【臨床症状】80代 高血圧 1週間前から左下肢の動かしにくさ 言葉が出てこない
【問題】画像所見と診断名は?
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- 拡散強調画像で右中脳大脳動脈領域に脳梗塞が散在しているのが確認できる
- 特に放線冠レベルで比較的大きな梗塞巣を認める
- これらの病変は、拡散強調、ADC、FLAIRの信号地から急性期(亜急性期)と考えられ、発症時期と一致する
- Shower emboliの状態と考えられる
- MRAを確認してみると右MCAのM1で狭窄が疑われる
- 上記shower emboliの責任病巣と一致する(shower emboliとは、主血栓から分離した小さな血栓が同時多発的に血管に詰まり梗塞を起こしている状態)
- また両側内頚動脈C3レベルにて数ミリの動脈瘤が疑われる
【脳梗塞】
・脳梗塞は脳動脈の狭窄ないし閉塞によって脳血流が途絶し、その灌流領域の低灌流による脳組織の壊死を来し局所神経症状や意識障害を来す病態のこと
・臨床病型と発生機序による分類は次の通り
<心原性塞栓>
- 発生機序は塞栓性、原因は心房細動などによる左心耳血栓
<アテローム血栓>
- 血栓性:アテローム血栓性、原因は脂質異常、糖尿病などが原因
- 塞栓性:動脈原性塞栓、原因は頸動脈粥腫
- 血行力学性:表在境界領域梗塞、原因は主幹部狭窄
<穿通動脈梗塞>
- 穿通動脈梗塞:ラクナ梗塞、原因は高血圧など
- 血栓性:分枝粥腫型梗塞、原因は穿通動脈起始部の粥腫
- 塞栓性:微小塞栓性梗塞、原因は悪性腫瘍などによる凝固異常など
- 血行力学性:深部境界領域梗塞、原因は主幹部狭窄
・心原性ではその病態から側副血行路は形成されにくく、一方でアテローム血栓症は側副血行路が形成され代償性血流を供給していることが多い
・心原性では梗塞巣が区域性で皮質を含み、アテローム血栓では皮質がスペアされる傾向がある
・ラクナ梗塞では穿通動脈抹消に限局する
・また他の画像所見は、次のようなものがある
CT:梗塞巣が低吸収域、ASPECTS
【ASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)】
- 中大脳動脈領域の急性期脳梗塞のCTでの進展範囲判定基準
- 基底核と視床を含む断面と、それより2cm頭側で基底核や視床が見えなくなったレベルの2スライスを使い、中大脳動脈領域を10カ所に区分し、減点法によってスコア化するもの
- 減点基準は、灰白質/白質コントラストの低下
MRI:拡散強調画像での高信号、ADCでの低信号、FLAIR画像でのintraarterial signal(閉塞動脈が高信号で描出されること)、T2*やSWIでのsusceptibility sign(塞栓子の描出)、misery perfusion(還流静脈内のデオキシヘモグロビン濃度の上昇)、TOF-MRAによる狭窄など
・治療法は、血栓溶解療法(4.5時間以内の超急性期脳梗塞)、抗血小板療法(アテローム血栓、ラクナ梗塞)、抗凝固療法(心原性塞栓)がある
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版