【臨床症状】40代 男性 頭痛精査
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 位置決め画像 MRA 他
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- 拡散強調画像やADCにて急性期を含む脳梗塞所見は認めない
- またMRAで動脈瘤などの脳血管障害も認めない
- 一方で下記の所見を認める
- 各種シーケンスにて前頭葉が正常と比較して小さい
- 裂脳症の所見を認める
- 中心前溝が深く大脳縦裂にまで達しており、上下方向では側脳室付近にまで及んでいる
- 前頭葉に皮質下異所性灰白質を、右側脳室に側脳室上衣下異所性灰白質を認める
- 膝部-体部間における局所的な脳梁欠損
- 上記より、脳奇形(裂脳症、異所性灰白質、脳梁欠損)と診断された
【脳梁形成異常】
・脳梁は、脳梁原基と、この原基を通過し交連線維となる神経線維の発達成長によって形成される
・脳梁欠損症は、脳梁原基の形成が何らかの原因で障害された状態
・原基が全く形成されなかった場合は完全欠損となり、原基の吻側部分が形成されていると部分欠損になる
・原基の障害時期によって、脳梁完全欠損、脳梁部分欠損、脳梁低形成、脳梁萎縮に分類される
・欠損により脳梁原基を通過できなかった神経線維は、同側大脳半球内側面を頭側から尾側に走行し、白質線維束(Probst柄)と呼ばれれる
・Probst束が形成されるのは、脳梁部分欠損まで
・合併症のない脳梁欠損は男性に多く、運動発達、精神発達は正常である事が多い
・一方で脳梁低形成では、半数で精神発達遅滞やてんかんが見られる
・半球間裂内に嚢胞を、また異所性灰白質、脳瘤、キアリ2型奇形やダンディ・ウォーカー奇形を合併する事もある
・画像所見では、矢状断で帯状回の形成不全による半球内側面脳回の放射状配列が見られる
・横断像では左右の脳室が並行に走り、後角が拡大した特徴的形態(colpocephaly)を認める
・冠状断では、T2WIでProbst束が側脳室内側壁に沿って帯状低信号を認める事がある
・また第3脳室が挙上して、左右の脳室が離開している、bat-wing signを認める
・脳梁膨大部、体部後部の形成不全では、三角部から後角の拡張(colpocephaly)を認める
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版
ジェネラリストを目指す人のための画像診断パワフルガイド 第2版
【異所性灰白質】
・神経芽細胞遊走障害によって、白質に灰白質が存在している状態
・病変の部位によって古典的に次の3つに分類される
- 脳室上衣下異所性灰白質(subependymal heterotopia)
- 皮質下異所性灰白質(focal subcortical heterotopia / subcortical nodular heterotopia)
- 帯状異所性灰白質(band heterotopia)
・臨床的にはてんかん症状を認める事が多い
・他の脳奇形に合併する事がある
・画像所見は下記の通り
参考書籍:ジェネラリストを目指す人のための画像診断パワフルガイド 第2版
- 脳室上衣下異所性灰白質は、脳室壁の辺縁平滑な結節で脳室はしばしば拡大する
- 皮質下異所性灰白質は、皮質下の限局性の灰白質で、辺縁不正な事が多く腫瘍との鑑別が問題になる事がある
- 帯状異所性灰白質は、白質を挟んで2層の灰白質が存在するように見え、左右対称な事が多い
【裂脳症】
・多少脳回は、神経芽細胞が皮質まで到達するも脳回形成の段階で障害が発生し、皮質層構造に異常をきたした皮質形成異常のひとつ
・裂脳症は多少脳回の一つで、脳表皮質から側脳室まで達する深い脳溝を認め、その周囲に多少脳回を伴う状態
・裂隙が閉じていれば、c;losed-lip type、裂隙が開いていればopen-lip typeに分類される
・臨床的には、痙攣、片麻痺、発達遅滞などがあり、両側性の場合は重症化しやすい
・画像所見では、脳表から側脳室まで皮質と同程度の信号で覆われた裂隙を認め、皮質表層の凹凸や皮質白質境界の不整を認める
・透明中隔欠損を高頻度に合併する
・40%が両側性で左右対称性の事も多い
参考書籍:ジェネラリストを目指す人のための画像診断パワフルガイド 第2版