もくじ
【概要】
- 著者:ちきりん
- 発売日:2015年2月20日
- ページ数:280ページ
本の目次
序 もうひとつの能力1 市場と価値をマーケット感覚
2 市場化する社会
3 マーケット感覚で変わる世の中の見え方
4 すべては「価値」から始まる
5 マーケット感覚を鍛える5つの方法
終 変わらなければ替えられる
【結論(1番の訴求ポイント)】
価値のあるものはそこらじゅうにある、ただ気が付いていないだけ
ここに1万円がある。お金だ。普通なら誰もが欲しいと思うだろう。しかし物体としては長方形のただの紙切れにすぎない。しかし時に、この長方形の紙切れのために大きな犯罪が起きたりもする。人々はなぜこの長方形の紙切れを人々は欲しいと思うのだろうか。それはお金の価値を知っているからだ。
ではこの1万円を1歳児の前に置いてたらどうなるか?
すぐさまオモチャと化すだろう。クシャクシャにしたり、破ったり、口の中に入れたりする事が容易にイメージできる。大人からすると、なんと勿体ない事のように感じるかもしれないが、幼児からすると、これにはオモチャとしての興味はあってもお金としての興味は無い。なぜなら、お金という価値をまだ知らないからだ。
実はこれと同じような事が身の周りに多くおきていて、気が付いていない人が多いだけと本書は記載している。この能力を著者は「マーケット感覚」と呼んでいるが、今後はその価値に気が付ける能力があるかどうかの2極化が起きるだろうとも記載している。
どうやったらその価値に気が付けるようになるのか。興味がある人は一読をお勧めする。
【ポイント】
マーケット感覚は鍛えられる
まず「マーケット感覚」とはどういうものか?
本書では、「取引している価値は何かを見極める能力」としている。商品ではなく価値だ。そして高値で取引されているものの共通点として、需要に対して供給が少ない事がある。これは供給が少なければ少ない程、高値になる。つまり需要があり、かつ希少なものに高値が付くのである。
ここで1つ例を出そう。高給腕時計の代名詞でもあるロレックス。このロレックスの価値は何だろうか?
時間確認としての価値なら5,000円程度で売られているものと大差無い。ロレックスの多くは機械式と呼ばれるタイプで、手巻きなどによってパワーを溜めておく必要がある。これをサボると止まったりするし、構造も複雑なので使っているパーツも多く高価になる傾向もある。しかしクォーツ(電池)式なら誤差も少なくメンテナンスも楽だ。普通に考えると便利なものの方が高価になりそうだが、実際には逆だ。ものによっては100倍以上の価格差があったりする。これは提供しているのが、時間を確認するという価値だけでは無い事が分かる。
では何か?それは身に付ける事での満足感だ。ブランド力と言ってもいいだろう。ロレックス=高級腕時計という認識が世間にあり、一種のステータスになっている。また大量生産もしていない。だからこそ皆が欲しがるのだ。そしてこのブランド力と需要と供給の関係性を見つける能力がマーケット感覚なのである。そしてこれは誰でも後天的に鍛えられる能力であるとも本書は記載されている。
ではマーケット感覚を鍛える為にはどうすればいいか。本書にはいくつか方法が記載されているが、最も簡単にできそうな例は、フリマアプリで物を売ってみる事だろう。この物にはどんな価値を提供しているのか。それがいくらなら買い手がつくのか。これらが体験でき、そしてこの感覚がマーケット感覚に必要になってくると著者は言っている。
やってみると分かるが、自分が考えている程、高価で売れなかったり、逆に想定よりも高くソールドアウトしたりする。市場は正直だ。需要は何か、その適性な金額はいくらかを教えてくれる。この双方のギャップを確認する事が、マーケット感覚を鍛える事にもなる。
そしてマーケット感覚が鍛えられると、潜在的な価値にも気がつけるようになるのだ。
価値のない人間なんていない
一般的に高値で取引されるのは需要があって、かつ属人性が高いものだ。人のリソースには限りがあり、無限に相手できる訳ではないからだ。パーソナルトレーナーや個別コンサルが高値なのも、これが背景にある。まさに需要と供給の関係だ。では高給取りになれるのは特別な能力を持った人達だけなのか?
いや、そうではない。人間は誰もが人に提供出来る価値を持っている。気が付いていないだけだ。それを多くの人に届ける事で金額を稼ぐ事が可能だ。その価値に気が付く能力、つまりマーケット感覚が不足しているだけなのである。人は40年も生きていれば様々な経験をしている。全く同じ人生経験を歩んでいる人はいない。その中には少なくとも1つくらいは他人にとって価値があるものがあるはずだ。
例えばゲーム配信。今やYoutubeでジャンルの1つとして確立されているものだが、男性なら誰でも小さい時にゲームに熱中した事があるだろう。時には自分の部屋で、時には友達の部屋で集まってワイワイやっていたと思う。この時の楽しさは他に類を見ないものである。ただしこれは同じ空間に集まれる事が条件だった。そしてゲームばかりしていると親に怒られる事が多く、これは一般的に良くない事とされていた。
しかし、このゲームの楽しさに価値を見出した人がインターネットを使って、リアルだけではなく遠隔地の人でも一緒に楽しめるようにした。プラットフォームの発展もあり、結果として金額を稼げるようになったりしている。つまりゲームをプレイする事を仕事にしてしまったのである。ゲーム=良くない事という価値観を覆してしまったのだ。
しかし集まってゲームをする経験は多くの人がしている。楽しさも知っている。ただそれが価値に結びつけられる能力があるかどうかだけの差なのだ。
市場を選ぶ能力も重要
マーケット感覚で自分の価値に気が付いたら、それを高値で売るにはどうしたらいいかが必要になる。
ここで重要なのが売る場所だ。著者はそれを市場としている。一般的に市場とは価値が取引される場所の事をいうが、実はこの市場はいくつもある。そしてこの市場選びが重要なものでもある。本書では婚活男子の例をあげている。20代中盤でややイケメン。多趣味だけど稼ぎは多いほうじゃないというスペック。この男子が同年代の異性の出会いを求めてマッチングアプリに登録して、連戦連敗しているという内容だ。
- そもそも20代でマッチングアプリに登録している女性はどんな女性なのか
- その女性はどんなスペックの男子を求めているのか
この辺りを考えると、この男性はマッチングアプリじゃなくリアルな飲み会の方が良い事が分かってくる。
同年代の20代でマッチングアプリに登録しているのは、30歳手前で結婚を強く意識している人が多いと想像できる。なぜなら30歳が未だに結婚への1つのラインと認識されている事、20代前半~中盤は若さが武器になるのでそれなりにモテる事などがある。そのため20代で登録している人はルックスよりも経済力(と性格の相性)を重要視していると仮説を立てる事が出来るのだ。
どうだろう、こう考えてみると連戦連敗の原因が見えてきたのではないだろか。自分磨きも重要だが、その前に市場選びを間違うと全く意味のない事をやってしまう事にもなりかねないのである。これは本書の中に記載されているケースだが、読んでいて自分の中でよく分かっていない部分が強烈に明確化された感覚だったのを覚えている。
学校は市場から最も離れた場所
そして、この市場から最も遠い場所に位置しているのが学校だとも言っている。市場は基本的に自由競争で、そこには歴然と(残酷な)結果が出る。だからこそより高付加価値を目指して成長していく。しかし学校には競争が無い。教え方がヘタでも解雇される事は無い。競争が無いのでマーケット感覚が無くてもやっていけてしまうのだ。そのような人達に10年以上も教育を受けて、20歳そこそこで市場に出されるのは酷なのでは?という話しだ。今の教育は知識を教え込む事に重点を置いているので、構造上の問題でもあるのだが、学生が可哀想と言った点では、全く持って同意である。学校の教育が社会人になっても役に立たないと言われる根源はここにあるのでは無いかと思う。
学校では偏差値社会についていけなくても、マーケット感覚を鍛える事でいくらでも生きていける事を教えるべき場所に変わる必要があるのではとも思う。
【個人的補足】
変化は恐れるモノではなく楽しむモノ
本書には他にも、プライシングを始め独自の判断基準を持つ大切さ、市場から評価される方法を学ぶ事の重要さ、変化は恐れるものではなく楽しむものという考え、マーケット感覚を身につけるには自分の欲望に正直になる事などが記載されている。どれも今の人達に欠けている事ばかりのように思える。
恋愛でも仕事でも、自分の価値が中々相手に伝わらないと感じている人は読んでみると新しい発見があるのではないだろうか。
関連書籍
著者は他に3つの書籍がある。本書を含めて、これからに必要な能力について執筆したと言ってる。興味があれば他の書籍も一読してみると良いと思う。