自分が前立腺癌になったらどっちがええ?ダビンチで癌を摘出するか放射線治療でやっつけるか・・・
僕ならダビンチですかね。そっちの方が早く終わりそうですし。
もくじ
前立腺癌(prostate cancer)とは
正直言うと、この話題で2か月悩んでんねん。
いや、癌になった訳やあらへんよ?なったと仮定した時の話や。つまりは結論がでーへん問題やって事や。
前立腺癌の概要
今日は前立腺癌について話してくで。
まず前立腺癌は男性のみの病気や。当たり前やけどな。まずは下記の概要を見てくれや。
前立腺癌の概要
- 年々数が増えてきている癌で最近では年間10万人が新規で罹患している
- 60代以降に増加し80歳以上には潜在的な前立腺癌が半数以上いると言われている
- 年間の前立腺癌による死亡者数は1.3万人ほど
- 原因は加齢や食生活の欧米化、遺伝などが考えられている
- またPSA検査が一般的になった面もあると言われている
- なおPSAの基準値は0~4ng/mlで4~10ng/mlはグレーゾーン、100ng/ml以上の場合は前立腺癌が強く疑われる
- 前立腺癌は一般的に進行が遅く症状が出る頃には進行癌の事が多い
- 主な症状は血尿、下部尿路閉塞など 腺癌がほとんであり、未分化癌、扁平上皮癌、移行上皮癌も稀に発生する
- 前立腺癌の70%は辺縁部(外腺部)に発生する
前立腺癌は、年々増えている病気やねん。最近やと年間約10万人が前立腺癌と診断されてるな。
肺癌の年間診断者数が男女合わせて年間13万人くらいやから、それよりちょっと少ないくらいなんやけど、前立腺癌は男性のみの数字やから、その点を考慮すると多いってのが分かると思う。
原因としては高齢化や食生活の欧米化があると言われとる。
60代以降に増加してきて80歳以上の人で半数以上は潜在的な前立腺癌があるとも言われてんねん。
2015年の統計局のデータやと、80歳以上の男性の人数は350万人もおるから、単純計算で150万人程度の前立腺癌患者がおるって事や。
去勢抵抗性前立腺癌
基本的に前立腺癌は男性ホルモン(テストステロン)によって増殖する性質があんねん。
せやからこの男性ホルモンを押さえる事で癌の進行を抑制したり縮小させる治療法がホルモン療法なんやけど、このホルモン療法を継続していくうちに効果が出なくなってくる癌があんねん。
これを去勢抵抗性前立腺癌と呼んでんねん。
去勢抵抗性前立腺癌は血中の血清テストステロンが50ng/dl未満と低い状態にも関わらず、進行したりPSAが上昇してくる状態の事を指すで。
この去勢抵抗性前立腺癌の状態やと、骨転移を80%の頻度で起こす事が知られてて脊椎や骨盤、大腿骨なんかに多いという話しや。
グリソンスコア
これは前立腺癌の治療や予後に関係してるグリソンスコアというものや。前立腺生検でよく使われるスコアやから覚えておくとええで。
前立腺癌は、T因子とグリソンスコア、PSA値を合わせてリスク分類を行ってるんやで。
前立腺の解剖と役割
次に前立腺癌の解剖や。
前立腺は男性にのみ存在するクルミみたいな形をした臓器や。膀胱直下にあって、中心には管が通っていてその中を尿道が通っているんや。大きさは20g程度やで。
前立腺内部は移行領域と中心領域、辺縁領域に区分されてるで。辺縁領域が前立腺癌の好発部位や。
前立腺の主な役割としては、前立腺液を分泌する事と、射精時の精液の射出を補助する事や。
前立腺液には精子の動きを活発化させる働きがあるのと、前立腺は平滑筋で出来てるから収縮する事で精液射出の補助も行ってんねん。
また前立腺は思春期は辺縁域を中心に発達して、50歳以降は移行域を中心に大きくなる傾向があんねん。大きくなって排尿障害なんかが伴ってくると前立腺肥大症と診断されたりするで。
前立腺癌の原因と治癒率
前立腺癌の原因
前立腺癌の原因は特に判明しているものは現状あらへん。
リスクファクターとしては、加齢、食生活の欧米化、家族歴なんかがあると言われてるで。
50代から発生頻度が上昇して60歳以降には直線的に増加していくで。
前立腺癌の治癒率
5年生存率については、国立がん研究センターの2014年のデータから下記のように発表されてるで。
基本的に早期で見つける事が出来れば十分完治が見込める癌なんや。
前立腺癌(5年生存率) | Ⅰ期:100.0% Ⅱ期:100.0% Ⅲ期:100.0% Ⅳ期:63.4% |
前立腺癌のTNM分類
TNM分類
次はTNM分類についてや。NやMがあるとステージⅣになんねん。ここが他の癌との大きな違いやな。
下の図はUICC8版を参考に作成してあるから参考にしてみてや。
T分類 | T1 | T2 | T3 | T4 |
T1a:偶然に発見された癌でBPHなどで切除した組織の5%以下に発見されたもの T1b:偶然に発見された癌でBPHなどで切除した組織の5%以上に発見されたもの T1c:偶然に発見された癌でPSAの上昇などで針生検で発見されたもの | T2a:前立腺内に留まる癌で左右どちらか1/2までにとどまるもの T2b:前立腺内に留まる癌で左右どちらかだけ1/2を超えるもの T2c:前立腺内に留まっているが左右両方に及ぶもの | T3a:片方または左右両方、顕微鏡的な膀胱への浸潤が認められる被膜を越えたもの T3b:被膜を越えて精嚢まで及んでいるもの | 隣接臓器(膀胱、直腸、骨盤壁)などに浸潤しているもの | |
N分類 | N0 | N1 | N2 | |
所属リンパ節への転移なし | 所属リンパ節転移がある | |||
M分類 | M0 | M1 | ||
遠隔転移なし | M1a:所属リンパ節以外へのリンパ節転移 M1b:骨転移がある M1c:骨、リンパ節以外の転移がある |
N0 | N1 | M1 | |
---|---|---|---|
T1 | Ⅰ | Ⅳ | Ⅳ |
T2a | Ⅰ | Ⅳ | Ⅳ |
T2c | Ⅱ | Ⅳ | Ⅳ |
T2c | Ⅱ | Ⅳ | Ⅳ |
T3 | Ⅲ | Ⅳ | Ⅳ |
T4 | Ⅲ | Ⅳ | Ⅳ |
腺癌んと上皮癌
注意点としては、この分類は腺癌に対してやという事や。
上皮癌の場合は尿道腫瘍に分類されて、尿道腫瘍については以前に話したからそっちも参考にしてもらえるとええで。
NCCN病期分類
余談やけどTNM分類とグリソンスコア、PSA値を使って、転移の無い前立腺癌のリスク分類、通称NCCN(National Comprehenseive Cancer Network)病期分類があんねん。
参考までに載せておくから確認しといてや。治療をする訳やあらへんから覚えておく必要はあらへんと思うけど、知っておくとええかもしれんな。
NCCN分類 | T因子 | グリソンスコア(GS) | PSA |
---|---|---|---|
超低リスク | T1c | 6以下 | 10以下 |
低リスク | T1c~T2a | 2~6 | 10以下 |
中リスク | T2b~T2c | 7 | 10~20 |
高リスク | T3 | 8~10 | 20以上 |
超高リスク | T3b~T4 |
画像所見
PI-RADS
PI-RADS
次に画像所見についてレクチャーしていくで。
前立腺のMRI診断でPI-RADS(Prostate Imaging Reporting and Data System)ってのがあるんや。
これは読影の標準化をしたもので是非とも覚えておくべき内容やで。
注意点としては、辺縁領域と移行領域で診断のメインとなる画像が違うという事や。
辺縁領域は拡散強調画像、移行領域はT2強調画像の所見に依存してんねん。
Dynamic画像が補助的な役割なのは両方に共通している事やな。
PI-RADS Ver2.1 各種ポイント | |
---|---|
clinically significant prostate cancer (臨床的意義がある前立腺癌) | ①Gleason score ≥7 (including 3+4 with prominent but not predominant Gleason 4 component) ②volume >0.5 mL ③extraprostatic extension 上記のいずれかを満たす病変 |
PI-RADS Category | PI-RADS 1: very low (clinically significant cancer is highly unlikely to be present) PI-RADS 2: low (clinically significant cancer is unlikely to be present) PI-RADS 3: intermediate (the presence of clinically significant cancer is equivocal) PI-RADS 4: high (clinically significant cancer is likely to be present) PI-RADS 5: very high (clinically significant cancer is highly likely to be present) |
PI-RADSはT2強調、拡散強調画像、ダイナミック画像の3つを使って評価する | |
T2 weighted imaging (T2WI) score (Transition Zone) | 【Transition zone(移行領域)】 1: normal appearing transition zone (rare) or a round, completely encapsulated nodule ("typical nodule" of benign prostatic hyperplasia) ※均一な中等度信号 2: a mostly encapsulated nodule or a homogeneous circumscribed nodule without encapsulation ("atypical nodule"), or a homogeneous mildly hypointense area between nodules ※輪郭のある低信号域、または被膜のある不均一な結節 3: heterogeneous signal intensity with obscured margins; includes others that do not qualify as 2, 4, or 5 ※境界不明で不均一な信号域(2、4、5以外) 4: lenticular or non-circumscribed, homogeneous, moderately hypointense, and <1.5 cm in greatest dimension ※レンズ状あるいは輪郭不明瞭、最大径1.5cm未満の均一な中等度信号域 5: same as 4, but ≥1.5 cm in greatest dimension or definite extraprostatic extension/invasive behavior ※4に加え最大径が1.5cm以上、または前立腺外進展や浸潤傾向を呈するもの |
T2 weighted imaging (T2WI) score (Peripheral Zone) | 【Peripheral zone(辺縁領域)】 1: uniform high signal intensity (normal) ※均一な高信号域 2: linear or wedge-shaped hypointensity or diffuse mild hypointensity, usually indistinct margin ※線状あるいは楔状の低信号、またはびまん性の中等度の低信号域 3: heterogeneous signal intensity or non-circumscribed, rounded, moderate hypointensity; includes others that do not qualify as 2, 4, or 5 ※不均一な信号域、または輪郭の無い円形の中等度低信号域(または2、4、5以外) 4: circumscribed, homogeneous, moderate hypointensity, and <1.5 cm in greatest dimension ※最大径1.5cm未満の限局したADC低信号かつDWIで高信号 5: same as 4 but ≥1.5 cm in greatest dimension or definite extraprostatic extension/invasive behavior ※4に加え最大径が1.5cm以上、または前立腺外進展や浸潤傾向を呈するもの |
Diffusion weighted imaging (DWI) score | Transition zone or peripheral zone 1: no abnormality on ADC or high b-value DWI ※DWIやQDCで異常なし 2: linear/wedge shaped, hypointensity on ADC and/or hyperintensity on high b-value DWI ※線形/くさび状でDWIで高信号および/またはADCで低信号 3: focal (discrete and different from background), mild/moderate hypointensity on ADC and/or mild/moderate hyperintensity on high b-value DWI; may be markedly hypointense on ADC or markedly hyperintense on high b-value DWI, but not both ※限局したDWI高信号、もしくはADC低信号(両方ではない) 4: focal, marked hypointensity on ADC and marked hyperintensity on high b-value DWI; <1.5 cm in greatest dimension ※最大径1.5cm未満の限局したADC低信号かつDWIで高信号 5: same as 4 but ≥1.5 cm in greatest dimension or definite extraprostatic extension/invasive behavior ※4に加え最大径が1.5cm以上、または前立腺外進展や浸潤傾向を呈するもの |
Dynamic contrast enhancement (DCE) | (-) negative: no early or contemporaneous enhancement, or diffuse multifocal enhancement not corresponding to a focal finding on T2W and/or DWI, or focal enhancement corresponding to a lesion demonstrating features of benign prostatic hyperplasia on T2W (including features of extruded benign prostatic hyperplasia nodule in the peripheral zone) ※早期濃染がない、あるいはT2強調や拡散強調で限局した異常信号がないびまん性の造影効果、あるいはT2強調でBPHを呈する病変の造影効果 (+) positive: focal, and earlier than or contemporaneous with enhancement of adjacent normal prostatic tissues, and corresponds to suspicious finding on T2 and/or DWI ※隣接する正常な前立腺組織と同等、あるいは早期に造影される病変でT2強調や拡散強調画像で対応する所見があるもの |
【Peripheral zone(辺縁領域)】
DWI | T2WI | DCE | PI-RADS category |
1 | 1~5 | (+)/(-) or × | 1 |
2 | 1~5 | (+)/(-) or × | 2 |
3 | 1~5 | (-) or × | 3 |
3 | 1~5 | (+) | 4 |
4 | 1~5 | (+)/(-) or × | 4 |
5 | 1~5 | (+)/(-) or × | 5 |
【Transition zone(移行領域)】
T2WI | DWI | DCE | PI-RADS category |
1 | 1~5 | (+)/(-) or × | 1 |
2 | 1~3 | (+)/(-) or × | 2 |
2 | 4~5 | (+)/(-) or × | 3 |
3 | 1~4 | (+)/(-) or × | 3 |
3 | 5 | (+)/(-) or × | 4 |
4 | 1~5 | (+)/(-) or × | 4 |
5 | 1~5 | (+)/(-) or × | 5 |
読影の流れをまとめると、、、
辺縁領域の病変は拡散強調画像をチェックしてスコアが3なら早期濃染の有無をチェック。スコアが3以外ならそのままPI-RADSのCategoryになる。
移行領域病変ならT2強調画像スコアが2の場合は拡散強調画像スコアを、3の場合は拡散強調画像スコアとダイナミック画像をチェックする。2・3以外ならそのままPI-RADSのCategoryになるっちゅー具合や。
その他の画像所見
これらに加えて画像診断では被膜外浸潤と精嚢浸潤が重要なんや。その所見特徴は下記の通りやで。
画像所見 | |
---|---|
被膜外浸潤所見 | ・神経血管束の非対称または神経血管束への浸潤像 ・直腸前立腺角の鈍化 ・腫瘍の直接浸潤または膀胱壁への浸潤による被膜の断裂 ・前立腺外への不整な突出 ・不規則なまたは棘状の前立腺辺縁 1cm以上にわたる腫瘍と被膜の接触 |
精嚢浸潤所見 | ・T2強調における精嚢の限局性または、びまん性の低信号 ・精嚢内の異常な造影効果 ・精嚢内の拡散制限 ・前立腺底部と精嚢間の角度の鈍化 ・精嚢への前立腺腫瘍の直接進展 |
ほな、実際の画像を見ていこか。
実際の症例
70代 男性 PSA:5.42
検診でPSA高値(5.42)で精査となった例や。移行域に約2cm大のT2強調で低信号、ADCで低信号、早期濃染を認める病変があると思う。
T2強調スコアが5やからPI-RADSのCategoryも5になるな。
生検の結果、前立腺癌(adenocarcinoma、GS3+4、T2cN0M0)と診断されてるで。NCCN分類やと中リスクに該当するな。
50代 男性 検診精査
検診精査の例や。右移行域に2.5cm大の腫瘤を認めてT2強調で低信号、拡散強調で高信号、ADC低信号、早期濃染ありや。
PI-RADSのCategoryは5になるな。生検の結果、こちらも前立腺癌と診断されてるで。
60代 男性 検診精査
60代男性でPSA高値の精査で前立腺癌と診断された例や。
右辺縁域に1cm大の腫瘤があって、拡散強調で高信号、ADCで低信号、T2強調で低信号、早期濃染ありや。DWIスコアが4になるからPI-RADSのCategoryも4になるで。
鑑別診断のポイント
前立腺肥大症(BPH) 他
鑑別診断についてやけど、まずは病変がどこの領域に発生しているかを確認するんや。
領域によって出来やすい病変ってのがある程度決まってきてんねん。
位置が確認出来たら、充実性なのか嚢胞性なのか等のチェックを実施するんやで。
場所 | 鑑別疾患 |
---|---|
中心域 | BPH、mullerian cyst、前立腺小室嚢胞 など |
移行域 | BPH、前立腺膿瘍 など |
辺縁域 | 炎症性変化、BPH、生検後変化、前立腺膿瘍 など |
辺縁域に発生する病変は慢性前立腺炎との鑑別が1番多いで。炎症はT2強調で楔状、線状、びまん性の低信号域として描出され、造影効果は軽度、ADC低下も軽微な事が多いねん。
移行域に発生する病変は、BPHとの鑑別が多いな。BPHはT2強調で被膜様構造物を認めて内部に高信号域を含む低信号として描出されんねん。ただ中には移行域前立腺癌と同じような所見を呈するBPHもあるから、鑑別に難渋する事もあるで。
他の男性器特有の悪性腫瘍は下記の通りや。確認しておいてな。
周辺に発生する悪性腫瘍は膀胱癌なんかやな。
まとめ
今日は前立腺癌についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
早期で発見すれば予後は良い癌
移行域と辺縁域ではメインとなる画像が違う(T2強調 or 拡散強調)
被膜外浸潤、精嚢浸潤の有無が重要
ちなみに、前立腺癌って数が多いのは概要で話した通りやけど、検診で要精査となった人で実際に癌と診断される割合ってどれくらいなんか分かるか?
日本医師会がHPで出しているデータやと、検診で要精査となる割合が1.6~6.5%で、その中で実際にがんと診断される割合が1~4.7%らしいで。単純計算で1万人中に数人ってイメージやな。もちろん部位によって違ってくるけど、これが多いと思うか案外少ないと思うかは個人の感じ方次第やないかな。
毎回言ってるけど、癌に限らず病気は予防と早期発見が重要なんや。100%防ぐのは無理やから、いかにリスクを少なくして、いかに早期で発見するかなんやで。
その為に画像診断が寄与する割合は大きいねん。せやから日頃から経験を積んでおく事が重要やで。
ほな、精進しいやー!