【臨床症状】70代 女性 耳鳴り精査
【問題】画像所見と診断名は?
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- 後頭骨にT2WIで高信号を呈する嚢胞性病変を認める
- FLAIRでは信号低下を認める事から内容物は脳脊髄液と考えられる
- また後頭骨に発生している点からも、くも膜顆粒が第一に疑われる
- その後のフォローで特に増大は認めていない
- その他の所見として、両側大脳半球の深部白質や基底核周囲にT2WIで高信号を認め、虚血性変化が疑われる
- また脳槽撮影(非提示)にても内耳道や小脳橋角部にも異常所見は認めなかった
【くも膜顆粒】
・くも膜顆粒はくも膜が静脈洞付近で作る憩室の事を指し、脳脊髄液と同じような信号で、キノコ状の形態の嚢胞性変化の事
・くも膜の中皮が集合し、結節状に盛り上がる事で形成される
・内板の陥凹像や造影欠損像として描出される
・脳脊髄液の流れは以下の通りと考えられていたが、最近では違う仮説も提唱されている
- 脈絡叢で産出された脳脊髄液が脳室系(側脳室、Monro孔、第3脳室、中脳水道、第4脳室)へ
- その後、Magandie孔やLushka孔を経てくも膜下腔に
- そしてくも膜顆粒で吸収され静脈洞に
・原因は、くも膜顆粒から静脈洞への経路では、生理的条件下では髄液を輩出していなく、脳圧上昇などの緊急時に使用される経路であると考えられているため
・仮説には、毛細血管を介して血管内へ排出する経路や、動脈壁内を通って頚部リンパ節に至る経路などが提唱されている
・くも膜顆粒自体は診断が確定すれば、臨床的意義は低い
・頻出部位としては、横静脈洞からS状静脈洞付近、また上矢状静脈洞にもみられる
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版
参考文献:Carare RO, Hawkes CA, Weller RO. Afferent and efferent immunological pathways of the brain. Anatomy, function and failure. Brain Behav Immun 2014;36:9-14.