に「まさか自分がなるなんて思ってもなかった」という言葉を聞く事がよくあります。癌について統計上では一生のうち、男性の半数が、女性の1/3が罹患するというデータがあります。他人が癌になった場合は、「一生のうち半数近くが癌にかかる時代だからねぇ」と言ったりします。でもいざ自分が罹患すると最初のような言葉が出てくるのです。
これはバイアスによって、自分は罹患しない方(都合の良いように)になると思ってしまっている状態です。ここに科学的根拠はありません。このように自分を客観的に見るというのは難しい事です。部下には是非、思い込みではなく事実で自分を見直してもらいましょう。
なにかサービスを提供したけど、思ったほどの反応じゃなかった。ここで相手が悪いと考えるのか、自分の考えが悪かったのか。これは上記のマインドセットにも役に立ちます。現時点で自分は何が出来て、何が出来ていないのかを事実ベースで振り返る。事実ベースでみれば、出来る事、出来ていない事が分かります。そしてそれは上役とも共有できます。
定期面談のすすめ
個人的に部下の目標設定や進捗確認、マインドセット、コミュニケーションを取る方法としておすすめなのが、定期的な面談です。1回あたりの時間は30分程度で大丈夫です。これを定期的、少なくとも月に1回は実施しましょう。面談を行う事で上記のほとんどを確認する事が出来ます。
ここで継続実施するためのポイントを1つ。それはスケジュールを予め組んでしまいまそしょう。できれば年初に定期スケジュールとして組んでしまうと良いです。都度で調整すると面倒になり、いずれやらなくなります。
また面談を実施する側もノープランで挑むと受ける部下も「何の為にやっているんだろう?」となってしまうので、ちゃんと事前準備をしてから臨んで下さい。少なくとも話す内容や聞きたい事などを一度シミュレーションしておく良いでしょう。最初から上手くいく人はいません。上司の貴方自身も実行して結果を出す(出させる)必要があります。
特に始めたての時は正直に「初めての試みで上手くいくかどうかは分からないが、一緒に目標に対してやって行きたい」と言ってみるのも良いと思います。一緒に実績を作っていきましょう。
まとめ
育成とは
育成はやりがいのある業務です。部下が良いことも悪い事も報告してくるようになれば良い流れになった証です。十分にコミュニケーションが取れていると言って良いでしょう。
- 定期面談等でコミュニケーションを取り、部下の現状を把握する
- ラーニングゾーンの課題を設定する
- 結果に対してのフィードバックやフォローの実施
- 顧客志向のマインドセット(メタ認知)
これらを実施してみて下さい。大丈夫です。フォローすればちゃんと部下は付いてきます。実現可能な少しストレッチした目標を立てて、成功体験を積めるようにサポートしてあげて下さいね。
部下が成長すれば会社も成長します。上司は自分を超える部下を何人育成出来るかが重要です。
大丈夫です。それであなたの評価が下がるという事はありません。むしろ育成能力が高いと高評価になります。
部下が自分を超えていく感覚は寂しい反面、嬉しくもあります。
是非、その感覚を味わってみて下さい!