大腸癌(colon cancer)

この人もか。最近、有名人の大腸癌にかかったっていうニュース多ない?

確かに多いですね。ついこの間、僕の親戚も直腸癌と診断されてました。幸い早期だったので内視鏡切除で完了しましたけど。

原因は食生活の欧米化なんて言われてるけどな。国立がん研究センターのデータやと今や男女ともに罹患数が2019年で全体の2位や。死亡数に至っては2021年で男性が2位、女性が1位らからな。実際多いねんな。ただな、大腸癌も早期に発見すれば治癒率が高い癌ではあるんや。

せや、今日は大腸癌についてレクチャーしてこかな。

大腸癌(colon cancer)とは

大腸癌の概要

大腸癌についてや。大腸癌は結腸癌と直腸癌の2つを総称して呼んでるんやで。

組織型はほとんどが腺癌で、罹患率や死亡率が増加傾向を示している癌や。他には扁平上皮癌、線扁平上皮癌などがあるわ。

腺癌には高分化型腺癌から低分化型腺癌があって、大腸癌のほどんど(~90%)が高~中分化型腺癌なんやで。残りの10%に低分化型腺癌や粘液癌があるわ。

概要
・大腸癌は結腸癌と直腸癌の総称
・50代以降で罹患率が高くなり、男女合わせて全体の2位、死亡数は男性で2位、女性で1位となっている
・原因は食生活の欧米化などが関係していると言われている
・他に家族性大腸腺腫症やLynch症候群、潰瘍性大腸炎、Crohn病がリスク因子として知られている
・ほとんどが腺癌(乳頭腺癌、管状腺癌、低分化腺癌、粘液癌、髄様癌など)で他に扁平上皮癌、線扁平上皮癌がある
・初期症状はなく進行すると下血や血便、さらに進行すると腸閉塞や嘔吐などが出現する
・主な検査法は便潜血や大腸内視鏡など

大腸の解剖と役割

次に大腸の解剖と役割についてやで。大腸は約1.5mの長さでバウヒン弁から先のところや。小腸から送られてきた消化物から主に水分とナトリウムを吸収して便にしてるんや。小腸と違って腸絨毛はあらへん。

大腸は大きく結腸と直腸に分けられて、その中でも部位によって盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分類されてるで。盲腸から直腸までは約20時間かけて移動するんやけど、大腸の中にハウストラというヒダがあるおかげて便が逆流せずに直腸まで移動するんやで。ちなみに回腸から盲腸の間にバウヒン弁(回盲弁)があって、これも逆流を防ぐ役目をしてるで。

大腸の解剖

また大腸には盲腸からS状結腸までの外壁に走向する3本の結腸紐があって、それぞれ大網ひも、自由ひも、間膜ひもと呼んでるで。上行結腸や下行結腸の前面(腹側)には自由ヒモが見えて、横行結腸の前面(腹側)には大網ヒモが見えるで。これらがハウストラを形成してんねん。大網ひもには腹膜垂が垂れ下がってて、捻転すると腹膜垂炎になったりするで。言葉よりも図の方がイメージしやすいと思うから、下図を確認しといてや。

大腸の結腸紐

大腸癌の原因と治癒率

大腸癌の原因は上で話した通り、食生活の欧米化があると考えられてるで。牛肉や豚肉などの動物性脂肪食が増える事で発癌促進作用がある2次胆汁酸の生成が高められる事が分かってんねん。これがそのまま大腸の粘膜に付着する事が発癌を高める原因にもなるって訳や。また高齢化や喫煙の有無も関係してると言われてるな。

他のリスク因子としては、家族性大腸腺腫症やLynch症候群などの遺伝性、潰瘍性大腸炎、Crohn病などの炎症、潰瘍がある場合も高くなる事が報告されてるで。これは国立がん研究センターから情報が出てるで。一方で運動習慣は予防に効果があるという話しもあるわ。ちなみに生存率についても大腸癌は国立がん研究センターから5年生存率が下記のように出てるで。Ⅲ期とⅣ期の差が大きいな。結腸癌や直腸癌は国立がん研究センター中央病院のデータや。

大腸癌(5年生存率)Ⅰ期:94.5% Ⅱ期:88.4% Ⅲ期:77.3% Ⅳ期:18.7%
結腸癌(5年生存率)Ⅰ期:92.3% Ⅱ期:85.4% Ⅲa期:80.4% Ⅲb期:63.8 % Ⅳ期:19.9%
直腸癌(5年生存率)Ⅰ期:90.6% Ⅱ期:83.1% Ⅲa期:73.0% Ⅲb期:53.5 % Ⅳ期:14.8%
国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システムより

大腸癌のTNM分類

まず大腸癌の肉眼的分類について載せておくで。0型から5型まで分類されていて、5型は分類不能という扱いや。4型は胃癌の時と同じようにスキルスと呼ばれる事もあるで。

大腸癌肉眼的分類

次に大腸癌のTNM分類と病期についてや。Ⅲ期までは基本的に切除術を実施する方向らしいで。再発リスクが高いⅡ期、Ⅲ期の場合は術後に化学療法を実施する事もあるとの事や。Ⅳ期の場合は原発と転移巣が切除可能かどうかで、オペか化学療法、放射線治療かの選択になるとの事や。転移しやすい部位は肝臓や骨、肺、脳、腹膜に多いな。分類には2パターンがあって両方載せておくで。

T分類TisT1T2T3T4
大腸癌(取り扱い規約第9版)癌が粘膜内にとどまっているT1a:癌が粘膜下層にとどまり浸潤距離が1000μm未満
T1b:癌が粘膜下層にとどまり浸潤距離が1000μm以上だが固有筋層に及んでいない
癌が固有筋層にとどまっている固有筋層を超えて浸潤している
漿膜を有する部位では漿膜下層までにとどまっている
漿膜を有しない部位では外膜までにとどまっている
T4a:癌が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って腹腔に露出している
T4b:癌が他臓器に直接浸潤している
大腸癌(UICC8版)上皮内癌:粘膜固有層に浸潤粘膜下層に浸潤している固有筋層に浸潤している漿膜下層、または漿膜被膜のない結腸もしくは直腸の周囲組織に浸潤する腫瘍T4a:臓側腹膜を貫通する腫瘍
T4b:他の臓器または組織に直接浸潤する腫瘍
N分類N0N1N2N3
大腸癌(取り扱い規約第9版)リンパ節転移なしN1a:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が1個
N1b:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が2~3個
N2a:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が4~6個
N2b:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移が7個以上
主リンパ節に転移を認める 
下部直腸癌では主リンパ節あるいは側方リンパ節に転移を認める
大腸癌(UICC8版)リンパ節転移なしN1a:領域リンパ節の転移が1個
N1b:領域リンパ節の転移が2~3個
N1c:漿膜下層または腹膜被膜のない結腸もしくは直腸の周囲軟部組織内に腫瘍デポジットすなわち衛星結節があるが、領域リンパ節無し
N2a:領域リンパ節の転移が4~6個
N2b:領域リンパ節の転移が7個以上
M分類M0M1
大腸癌(取り扱い規約第9版)遠隔転移なしM1a:1臓器に遠隔転移を認める
M1b:2臓器以上 M1c1:腹膜転移のみ
M1c2:腹膜転移と他臓器転移
大腸癌(UICC8版)遠隔転移なしM1a:1臓器に限局する転移で腹膜転移なし
M1b:2臓器以上
M1c:腹膜転移
        大腸癌取扱規約 9版とUICC8版を参考に作成
N0N1N2aN2b N3M1aM1bM1c
T1ⅢaⅢaⅢbⅣaⅣbⅣc
T2ⅢaⅢbⅢbⅣaⅣbⅣc
T3ⅡaⅢbⅢbⅢcⅣaⅣbⅣc
T4aⅡbⅢbⅢcⅢcⅣaⅣbⅣc
T4bⅡcⅢcⅢcⅢcⅣaⅣbⅣc
大腸癌取扱規約 9版を参考に作成

大腸癌の概要は分かったかな。次に画像所見について話していくで。

画像所見

大腸癌の画像所見

画像所見についてや。大腸癌は基本的に内視鏡や注腸検査がメインや。内視鏡で肉眼的分類を、注腸検査でサイズ測定や管腔の変形などを見るんやで。

早期癌の診断やと、内視鏡でM~SM軽度浸潤とSM高度浸潤の鑑別が必要やで。これはSM癌やとリンパ節転移が10%前後あって内視鏡で切除術が可能かどうかの判断が決まるためや。SM高度浸潤になると基本的に手術になるで。ちなみにSMは粘膜下層の事やで。

深達度略語
M:粘膜 SM:粘膜下層 MP:固有筋層 SS:漿膜下層 A:外膜

X線やと側面の形状と癌の浸潤には相関があると言われていて、無変形、角状変形、弧状変形、台形状変形の4つがあるんや。台形状変形は固有筋層かそれ以降に浸潤した状態で、後者になるにしたがって浸潤程度が深くなるで。

大腸癌深達度判定

CTやMRIは早期癌の診断は困難やのを覚えておき。CTやMRIは進行癌の壁外浸潤や他臓器浸潤の診断がメインやで。ちなみに直腸癌の深達度診断にはMRIが有効やという報告もあって、これは普段検査してても実感してるかもしれんな。

実際の症例

実際の症例や。40代の女性で、食欲不振の原因精査、USで肝臓に多発腫瘤を認めた例や。多発肝腫瘤精査のCTで上行結腸に造影される壁肥厚を伴う腫瘤影を認め、精査の結果上行結腸癌、リンパ節転移、多発肝転移の診断となった例や。

腹部CT-上行結腸癌
腹部CT-上行結腸癌

こっちは30代女性ので多発大腸癌の診断となった症例や。バックグラウンドに家族性大腸ポリポーシスがあるで。CT検査で上行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸に壁肥厚や腫瘤影を認めてFDG-PET検査でも同部位に高集積を認めてん。未提示やけど肝転移も認めてるで。

ちなみに大腸癌は他の消化器癌と比較して多発するケースが多いと言われてるんや。同時性、異時性問わず2~13%という報告があるで。中には同時性6多発大腸癌の例もあったという報告もあるで。

大腸癌同時多発性(日本医科大学医学会雑誌第10巻第3号)

腹部CT-多発大腸癌
腹部CT-多発大腸癌
FDG-PET-多発大腸癌

鑑別診断のポイント

過形成性ポリープなど

鑑別診断についてや。主なものとしてポリープや大腸粘膜下腫瘍なんかがあって、ポリープに関しては早期癌と腺腫、良性ポリープの鑑別が難しい場合が多いな。その中でも過形成性ポリープは内視鏡で肉眼的観察をすると白色を呈する事で鑑別が可能な事が多いで。

大腸粘膜下腫瘍は頻度は少ないんやけど、種類として脂肪腫やリンパ管腫、血管腫、カルチノイド腫瘍、GIST、悪性リンパ腫なんかがあるわ。

直腸はMPS(粘膜脱症候群:mucosal prolapsed syndrome)っていうのがあって、平坦型、隆起型、潰瘍型に分類されるんや。これは進行癌との鑑別が必要になる時があるで。

大腸に関連する疾患

大腸に関連するものを載せておくで。ついでに見ておいてもらえるとええな。

まとめ

今日は大腸癌についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

近年、罹患数、死亡数ともに増えているが、早期発見できれば5年生存率は90%を超える

内視鏡でSM浸潤の程度でポリペクか手術かどうかが決まる

CTやMRIは早期癌に対しては有用性が低く、T3~T4の診断に実施される

こんな感じやで。比較的5年生存率は高い癌やけど、直腸癌なんかだと進行度合いによっては人工肛門にならざるを得ないケースもあるからな。QOLを考えたら早期発見が重要や。っていうか、早期発見が重要って毎回言ってるな。

先生、飲み薬で癌が治療出来るように研究開発して下さいよ。ノーベル賞もんですよ。

アホ言うな。世界中の天才が何年もかけて研究しても出来てへんのやで。ワシみたいな凡人が作れる訳無いやろ。ワシらに出来るのは、検査した画像をちゃんと読んで所見を記載する事や。そのためには日々の経験が重要なんやで。

さて、今日はこれくらいにしとこか。

ほな、精進しいやー!