【臨床症状】40代 アルコール中毒、敗血症後、上腹部痛 WBC:14400 CRP:7.62
【問題】画像所見と診断名は?
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- 単純CTにて両腎の腫脹を認めるが明らかな占拠性病変は認めない
- 造影では動脈相から腎実質相にかけて両腎に濃染不良を認める
- 上記より腎盂腎炎よりは、腎盂腎炎(AFBN)が疑われる
- 他に特記すべき所見として、膵石、膵管拡張、膵嚢胞があり、慢性膵炎が疑われる
- 臨床症状(アルコール中毒)によるものとして矛盾しない
【急性腎盂腎炎】
・急性腎盂腎炎の診断は、通常、臨床症状と尿所見で行われる事が多い
・画像診断の役割は、急性腎盂腎炎の原因となる疾患の検索が多い
・原因は細菌感染による上行性感染で、膀胱尿道逆流、尿路結石やBPHなどの排尿障害、神経因性膀胱などに多い
・尿中の細菌は腎盂から髄質を介して腎実質へ波及していくため、炎症は腎小葉単位で生じ、炎症細胞の浸潤による浮腫性変化によって尿細管は閉塞する
・静脈閉塞に伴う出血が見られることもある
・臨床的には、尿路基礎疾患の有無で単純性と複雑性に分類される
・起炎菌は大腸菌が多いが、日和見感染の割合も増加してきている
・症状は悪寒、発熱、背部痛などで、CVA tenderness(肋骨脊柱角叩打痛)が特徴的
・画像所見は、腎腫大や周囲脂肪組織濃度上昇、早期相での造影効果不良(腎実質相では等吸収)など
・bridging septaやGerota筋膜の肥厚なども認める事がある
・治療は抗菌薬投与など
参考書籍:知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改定第2版
【急性巣状細菌性腎炎(AFBN)】
・急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN)は、液状化を伴わない腎実質の腫瘤形成を特徴とした腎感染症
・急性腎盂腎炎が進行し、腎実質の炎症を巣状に生じているが膿瘍形成を伴わない状態
・感染経路は上行性感染が多い
・腎盂腎炎、AFBN、腎膿瘍は一連の過程と考えられており、腎盂腎炎、AFBN、腎膿瘍の経過を辿る
・画像所見は、腎腫大や周囲脂肪組織濃度上昇、bridging septa、Gerota筋膜肥厚、早期相、腎実質相共に造形欠損を認める
・治療は抗菌薬投与など
参考書籍:知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改定第2版