【臨床症状】50代 女性 臨床所見でDarlymple徴候+、Graefe徴候+、眼球突出+、複視+
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 冠状断
➡ 矢状断(右、左の順)
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- 両側性に各種シーケンスで外眼筋の腫脹を認める
- 筋腹を中心に腫大し、眼球付着部の腱は保たれているように見える
- 脂肪抑制画像の冠状断では、外眼筋の高信号も認める
- また両眼球の突出を認める
- 涙腺の腫大は無し
- 上記画像所見と臨床症状より、甲状腺眼症が疑われた
【甲状腺眼症】
・甲状腺眼症(thyroid ophthalmopaty)とは、Basedow(バセドウ)病眼症とも言われ、Basedow病患者の25~50%で見られる
・甲状腺機能正常者、低下症の人でも見られる事がある
・甲状腺機能異常や何らかの自己免疫疾患異常により、Müller筋、上眼瞼挙筋、外眼筋、脂肪組織、涙腺に炎症を来している状態
・主な症状は、眼球突出や上眼瞼後退、涙液分泌低下などがある
・進行すると眼球運動などに支障を来し、重症例では複視や視力低下を認める事もある
・臨床的な活動性の指標としてclinical activity scoreがある
・中年女性に多く、成人の眼球突出の原因の中で最多
・喫煙との関連が指摘されている
・通常は両側性に認めるが、10%で片側性の事もある
・画像所見は、外眼筋(外眼筋の厚み>視神経の直径)の腫大と眼球突出(眼球突出の定義は、両眼窩縁を結んだ線から角膜までの距離が21mm以上の場合)
・外腹筋では下直筋が最も侵されやすく、内直筋、上直筋がこれに次ぐ
・腫大は筋腹におこり、眼球付着部の腱は保たれる傾向がある
・造影検査が病変の範囲の特定には有効である
・重症例では眼窩内圧が上昇し、視神経が圧迫され眼窩先端部の脂肪が不鮮明となる(crowed orbital apex syndrome)
・慢性期では、外眼筋に線維化や脂肪沈着がおきる事がある
・涙腺、視神経鞘、強膜および眼瞼にも病変が及ぶ事がある
参考書籍:頭頸部の画像診断 改定第2版
ジェネラリストを目指す人のための画像診断パワフルガイド 第2版
参考文献:廣松雄治,Basedow病眼症,日内会誌 99:755~762,2010