もくじ
【概要】
- 著者:安斎 勇樹
- 発売日:2021年12月23日
- ページ数:250ページ
本の目次
- はじめに チームは問いかけから作られる
- PART1 基礎編
- 第1章 チームの問題はなぜ起きるのか
- 第2章 問いかけのメカニズムとルール
- PART2 実践編
- 第3章 問いかけの作法① 見立てる
- 第4章 問いかけの作法② 組み立てる
- 第5章 問いかけの作法③ 投げかける
- おわりに 問いかけをチームに浸透させる手引き
【結論(1番の訴求ポイント)】
問いかけ=価値観の内省
人は自分の事は知っているようで意外と知らないものである。本書では問いかけによって、相手に価値観を内省する事を目的としたものだと理解している。価値観は自分の中の常識とも言える事が出来るが、かのアインシュタインはこう言っている。
「常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクションでしかない」
つまり価値観は偏見の塊なのである。そして人々はその偏見に気が付かずに判断したりしている。時には自分の価値観を絶対視し、相手を攻撃する事もある。これらはチーム作りにおいて大きな弊害になる事が多い。本書は問いかけによって、相手の価値観を探っていき、それを疑い問いただす方法が記載されている。
【ポイント】
「こだわり」と「とらわれ」をあぶり出す
ボトムアップ型への組織へ
著者は本書の中で、これからはトップダウン型の組織からボトムアップ型への組織へ変わる必要があると伝えている。この理由は、変化が大きいこの時代に顧客を一番知っているのは現場であり、その現場からの意見が最も答えに近いからだと思われる。
このボトムアップ型は中間管理職の役割が非常に重要になる。管理からファシリテートに変わるからだ。このファシリテートは現場からの意見の方向を正す役目もあり非常に重要な能力になる。
また、ボトムアップ型になることで現場から意見が出るようになる。しかしその意見は的を得ているものもあれば、個人の利益を優先してしまっているのもある。例えば、人手が足らないから増員して欲しいというものだ。これは増員する事で顧客満足が向上し、リピート率が上がるなどの理由からなら問題ない。しかし自分の業務を楽にしたいからという理由では本筋から外れてしまっている。
「こだわり」と「とらわれ」
本書では現場のチームのポテンシャルを発揮させるための指針として、チームにおける「こだわり」を見つけて育てる事、「とらわれ」を見つけて疑い、問いただす事が必要だとしている。
チームにおけるこだわりは、個々のこだわりから生まれる。これは〇〇がしたいという衝動が後ろにある事が条件だ。この衝動からくるこだわりの集まりがチームとしてのこだわりになる。そして、それは会社の方針に合っている事が条件になる。
一方で、とらわれは、それに固執した状態になる。~がしたい!という形ではなく、~しなければならない。というようなイメージだ。これが増長すると顧客が望むものではなく自分達の満足のために仕事をするようになる。テレビのリモコンのボタンの多さなど、その典型例だろう。
「こだわり」は「とらわれ」と紙一重だ。特に現代は、認識や関係性の固定化、衝動の枯渇、目的の形骸化があるとされている。著者はこれを現代病と言っているが、これらにより「こだわり」は容易に「とらわれ」になり得る。自分達が持っているのは、「こだわり」なのか「とらわれ」なのかを常に問い続ける必要がある。
フカボリモードとユサブリモード
フカボリモード
この「こだわり」と「とらわれ」に対する問いかけ方法として、フカボリモードとユサブリモードがあるとしている。フカボリモードは、根底にあるこだわりを見つける問いかけで、ユサブリモードは凝り固まったとらわれをあぶり出す問いかけだ。
フカボリモードは、チームのこだわりがハッキリしない時に使われる。具体的には、素人質問(あえて当たり前を確認する事)、ルーツ発掘(こだわりの源泉を聞く事)、真善美(根底にある哲学を探る事)などがある。根っこを探っていくようなイメージだ。言い替えると縦方向への深掘りと言えば分かりやすいか。これによりチームの「こだわり」を明確化するのである。
ユサブリモード
一方のユサブリモードは、とらわれが固定化しまった時に新しい視点を発見するために使われる方法である。具体的には、パラフレイズ(別の言葉や表現に言い換えを促す事)、仮定法(仮定の条件で視点を変えてみる事)、バイアス破壊(固定化したものに疑いをかける事)などがある。こちらは、横方向への深掘りといったイメージになるだろうか。
これら2つの問いかけを現在の状態に合わせて問いかける事で、チームとしての「こだわり」を明確化し、「とらわれ」を打破していく事が管理職には求められている。
「問いかけ」によって未知数に焦点を当てる
相手の未知数を引き出す
「問いかけとは、色んなコミュニケーションの場面において、相手に質問を投げかけ、反応を促進する事」とある。そしてその目的は、相手の未知数な面にどのようにライトを当てるかという事だ。この問いかけは場合によっては劇薬にもなり得る。質問の精度や目的次第で意味のある問いかけになるかどうかが決まり、仮に意味の無い問いかけだと部下からの評価が下がる事さえあり得るのだ。
意味のある問いかけ
ではどうしたら意味のある問いかけになるか?本書では、「見立てる」、「組み立てる」、「投げかける」の3つのサイクルが必要だと言っている。
見立てるには、場の目的と将来の光景、現在の3つの視点が必要で、理想と現実のギャップを判断するという事になる。
組み立てるには質問(問いかけ)が必要になる。これはフカボリモードやユサブリモードを駆使する。時には複数の質問を組み合わせる事もある。
投げかけるには、比喩などを使い注意を引きつける事が必要になる。
この3つを繰り返す事で、部下とのコミュニケーションの質が上がり、新たな一面を発見出来るようになるかもしれない。
【まとめと個人的感想】
問いかけには基本的な定石があると著者は述べている。
- 相手の個性を引き出し、こだわりを尊重する
- 適度に制約をかけ、考えるキッカケを作る
- 遊び心をくすぐり、答えやすいようになる仕掛け
- 凝り固まった発送をほぐし、意外な発見をする
この4つだ。問いかけた質問に対して、相手の感情が刺激されたら、上手くいっていると思っていいだろう。悪い問いかけは、相手への無関心から生まれ、良い問いかけは相手への興味や好奇心から生まれる。
本書では他にも具体的な内容を記載してあり、どのように実践すればいいのかが分かるようになっている。をチームマネジメントの立場にある人は一読してみるのをお勧めする。