次の症例は胆管癌ケモ後の画像か。どれどれ・・・うーん、あんま効いてへんなー。
胆管癌って治療が難しいって聞きますよね。
胆管癌の手術は難しい事が多いねん。早期で発見出来れば局所切除だけで行ける場合もあるんやけど、進行して周囲に浸潤してまうとかなり大変なんや。周囲には肝臓や膵臓みたいに血流が豊富な臓器があるやん?浸潤程度によってはそこも切除せなアカン場合があって、そもそもの難易度が高いんや。せやから進行度によっては最初に化学療法が選択される場合も多いねん。
せや、せっかくやから今日は胆管癌についてレクチャーしよか。
もくじ
胆管癌(cholangiocarcinoma)とは
胆管癌の概要
胆管癌についてやけど、その前にまずは胆道癌について知っておく必要があるな。
胆道癌は胆道に出来る癌の総称や。胆道は肝臓内からvater乳頭まで伸びてる管のことや。これは知ってるよな?具体的には肝内胆管、肝外胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部なんかや。ここまでは基本やな。
胆道癌ってのはこの胆道のどこに癌が出来るかで以下のように分類されんねん。大きなくくりでいうと胆嚢癌も胆道癌の一つなんやで。胆嚢癌については別でレクチャーしてるから、そっちも参考にしてみてな。
要因 | |
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胆道癌 | 癌の発生が肝臓内:肝内胆管癌 |
癌の発生が肝臓外:肝外胆管癌(肝門部領域胆管がん、遠位胆管癌) | |
癌の発生が胆嚢:胆嚢癌 | |
癌の発生が十二指腸乳頭部(vater乳頭部):十二指腸乳頭部癌 |
今日はこの中で肝外胆管癌を話していくで。主な概要については次の通りや。
概要 |
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・50~60代以降の男性に多い ・主な症状は黄疸など ・原因は胆嚢炎などの慢性炎症や先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常などが指摘されている ・肉眼的分類では腫瘤形成型、壁浸潤型、腔内発育型に分類される |
膵胆管合流異常は膵液が逆行性に胆道上皮を曝露する事で上皮異型が起こりやすく、それが原因やとも言われとるで。
胆道(胆管)の解剖と役割
胆道の解剖やけど、胆道癌の概要のところで話した通りや。イメージにするとこんな感じやで。
胆管は胆嚢と同様に粘膜下層があらへんねん。それに加えて周囲にはリンパ管や自律神経が豊富に走ってるから、浸潤や転移が容易に起こってまうねん。おっきい血管も走ってるしな。粘膜下層の有無は浸潤や転移において重要って事やな。
胆管の役割は、肝臓で生成された胆汁を胆嚢に貯蔵して、食べ物が入ってきたら消化管に分泌するための管やねん。何らかの理由でこの胆管が詰まったりすると、黄疸のような症状が出てくるって事やな。Vater乳頭部にオッディ括約筋があって、これが胆汁の排出をコントロールしてんねんで。
胆管癌の原因と治癒率
原因については明確なものは判明してへん。ただ因果関係があるとされてるのが、慢性炎症、先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常や。
特に正常者と比較して膵胆管合流異常の胆管拡張型は胆管癌が多いというデータがあったり、他には肝内結石の10%程度で肝内胆管癌が合併するという報告もあるで。合流異常や結石による慢性的な炎症や刺激が危険因子って事になるんやろな。
胆管癌の治癒率やけど、かなり低い数字やで。がん研有明病院の2007年のデータやと、5年生存率は30%以下や。
膵臓癌並みに低い数字やな。やっぱり粘膜下層が無い事と漿膜をを他の血管と共有している事(単独で包まれてない事)で周囲に容易に浸潤しやすい事、周囲にリンパ管や血流豊富な臓器が多い事が関係してるんやな。下のデータは国立がん研究センターの肝内胆管癌のデータや。参考までにな。
肝内胆管癌(5年生存率) | Ⅰ期:73.4% Ⅱ期:46.9% Ⅲ期:45.0% Ⅳ期:11.0% |
胆管癌のTNM分類
胆管癌のTNM分類とステージ表を表にしておいたで。肝内胆管癌は肝臓癌に、胆嚢癌は別で作ってあるからそれ以外の3つについて各々作成しておいたわ。T分類が違ってるから注意やで。これらはいずれもUICC8版を参考にして作成してあるで。
T分類 | Tis | T1 | T2 | T3 | T4 |
肝門部領域胆管癌 | 上皮内癌 | 胆管のみに限局しているが筋層や線維組織まで浸潤している | T2a:癌が胆管壁を越えて周囲の脂肪組織に及んでいる T2b:癌が隣り合う肝実質にまで及んでいる | 門脈または肝動脈の片側の血管に癌が及んでいる | さらに広い範囲の血管に癌が及んでいる |
遠位胆管癌 | 胆嚢壁に5mm未満の深さまで及ぶ癌 | 胆嚢壁に5mm~12mmまでの深さで及ぶ癌 | 胆嚢壁に深さ12mmを超える癌 | 腹腔動脈などの動脈に及ぶ癌 | |
十二指腸乳頭癌 | T1a:十二指腸乳頭部またはオッディ括約筋にのみにある癌 T1b:オッディ括約筋を越えて括約筋の周りに及ぶ、または(および)十二指腸粘膜下層内におよぶ癌 | 十二指腸固有筋層に及ぶ癌 | T3a:膵臓に0.5cm以下で及ぶ癌 T3b:膵臓に0.5cmを越えて及ぶ癌、または膵臓周囲の組織もしくは十二指腸漿膜に広がっているが、腹腔動脈などの動脈には及んでいない癌 | 腹腔動脈などの動脈に及ぶ癌 | |
N分類 | N0 | N1 | N2 | N3 | |
肝門部領域胆管癌 | リンパ節転移なし | 領域リンパ節への転移が1~3個 | 領域リンパ節への転移が4個以上 | ||
遠位胆管癌 | |||||
十二指腸乳頭癌 | |||||
M分類 | M0 | M1 | |||
肝門部領域胆管癌 | 遠隔転移なし | 遠隔転移あり | |||
遠位胆管癌 | |||||
十二指腸乳頭癌 |
肝門部領域胆管癌 | N0 | N1 | N2 | M |
---|---|---|---|---|
T1 | Ⅰ | ⅢC | ⅣA | ⅣB |
T2a | Ⅱ | ⅢC | ⅣA | ⅣB |
T2b | Ⅱ | ⅢC | ⅣA | ⅣB |
T3 | ⅢA | ⅢC | ⅣA | ⅣB |
T4 | ⅢB | ⅢC | ⅣA | ⅣB |
遠位胆管癌 | N0 | N1 | N2 | M |
---|---|---|---|---|
T1 | Ⅰ | ⅡA | ⅢA | Ⅳ |
T2 | ⅡA | ⅡB | ⅢA | Ⅳ |
T3 | ⅡB | ⅡB | ⅢA | Ⅳ |
T4 | ⅢB | ⅢB | ⅢB | Ⅳ |
十二指腸乳頭癌 | N0 | N1 | N2 | M |
---|---|---|---|---|
T1a | ⅠA | ⅢA | ⅢB | Ⅳ |
T1b | ⅠB | ⅢA | ⅢB | Ⅳ |
T2 | ⅠB | ⅢA | ⅢB | Ⅳ |
T3a | ⅡA | ⅢA | ⅢB | Ⅳ |
T3b | ⅡB | ⅢA | ⅢB | Ⅳ |
T4 | ⅢB | ⅢB | ⅢB | Ⅳ |
画像所見
胆管癌の画像所見
次に画像所見について話してくで。肉眼病理学的には3つのパターンに分類されるっていうのは概要の表で記載した通りや。
腫瘤形成型、壁浸潤型、腔内発育型の3つで、肝門部型胆管癌は壁浸潤型が多いで。また肝門部に腫瘍が出来る事で両葉肝内胆管拡張を認める所見があった時にKlatskin腫瘍とも呼ぶ事もあるで。始めて聞く名前かもしれんけど、たまに出てくるから頭の片隅にでも入れておくとええで。
画像所見で確認すべき所は以下のようなものがあって重要なのはT因子の判断や。癌は遅延性濃染を呈する事が多いで。
画像所見 | |
---|---|
肝門部胆管癌 | 肝実質浸潤程度 左右の1次分枝胆管長軸方向への進展程度 肝十二指間膜から肝門板およびGlisson鞘内の肝動脈や門脈への浸潤有無 |
実際の症例
60代男性でUSで肝臓に異常を指摘されて精査となった例や。肝門部に腫瘤を認めて精査の結果、肝門部型胆管癌と診断されてるで。肝浸潤もあって、こう見ると血管浸潤もありそうやな。手術不可の判断で化学療法の後に放射線治療を実施したとの事や。
こちらは60代男性で遠位胆管癌の症例や。遠位部に腫瘤形成型の2cm程度の癌を認めるで。この腫瘤で上位胆道は拡張してるのが冠状断で確認出来ると思う。
この症例も胆管癌や。80代男性で肝機能障害の精査で発見されててん。拡散強調画像で高信号の箇所があるやろ。そこが癌や。胆道と膵管の拡張も認めるな。
鑑別診断のポイント
胆管拡張を認める疾患
鑑別診断としては、胆管拡張を呈する疾患が挙がるで。具体的には以下のようなものがあるわ。胆管拡張が良性病変によるものか、悪性病変によるものかの判別が重要や。一般的に良性によるものは胆管壁の肥厚は無い場合が多いで。
胆管拡張を示す主な鑑別疾患 | |
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胆管壁自体の病変 | 悪性腫瘍(癌)、原発性硬化性胆管炎、IgG4関連胆管炎、反復性感染性胆管炎などの他の胆管炎、外傷性など |
胆管腔内病変 | 胆道結石、寄生虫、胆道出血など |
胆管外部からの圧迫 | 膵癌、壁外性の胆管圧迫、Mirizzi症候群など |
閉塞の機転が明らかでないもの | 先天性胆道拡張症、Caroli病、膵胆管合流異常など |
Mirizzi症候群についてはこっちでも話してるで。
膵胆管合流異常
ついでに膵胆管合流異常の例も載せておくで。
合流異常は主膵管と総胆管がVater乳頭部以外で合流している、もしくは共通管の長さが15mm以上の場合が合流異常とされてるで。
これがあると胆道癌の発生率が上がると言われとる。下の例は主膵管が単独で十二指腸に開口している例や。その下には副膵管と総胆管が合流しているのが確認出来るな。
その他に付近に発生する悪性腫瘍は次のようなものがあるで。
まとめ
今日は胆管癌についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
胆管癌は初期症状は無く、進行すると黄疸症状が出てくる
周囲に主要血管が走っていているのと粘膜下層が無いため転移を来しやすい
画像診断では肝浸潤などのT因子の診断が重要(手術適応の可否や術式決定など)
こんな感じや。画像診断の役割は大きいで。ただ局所の診断は内視鏡一択や。加えて膵胆管合流異常があると胆管癌の発生率が上がるっていうマメ知識も入れておくようにな。
ちなみに、こういったTipsをどれだけ知っておくかも正確な診断をするための重要な要素や。知ってるかどうかだけの差やなんけど、この差が大きいねんで。
さて、今日も長くなってもうたから、これくらいで終わりにしよかな。
ほな、精進しいやー!