大腿骨頭壊死(avascular necrosis of the femoral head)

今日は突発性大腿骨頭壊死について話していこかと思うてんねんけど、実はこの病気って指定難病されてるって知ってた?

いえ、お恥ずかしながら知りませんでした。

若い人も罹患する事があって、いくつか原因らしきものは分かってきてるらしいねんけど、基本的に予防法や治療法があらへんらしいで。
壊死して潰れてしもうたら、骨切り術か人口関節にするしかあらへんとの事や。
早めに見つかれば経過観察になる事もあるらしいけどな。

大腿骨頭壊死(avascular necrosis of the femoral head)とは

大腿骨頭壊死の概要

ってな訳で、今日は大腿骨頭壊死についてや。

大腿骨頭壊死は、何らかの原因で大腿骨頭の血流障害が起きて壊死になる病態や。動脈損傷や塞栓などで血流障害が起きて虚血から壊死になんねん。

年間2~3,000名程度が新規で罹患して、2万人以上の通院治療中の患者さんがおるって話や。

原因についてはっきりしている場合は症候性骨壊死、原因不明の場合は突発性骨壊死に分類されとる。

症候性骨壊死は骨折や放射線治療の影響などが原因で、突発性骨壊死はアルコール多飲とステロイド剤の投与歴の2つが原因として知られてるな。新規罹患者のうち、前者が43%、後者が55%該当するってデータもあんねん。

ちなみにアルコールとステロイドの2つを除外して、それ以外を突発性骨壊死と呼ぶ事もあるらしいで。

男性にやや多くて、好発年齢は男性が40代、女性が30代と60代の2ピークや。

治療法は患者背景や年齢、進行度を加味して保存療法か手術療法や。

保存療法は予後が良い場合に適応で、生活指導や杖の使用などで様子を見ていくらしいな。

手術療法は、症状があって更に圧潰の進行が予想される時に適応になるらしいで。進行度によっては人工関節置換術になる事もあんねんて。

ここまで簡単にまとめるで。

  • 大腿骨頭壊死
    • 症候性壊死
      • 骨折や放射線治療など、原因が明確に分かるもの
    • 特発性骨壊死
      • 基本的に原因不明
      • アルコール多飲とステロイド剤投与の関与が知られているがこの2つを除外して呼ぶ事もある
      • 治療が長期になる事もしばしば
      • 痛みなどの症状がある場合は、基本的に手術が選択される事が多い

大腿骨の解剖

次に大腿骨の解剖や。この辺は学生の時にやったと思うから簡単にサラッと流す程度にするで。

忘れてしもーた人は下の図を見て思い出しておいてくれや。

股関節解剖

大腿骨頭壊死の原因と臨床症状

原因

原因は概要の所で述べた通りや。

繰り返しになるけど、骨折等で原因が判明しているものを症候性骨壊死、原因不明なものを突発性骨壊死と呼んでるわ。

突発性はアルコール飲酒歴、全身ステロイド投与歴がある人に多いで。

症状

臨床症状は歩行時の痛みが1番やな。痛みがある段階になるとかなり進行してる事が知られてるで。

痛みが起きるメカニズム

実は骨壊死が発症した時は、痛みなどの自覚症状はあらへんくて、症状が出る時は大腿骨頭に圧潰が出来た時やねん。

骨壊死が起きてから自覚症状を認めるまでには数ヶ月から数年の時間差があるらしいで。

これが症状があると進行している場合が多い理由や。

画像所見

単純写真の画像所見

次に画像所見やな。

単純写真では、ある程度進行すると骨硬化像や透亮像、骨折や圧壊像を認めるわ。ちなみに早期診断は難しい事が多いで。

壊死に伴う骨折は関節面直下の軟骨下に起きやすいといわれてるで。

軟骨下骨に円弧状の透亮像を認め、これをcrescent signと呼んどる。

crescent sign
Case courtesy of Maulik S Patel, Radiopaedia.org

なるほど。こんな感じの単純写真で見えるんですね。

MRIの画像所見

次にMRIの所見や。

MRIの壊死骨所見は、円弧状や蛇行上の低信号に囲まれた領域として描出されるで。これはバンド像とも言われとる。

他には骨髄浮腫も認める事も多いな。

T2強調で低信号域の内側に高信号縁があって、これを二重線縁(double line sign)と呼んどるのは覚えておき。

これは突発性骨頭壊死に特徴的な所見やと言われてたんやけど、最近はケミカルアーチファクトの関与とも言われとる。

ただ重要な所見であるのは間違いあらへん。

double line sign
double line sign

ここまでのまとめや。

  • 単純Xp
    • 早期での診断は難しい
    • ある程度進行すると骨硬化像や透亮像、骨折や圧壊を認める
    • 壊死に伴う骨折は軟骨下骨に円弧状の透亮像、crescent signと呼ばれるサインがある
  • MRI
    • 壊死骨は円弧状の低信号域として描出され、骨髄浮腫も認める
    • T2強調で低信号域の内側に高信号縁があり二重線縁(double line sign)と呼ぶが、ケミカルアーチファクトが関係しているとも言われている

実際の症例

40代女性の例や。歩行時の疼痛精査でMRIを実施してん。

両側大腿骨頭の荷重面にT1強調像で地図状(帯状)の低信号域をみとめる事から、大腿骨頭壊死疑いとなった症例やで。

荷重面がやや扁平化しているのと、大腿骨頭~頚部の骨髄内にはSTIRで高信号域も認めるから軽度の圧潰疑いとなった例や。

その後、最終的に大腿骨頭壊死の診断となったわ。

股関節MRI-大腿骨頭壊死

別の大腿骨頭壊死の症例や。左は異常なくて、右の大腿骨頭壊死やで。

ちなみに壊死部周囲の大腿骨頭~頚部に骨髄浮腫を認める場合、股関節痛や骨頭圧壊の頻度が高い事が報告されてるらしいで。

股関節MRI-大腿骨頭壊死
上段左からT2脂肪抑制画像、T2WI、下段左からT1WI、T2WI横断像

鑑別診断のポイント

一過性大腿骨頭萎縮症 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折

鑑別診断は一過性大腿骨頭萎縮症、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折やな。大まかな鑑別は下記の通りや。

参考までに一過性大腿骨頭萎縮症は関節裂隙の狭小化を伴わない一側大腿骨頭の骨粗鬆化で、数ヶ月で回復するで。

大腿骨頭脆弱性骨折はMRIで線状の低信号を認めて肥満傾向の女性に多いと言われとる。多くは自然軽快するんやけど、一部で進行して骨頭破壊を来す事もあるんや。

一過性大腿骨頭萎縮症 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折

他には、このあたりも関連する疾患として知っておくとええで。

まとめ

今日は大腿骨頭壊死についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。

アルコール多飲歴と、全身ステロイド使用歴がある人に多い

早期診断は、単純写真では難しく骨髄浮腫を反映できるMRIが有効

こんなところやな。外傷や放射線治療後なんかの原因が判明している場合と、原因不明の場合があるから注意やで。

早期に発見できれば人工関節を回避できるかもしれんしな。

さて、今日はこれくらいにしよかな。

ほな、精進しいやー!

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