【臨床症状】30代 頭痛
【問題】画像所見と診断名は?
※ T2WI、DWI、MRA-MIP、MRA元画の順に表示
▶答えはこちら
- T2WI、FLAIRにて出血などの異常所見を認めない
- 一方で、MRAにて左横静脈洞に髄膜に沿った形で血管の増殖を認める
- MRA上、流入血管の同定は難しいが、左後頭動脈あたりが疑われる
- 画像所見より硬膜動静脈瘻(dural AVF)疑いとなる
- その後、診断確定と治療のために他院紹介となる
【硬膜動静脈瘻】
・硬膜に発生する動静脈の短絡で、nidusは形成しないが多数の短絡が存在する
・流入動脈は各動脈の硬膜枝
・成人例のほとんどは後天的発生で、原因は外傷や静脈洞血栓症などがあるが特発性も多い
・静脈洞の狭窄や閉塞との合併が多いことから、静脈洞血栓症が器質化、再開通する過程で生理的動静脈短絡が開通していると考えられている
・中年女性に多い
・頭蓋底近傍の硬膜に多く発生する(横~S状静脈洞部が60%以上、海面静脈洞部が25%程度)
・短絡量の増加に伴い、静脈洞の順行性の血流が阻害されて皮質静脈への直接流出や逆流を来し、脳実質の静脈還流障害を来す
・静脈灌流パターンからサブタイプ(Borden分類)がある
- Type 1:静脈洞または髄質静脈への還流のみ
- Type2:静脈洞または髄質静脈への還流に加え、皮質静脈の逆流
- Type3:皮質静脈への逆流のみ
・横~S状静脈洞部に発生したのをdural AVF、海面静脈洞部に発生したのをCCF:carotid cavernous fistulaと呼ぶ
・海面静脈洞部では眼球突出や結膜の浮腫などの変化を認め、進行すると静脈性梗塞、出血、くも膜下出血などを起こす
・S状静脈洞からの横静脈洞の静脈血栓症では、後頭葉や側頭葉後半部、視床に梗塞や出血を認める事もある
・MRIの役割は、硬膜動静脈瘻の検出と、静脈内圧上昇に伴う合併症の診断
・動静脈瘻の検出はMRAが有効で左側に多い
・合併症には、静脈性浮腫、静脈性梗塞、静脈性出血などがある
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版