もくじ
【概要】
- 著者:中原 淳
- 発売日:2017年2月17日
- ページ数:246ページ
本の目次
第1章 なぜ、あなたの部下は育ってくれないのか第2章 部下育成を支える基礎理論フィードバックの技術 基本編
第3章 フィードバックの技術 実践編
第4章 タイプ&シチュエーション別フィードバックQ&A
第5章 マネージャー自身も成長する!自己フードバック・トレーニング
【結論(1番の訴求ポイント)】
伝える事をきちんと伝えて、成長してもらう
「部下は勝手に成長する」
そう思っている人は要注意だ。高度経済成長期やバブル期は、今よりももっと人と人の繋がりが強かった。週休2日ではなかったし、残業も多かった。
また新規事業も次から次へと生まれていたので、上司が何もしなくても成長する下地が十分にあった。しかし今は違う。
基本的に仕事とプライベートを混ぜる人が少なくなった。景気も不安定だし、先行きも不透明だ。ゆえに意識的に成長させる仕組みを構築しないとダメな時代になった。
本書はそのような時代においてフィードバックの有用性を説いている。部下の成長にはフィードバックが必要であり、部下、ひいては組織の成長のためには上司はやらなきゃいけない事でもあるのだ。【ポイント】
フィードバックとは痛みを伴うもの
成長するには基本的に痛みが伴う。なぜなら成長するという事は新しい事が出来るようになる事であり、そこには失敗も付きまとうからだ。
人は失敗を嫌う。それは失敗する事で自分を否定されたような印象を受けてしまうからだ。そしてその失敗を他人から指摘されるのは更に嫌う。
しかし失敗には原因がある。その原因に自分で気がつけるならいいが、多くの人は気づけない。だから上司によるフィードバックが必要になる。
もちろんフィードバックには良い事も悪い事も含まれる。期待以上の結果であれば良いフィードバックになるし、失敗したら耳の痛いフィードバックにもなる。
人は自分の欠点を認識しないと成長出来ない。それ故に上司や役職者は気づかせる必要がある。つまり部下は勝手に成長するのではない。成長させるのだ。
著者は職場で人が育つために必要なものを次の2つとしている。
業務支援と内省/精神支援だ。これは前者をティーチング、後者をコーチングと言ったりもする。つまり人が育つには両方とも必要だという事だ。フィードバックにはこれら2つも含まれる事が多い。
フィードバックと評価はセット
もう少し掘り下げてみよう。
業務支援は今、不足している点を通達し、改善のサポートをする事である。これには知識やスキルを教える事などの他に、目標(課題)設定なども含まれる。
人は成功した時よりも失敗した時の方が成長すると言われている。
この時のポイントが、少し背伸びをすれば達成出来る目標であったかどうかだ。あまりにも高い目標だと最初からチャレンジしようとは思わない。ある本(漫画)にこのような例えがあった。
「バスケットゴールは適切な高さに設定されているから、皆入れようとする。あれが100m上に存在していたら誰も投げようとは思わない。」
非常に分かりやすい例えだと思う。
目標には、コンフォートゾーン、ストレッチゾーン、パニックゾーンの3つがある。
コンフォートゾーンは簡単に達成できるもの、ストレッチゾーンが達成出来る化出来ないかギリギリのもの、パニックゾーンが到底無理と思われるものだ。
この内、人が最も成長するのはストレッチゾーンの時だ。このストレッチゾーンの時は、成功したり失敗したりする。そこでフィードバックを入れるのだが、当然評価も連動させる必要がある。目標を達成したが、評価には反映されないのであれば、いずれやる気を無くしてしまうだろう。
つまりフィードバックと評価はセットにする事でより効果的になるのだ。
結果を出す、評価される、やる気が刺激されもっと上のストレッチゾーンに挑戦する、結果成長する。
いかにこのサイクルに入れるかが重要だ。これには相手をよく観察し、今のレベル感を見極める必要がある。これは上司の大切な仕事の1つでもある。
ここが見極められると、適切なタイミングで内省/精神支援も出来るようになる。
部下のハラスメントに対する意識
現代はハラスメントという言葉が多く存在している。この背景には今の若手はハラスメントに敏感になった事がある。
理由はメディアでハラスメントを取り上げるようになった事、SNSが登場し情報の格差が少なくなった事があるだろう。つまり今まではある意味密室の中の出来事だったのが、オープンになったという事だ。
セクハラなどは論外だが、同じ内容を話してもパワハラになる人とならない人がいる。この差は何だろうか?
普段、自分の部下へフィードバックをしている関係で、他の部署から相談される事がある。内容はフィードバックが上手く機能していないという内容が多い。
ここで重要な事を言う。フィードバックにおいては、「何を言う」のではなく「誰が言ったか」が大きい。ここには信頼関係や普段からのコミュニケーションの有無が隠れている。相談してくる人達によくヒアリングしてみると、普段はあまりコミュニケーションを取っておらず、いきなりフィードバックをしている事が多い。
フィードバックは時には耳の痛い事を言う事もある。普段、コミュニケーションを取っていない人から突然マイナスなフィードバックを受けても、「何も知らないくせに」となるのがオチである。
その対策として、普段からの定期的な面談を推奨している。1回あたりの時間は15~30程度で十分なので、定期的に実施し継続する事。課題に対して進捗確認と躓いている点の確認。これがコミュニケーションの場となり、相手との信頼関係を築くのである。
【まとめ】
多様性時代にこそフィードバックが必要
本書では他にSBI(situation、behavior、impactの頭文字)を意識して相手の情報を得る事や、多様性時代にどうマネージャーはフィードバックしていくかなどの基礎編や実践編が多く記載されている。
今後は日本人相手にすればいい時代ではない。円の力が弱くなってきている今現在、外貨を稼ぐ方法が必要になってくるだろう。当然、外国の人とも協力して、または外国をターゲットにしてサービスを提供する必要が出てくる。
外国の人が上司になるかもしれない。もしくは部下になるかもしれない。その時に、フィードバックについて知っておくと面食らわずに済む。
これらの事は欧米では当たり前なのだ。
上記で話したのは一部分だけなので、部下を育成する立場にある人は一読してみる事をお勧めする。
自分の指導法が、もっと良くなるかもしれない。