採用について

新卒の能力はバラバラ

リクルートの難しさ

  • 採用した人材がすぐに退職してしまう
  • 面接時に感じたほどの能力の高さじゃなかった
  • 能力的には問題ないが、価値観が固定してしまっている
  • そもそも応募数がゼロに近い

一言で採用(リクルート)と言っても簡単ではありません。1人採用するのにも多額のコストが掛かる事も多いのではないでしょうか?そしてやっとの思いで良い人材を採用しても、すぐに退職してしまう事もしばしばです。

3人に1人

「31.2%」

これは何の数字だか分かりますか?これは令和2年の大卒入社した人が3年以内に辞めた割合です。高卒になると36.9%にまでなります。この数字は事業所規模が少なくなればなるほど大きくなる傾向があります。

事業所規模別の3年以内の離職率
厚生労働省 令和2年度における新規学卒就職者の離職状況

また1,000人以上の企業でも約25%、つまり4人に1人が3年以内に退職しているというデータにも注目です。大手でもこれだけの%で退職しているのです。

中にはベンチャー企業に就職し、スキルアップのために転職しているパターンもあるでしょう。しかしそれは一部の企業だけで、大多数はせっかく入社してもある程度は退職してしまっている現状があるのです。

リクルートにもマーケティングを

大企業では倍率が何倍にもなる一方で、地方の中小零細企業では希望の人数に満たない事もあります。大企業のようにネームバリューがある訳では無い、好待遇も難しい。そんな中で求人媒体を使ってもなかなか集まらない・・・

ではここで質問です。商品を売る時のように学生に自社を知ってもらうようなマーケティング活動をしていますか?

中小零細企業の多くの企業では対学生に対してマーケティング活動を行っていません。そのためせっかく求人に応募が来ても、イメージ通りの能力を持った学生が来るとは限りません。しかし逆に言うとマーケティング活動を行う事で希望に近いリクルートが出来るかもしれないのです。

求人サイトに載せて終わりではネームバリューがある大企業にはどうやっても勝てません。その中で自社に必要な人材を採用していかなければなりません。どうでしょうか?どうせリクルートするならやってみてもいいのではないでしょうか?

理想のリクルート

理想のリクルートはどんなものでしょうか?高学歴の優秀な人材が多く応募してくる?採用予定人数の10倍の人数が申し込んでくる?

理想のリクルートは企業側が望む能力を持った学生(人材)が、採用人数だけ応募してくる事です。

これであれば採用にかかるコストも必要最小限で済みます。HP経由であれば紹介会社や就職サイトに手数料を払わなくても良くなるかもしれません。1名採用するのに費用がどれくらいかかったかを実際に計算してみると、実は結構な金額を使っている事が分かったりします。多いと、これだけで年間100万前後のリクルート費用が削減出来たりするのです。

もちろんリクルートは会社の将来のために必要経費をかけてでも重点的にやるポイントです。しかし払わなくていいコストまで払う必要は無いのです。

リクルートにおける問題点

企業と学生(求職者)のミスマッチ

まず今のリクルートの問題点を見てみましょう。それは取りあえずは応募出来てしまう事です。

ある上場企業が10名の採用を考えていたとします。実際に求人を出しましたが、多いと3桁の応募があるかもしれません。

問題なのは、この中に少なからず「取りあえず応募してみた」というパターンが含まれる事です。私も採用する側なので分かりますが、企業は自社の価値観に合った人や将来性がある人を採用したいと考えています。

重要なのは価値観

極端なことを言うと、最低限の能力さえあれば仕事のスキルは入社後にいくらでも教え込めます。重要なのは価値観です。

この価値観で将来の成長スピードもある程度測る事が出来ます。ただ価値観は中々変わりません。20年程その価値観で生きてきているので、数ヶ月で変えるのは無理なのです。

なのでこの価値観を確かめる為に面接をするのですが、時間的に1人1人面接する訳にもいかないので、書類選考という名の篩い落としが必要になります。ここで多くの学生が落とされます。そしてこの学生達の中には地方の中小には目もくれない人達もいるのです。

地方の中小零細企業の現実

一方で地方の小さな中小企業の場合だと必要な人数に達しない事もしばしばあります。しかしその中小企業の中には上場企業と同じくらいの待遇や福利厚生だったり、業務内容が多岐に渡り自己成長が見込める会社もあったりもします。でも実際には就職先を選ぶのに所在地や知名度で選んでしまっているパターンも多く、仕事内容で選んでいるケースはほんの一握りなのです。

つまり自分に合う(だろう)会社の求人に学生が見向きもせず、知名度等で選んでしまう。なので一部の有名企業に応募が殺到する。このように求職者と採用側のミスマッチが起きているのが問題なのです。

極論を言うと会社なんて入ってみないと分からない事の方が多いんです。

リクルートしても成果が出ない原因

今の若者の時代背景

基本的に応募が来ない原因には次のような事があります。

  • 大企業指向(一部の企業に集中してしまう)
  • 安定性指向(大企業指向とほぼ同じ意味)
  • 待遇面の違い
  • 親への面目

見て分かるように、これらは仕事内容でが選択のポイントになっている訳ではありません。この背景にあるのは、失敗したくないという考えがあるように思うのです。

デフレの中で育ってきた世代

今の若い人達はバブル崩壊後のデフレの中で生きてきました。物質的には豊かではありますが、大きな経済成長を経験していません。またリーマンショックのような経済危機もあり、自分の親世代が苦労しているので、自分も同じ轍を踏まないようにしようとする傾向があるように思えます。なので安定性を第1に考える人が多いのです。

また、考えてみれば、まだ本格的に働いた経験が事がない学生に仕事内容で決めろというのも無理があるのかもしれません。なので大企業だから、安定しているから、〇〇に勤めていると言いたいからなど、どちらかというと対外的なものが多くなってしまうのも仕方が無いのかもしれません。

一方で地方にも目を向ければ自分に合った職種や仕事内容があるかもしれないのにです。

このように今の若者が育ってきた時代背景が大企業集中の原因の1つにあります。ただ、この傾向は今には始まった訳ではなく20年以上前からもありました。

マーケティング

またもう1つの大きな原因として企業側のマーケティング不足もあります。マーケティングとはwikipediaによると次のように記載されています。

「顧客・クライアント・パートナー・社会にとって価値あるものを、創り伝え届け交換するための、様々な活動・プロセス・組織」

つまり価値を創って届けてナンボという事です。届けなければ存在しないのと同じ意味になります。今現在、求職者にどんなアプローチをしていますか?

求人サイトに登録して終わりではないでしょうか?求人サイトでも目立つようなコピーを考えたりしてますか?またターゲット層を決めていますか?SNSやリスティングを使って、若い層に届くような施策は打っていますか?ホームページを見れば仕事内容やキャリアプランが分かるようなページがありますか?

このように、学生や求職者に届けるためにまずは自社の価値を言語化する事が必要になりますが、大企業と同じ土俵で闘っても負けるので、違った土俵で闘う必要があるのです。

リクルートのために自社の強みを言語化する

優秀な人とは

採用において優秀な人が欲しいという言葉を良く聞きます。しかし、この優秀という言葉がくせ者です。優秀の定義はなんでしょうか?

高学歴?頭が良い(IQが高い)?ロジカル指向?実行力がある?

一般的にはこれらの能力を持った人を思い浮かべるでしょう。これが自社で必要としている人材とマッチしていれば問題ありません。しかし実は現場で必要とされている人材とは全く違っていたりする事も多く見られます。

自社の欲しい人材は明確か?

このミスマッチを解消させるには、自社が必要としている人物像の言語化が必要です。誰が見ても具体的にイメージできるくらいまで言語化して下さい。

どんなポジションや能力を持った人を探しているのか、男性がいいのか、もしくは女性が必要なのか、年齢は?学歴は?必要な資格は?経験の有無は?

ここが不十分だと後々のミスマッチに繋がります。ある程度の幅を持たせる事は重要ですが、幅を持たせすぎて目的が不明瞭になっては意味がありません。

そして同時に組織が求職者に対して提供出来る環境や、待遇も明文化しておきます。組織として求職者に何が提供出来るのか、どんな仕事内容を担当してもらいたいのか、待遇はどれくらいなのかを提示し、納得した上で入社してもらう形にしましょう。待遇面などオブラートにしてもいずれは分かってしまう事で、無理に隠すと余計「聞いていた話と違う!」という事にもなります。

よく給与を当社規定によるとありますが、あれは知名度がある企業で有効なだけであって、中小はあまり得策では無い様な気が個人的にはします。どうせ面接や入社すればどれくらいの待遇かはバレる事なので。

自社の色は分かっているか?

組織には特徴があります。この特徴を組織の色と呼んでいますが、この色で採用する人が変わってきます。多くの施設で向上心がありリーダーシップがある人材が欲しいという会社は多いですが、そういった環境を提供できるのでしょうか?ストレスフリーの組織と言っていても、実際はストレスMAXではないでしょうか?フレンドリーな組織と言っておきながら、実はボス的な人がいないでしょうか?

このように求職者が求めている環境と実際の環境がズレている事は良くあります。ポジションや自分の会社やチームは求職者が希望するような環境を提供する事が出来るかどうか今一度確認してみましょう。

自社の色が分かった上で相手とのマッチングに入る

こうして自社の求める人物像を明確にし休職者が来たら、実際の採用面接に入っていきます。面接ではその人がどんな人なのかを確認する事が重要です。価値観やストレス耐性、自責or他責などはすぐには変えられないものなので、必ずチェックした方がいいでしょう。

以下は一例ですが、このような質問を使い求人者の人物像を確認しながらその人の雰囲気を含め判断していくと良いです。

【ストレス耐性】

  • 意図:トラブル時の心理状態の傾向をつかむ
  • 質問:「大失敗をした時に、どれくらいでメンタルが回復しますか?」

【論理的か感情的か】

  • 意図:物事を判断する時の傾向をつかむ
  • 質問:「筋の通った主張、気持ちが込められた主張、どちらに心を動かされますか?」

【変化か安定か】

  • 意図:変化と安定、どちらを重要視しているかどうか
  • 質問:「変化が多くスピーディーな環境、変化が少なく落ち着いた環境、どちらを好みますか?」

【他責か自責か】

  • 意図:トラブル時の対人スキルを予測する
  • 質問:「チームメンバーや患者とトラブルが起きた時、相手にどのように接しますか?」

【共感力の有無】

  • 意図:共感能力があるかどうか
  • 質問:「友達グループで話している時に、自分が喋っている割合はどれくらいですか?」

【納期に対する責任感】

  • 意図:自主性と計画性があるかどうか
  • 夏休みの宿題を終わらせるのはどのタイプだったか?(早め、ギリギリ、やってないのか一部 他)

【向上心の有無】

  • 意図:向上心の確認
  • 当院には育成プランとして「ゆっくり着実コース」か「詰め込み型なる早コース」があります。どちらが自分に合っていると思いますか?

【継続性の有無】

  • 意図:忍耐強さ
  • 過去一番長く続いた事は何ですか?またそれはどれくらいの期間ですか?

これらの質問はあくまで一例です。知りたい内容に対してどのような質問をすれば分かるかを自分の施設に当てはまるように必要に応じて改変して作成してみて下さい。

ジョブ・ディスクリプション

また欧米ではジョブディスクリプションと言うのがあります。これは担当する業務についての職務内容を詳しく記載した文書のことで、この内容を元に採用をしたりします。つまりやってもらいたい仕事が明確なのです。

日本企業でも中途採用に対しては、求める能力が決まっている場合もあります。ただこれも大企業の場合が多く、中小零細で細かく設定している所はそれほど多くないように見えます。このようなものを作ってみるのも、求職者からするとイメージしやすいと思います。

まとめ

採用を効率良く実施するには

一番効率が良い採用方法は、希望に合致する人が採用予定人数分だけ応募してくれる事です。そうすれば選考の手間も必要ありません。しかし現実問題はそうはいきません。限りあるリソースを使って効率よく採用を行うためにも次の事を明確にしておきましょう。

  • 自社の色を確認し言語化しておく
  • 必要としている能力と任せたい事業内容を明確にする(能力先行ではなく、仕事に合わせて採用するため)
  • 考えられる媒体を使って求職者にアピールする(求人サイトはもちろん、SNSも含めて)
  • 待遇や社内人間関係(組織の色)を正直に伝える
  • その上で価値観や性格などが自社の色にマッチするかどうかを面接で確認する。(特に組織やチームの方向性と価値観がマッチしていないと早期離職やトラブルメーカーになる)

基本的には、包み隠さず全て話した上で来てくれるかどうかを確認しましょう。なんだかんだ言ってもこれが超重要だったりします。もちろん自社の環境整備は事前に着手しておきます。バケツの底に穴が空いている状態で水を入れてもダダ漏れするだけになります。

このように自社の色や条件をはっきりと言語化、明文化し、ホームページの採用ページに載せておきましょう。応募が無いという事は何かしら原因があります。その原因を見つけて改善していきましょう。

そして求人者の目に触れるようにしましょう。求人者の目に触れなければ存在していないとと一緒です。ここまでやった上で入職してくれれば、定着率は格段にあがってくるはずです。

職員が定着すると何が変わるか

これからは余談なのですが、人材が定着する事で変わった事を記載していこうかと思います。

まず採用コストが劇的に少なくなります。今までは採用コストをかけては退職される事の繰り返しの連続でしたが、これが少なくなった事で浮いた資金を教育や研修に使えるようになりました。研修に費用を使う事で職員のレベルも底上げされるのではないかと期待しています。

また採用にかけていた時間を使って新たな分野にもチャレンジする事が増えてきました。今までは現場と採用で手がいっぱいだったために、どうしても新規事業は後回しになってしまっていました。(本来はダメなんですけどね)まだ芽は出ていませんが、種まきは出来るようになったのかなとも思っています。

しかし一番のメリットは人繰りの心配から解放されるという事ではないでしょうか?仕事はある。キャッシュフローも悪く無い。でも労働力が足りない。求人をかけても応募が来ない。今の人達に無理して頑張ってもらう。耐えきれずに退職する。私の施設も以前はこのような流れでした。でも少しずつ変えてく事で、求人数や定着率が変わってきています。

是非、採用で悩んでいる人がいたら上記のような事をやってみてはいかがでしょうか?