質問や!尿管結石の痛みの原因って何だか知ってるか?
楽勝ですよ。結石が尿管を傷つけるために起きるに決まってるじゃないですか!
ぶっぶー!ぶっぶっぶー!
実はちゃうねん。結石が尿管の途中で挟まる事で、尿が膀胱までいかずに腎臓内の圧力が上昇する事で痛みが起きんねん。つまり尿がせき止められなければ痛みは発生せんという事やねん。
てっきり結石が尿管を傷つけているものだと思ってたやろ?ナイス間違いやで!
実は尿がせき止められる原因は尿管結石だけじゃないねん。尿管癌でも起きうるねん。
ってな訳で、今日は尿管癌(と腎盂癌)についてレクチャーしてくで!
もくじ
尿管癌 腎盂癌(renal pelvis carcinoma,ureteral carcinoma)とは
尿管癌 腎盂癌の概要
今日は尿管癌と腎盂癌について話していくで。
なんで標題に2つの癌が並んでるかっていうと、一般的に腎盂・尿管癌という1つのくくりになっているからなんや。これは腎盂、尿管は尿路上皮(移行上皮)という粘膜で構成されてて、この尿路上皮から発生する癌を尿路上皮癌として呼んでる事に起因するんやで。治療法も特に違いはあらへんねや。発生する場所が違うだけって事やな。
ちなみにこれらの癌も喫煙が危険因子になってるんやで。喫煙は百害あって一理無しってのも分かると思う。
合理的に健康の事を考えたら、禁煙一択なんやけど、中々そうもいかへんのよな。
種類 | 概要 |
---|---|
腎盂癌 | ・腎悪性腫瘍の中で10%程度 ・肉眼的血尿で発見される事が多く、危険因子は加齢や喫煙など ・尿路上皮から発生する癌がほとんど(90%以上)で稀に扁平上皮癌、腺癌、神経内分泌腫瘍などがある ・そのため、膀胱癌と類似している点が多い ・腎盂癌と尿管癌は尿路内の色々な部位に多発しやすいという特徴がある ・腎尿管全摘術が標準治療で深達度やリンパ節転移の有無で術前化学療法が選択される事がある |
尿管癌 | ・尿路腫瘍の中で75%程度で他の特徴は腎盂癌と同様 ・尿管癌の発生部位別頻度は下部尿管が70%程度、中部尿管が20%程度、上部尿管が10%以下となっており、下部尿管がほどんど |
腎盂・尿管の解剖と役割
次に腎盂と尿管の解剖について話していくで。
まずは腎盂からや。
腎臓の中には腎実質があって、そこから尿管に移行する入り口の部分を腎盂と呼んでんねん。尿管は腎盂から膀胱までの管の事を呼んでて、左右に1対ずつあって長さは25~30cm程度やで。
壁構造は粘膜(粘膜上皮)、粘膜下層(上皮下結合組織)、筋層で構成されてて、このあたりは膀胱と一緒やな。
周囲にリンパ管や静脈を含む脂肪組織が存在してるで。
各々の役割としては、体内の血液が腎実質に集まって糸球体で濾過された原尿が腎盂に集まんねん。そして尿細管を経て再吸収などをして残ったものが尿として尿管を通って最終的に膀胱に溜められるって訳やな。そのため、腎盂と尿管は繋がってて、同じ上皮細胞で出来てんねん。
尿細管と尿管は名前は似てるけど全然違うから覚える時に注意が必要やで。
腎盂・尿管癌の原因と治癒率
危険因子としては次のようなものがあるで。
喫煙、男女性差(男性の方が多い)、医薬品(シクロホスファミド、フェナセチン)、慢性細菌感染、化学発癌物質、バルカン腎症などや。
特に喫煙は最も危険因子で非喫煙者と比較すると3倍の発症リスクがあって、長期喫煙(45年以上)と非喫煙者の比較やと、リスクが7.2倍になるとのデータもあんねん。かなりの数字やな。喫煙によって血中に溶け込んだ発癌性物質が原尿として腎に集められるのが原因や。この時に腎盂や尿管も発癌性物質にさらされてんねんで。
ちなみにバルカン腎症は地方病性腎疾患でルーマニアやブルガリア地方で見られる腎症やで。日本ではほとんど見ーひんで。
5年生存率については、国立がん研究センターのデータから下記のように発表されてるで。浸潤してる事が多く進行癌の状態で見つかる事が多いのが難点やな。
腎盂・尿管癌(5年生存率) | Ⅰ期:81.1% Ⅱ期:72.0% Ⅲ期:52.4% Ⅳ期:12.5% |
腎盂・尿管癌のTNM分類
次はTNM分類についてや。下記にまとめたおいたから確認しておいてや。ポイントとしてはNやMがあるとステージⅣになるって事やな。ステージⅣになると上記の5年生存率を
見てもらえれば分かると思うねんけど、かなり治癒率が低くなってるで。
T分類 | Tis | T1 | T2 | T3 | T4 |
Ta:乳頭状非浸潤癌 Tis:上皮内癌(carcinoma in situ:CIS) | 上皮下結合組織に浸潤する腫瘍 | 筋層に浸潤する腫瘍 | 腎盂:筋層を超えて腎盂周囲脂肪組織または腎実質に浸潤 尿管:筋層を超えて尿管周囲脂肪組織に浸潤 | 隣接臓器または腎実質を超えて腎周囲脂肪組織に浸潤している | |
N分類 | N0 | N1 | N2 | ||
領域リンパ節への転移なし | 最大径が2cm以下の1個の所属リンパ節転移がある | 最大径が2cm以上の1個の所属リンパ節転移または複数個の所属リンパ節転移がある | |||
M分類 | M0 | M1 | |||
遠隔転移なし | 遠隔転移がある |
N0 | N1,N2,M1 | |
---|---|---|
Ta、Tis | 0a、0is | Ⅳ |
T1 | Ⅰ | Ⅳ |
T2 | Ⅱ | Ⅳ |
T3 | Ⅲ | Ⅳ |
T4 | Ⅳ | Ⅳ |
腎盂・尿管癌の概要についてはこんな感じや。次に画像所見について話していくで。
画像所見
腎盂・尿管癌の画像所見
まず腎盂・尿管癌の画像所見でみるべき所からや。
原発巣の深達度、リンパ節、遠隔転移の3つがあるで。特に深達度に関してはT3以上かそれ以下かの診断が現状での限界や。T2以下は辺縁平滑な壁肥厚や腫瘤形成を認めて、T3以上やと辺縁不整で厚みがある壁肥厚、腫瘤形成を認める事が多いで。
リンパ節転移や遠隔転移は言わずもがなやな。これも画像診断の重要な役目や。
腫瘤陰影はCTでは弱い造影効果を認めて排泄相で陰影欠損として描出されるで。
MRIやと拡散強調画像の有用性が最近出てきとるな。拡散強調は基本的にルーチンの一部やと思うけど、もし入れてない施設があれば撮像に関わる時間も数分程度やし、これを機に入れる事を考慮してもらえればと思う。腎機能障害やアレルギーで造影剤を使用出来ない場合にも有効って話しもあるわ。
ほな、実際の症例を見ていこか。
実際の症例
70代男性でUSで腎結石疑いにてCT検査となった例や。右腎盂に早期相でやや造影されて、排泄相で欠損像をして描出される腫瘤を認める事が出来ると思うで。最終的に腎盂癌と診断されてるで。
こっちは90代の男性でUSで腎腫瘍疑いとなった例や。高齢と腎機能低下があって非造影で検査してんねんけど、右腎盂に腫瘤を認める事が出来ると思うで。最終的に腎盂癌の診断になったんやけど、施設にに入所している事もあり本人が積極的な治療を臨まず経過観察となってるで。
60代男性で右下腹部痛の精査で尿管癌と診断された例や。右尿管に5cm×3cm程度の腫瘤を認める事が出来ると思う。精査で右尿管癌とリンパ節転移と診断されて化学療法になってるで。
鑑別診断のポイント
鑑別が必要な3パターン
次に鑑別診断についてやな。鑑別する疾患として次の3パターンがあるで。各々で鑑別が必要な疾患があるから代表的なものだけでも覚えておくとええで。
鑑別疾患 | 内容 |
---|---|
腎盂・尿管管腔内病変 | 結石や凝血塊、粘液など 胆石と違い尿管結石がある場合はCTでほぼ確認する事が出来る |
粘膜および壁内病変 | 隆起性病変ではポリープ状の腫瘍など 浸潤性悪性腫瘍の場合は悪性リンパ腫や他臓器からの直接浸潤、転移など 炎症性疾患では感染性疾患や放射線治療後など 他に壁内血腫や子宮内膜症、アミロイドーシス、外傷などがある |
腎盂・尿管外病変 | 血管による圧迫、腸管や骨盤内炎症性病変からの波及、後腹膜線維症、脂肪腫など |
ちなみに小児で尿路通過障害を見た時は先天性奇形の頻度が高いから、それらも鑑別にあげる必要があるで。
一般的に悪性腫瘍が原因のものは不整な狭窄を来たすんやけど、良性のものはスムーズな狭窄が多いと言われてるで。どれくらいがスムーズと聞かれるとちょっと回答に困るけどな。
関連する悪性腫瘍は次のようなもんがあるで。合わせて確認しておいてな。
まとめ
今日は腎盂・尿管癌についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。
喫煙が危険因子筆頭で、症状が出る頃には進行癌の状態の事が多い
画像診断ではT3以上かそれ以下かの判断を行う(というかT2以下の診断は難しい)
こんな感じやな。
尿管癌なんかは普段から注意して見ていないと、簡単に見逃す可能性もあるで。特に自覚症状が無い時なんかはな。
ある程度大きさがあったり臨床症状があったりすると違うんやろけど、スクリーニングなんかだと小さいのはスルーしてまうかもしれん。
こういった時の対処法として、自分なりの漏れが無い読影の流れを作っておくとええで。
さて、今日はこんな感じで終わろうかな。
ほな、精進しいやー!