質問や。膝蓋骨の存在意義ってなんや?
膝をガードしてるとか?
ワシな、学生の頃メッチャ不思議やってん。正直、無くてもええんちゃうん?って。
大腿骨と脛骨があるやん。それで足りてるやん。むしろ肘には無いやんって。
でもちゃんと役目があってん。
もくじ
膝蓋骨脱臼(dislocation of patella)とは
膝蓋骨脱臼の概要
ってな訳で、今日は膝蓋骨繋がりで、膝蓋骨脱臼についてや。膝蓋骨の役割については後で話すから安心せい。
膝蓋骨脱臼はスポーツ外傷に多いヤツや。空手、サッカー、バスケ、スノボなどコンタクトスポーツが多いな。
膝蓋骨脱臼はほとんどが外側脱臼で、脱臼しても自然と整復されるのが特徴や。
不思議やろ?ずれても勝手に戻んねんで?肩の脱臼とは大違いや。
ただ整復されると言ってもMRIを撮影してみるとちゃんと脱臼した証拠が残ってるんや。以下は膝蓋骨脱臼の概要についてや。おおよそこんな感じになるで。
ちなみに再発する事もあって、その原因としては、大腿骨滑車形成不全、高位膝蓋骨、初回脱臼時の指示組織の損傷なんかがあると言われとるで。
- 比較的頻度が高い脱臼
- 下腿骨が固定された状態で大腿骨に外旋が加わる事が原因
- ほとんどが外側脱臼(内側への脱臼は稀)
- スポーツ外傷に多く、一過性で自然と整復されるが再発を繰り返しやすい
Wirberg分類
ちなみに大腿骨滑車形成不全(femoral trochlear dysplasia:FTD)にはWiberg分類ってのがあって、膝蓋骨の内側と外側の関節面の大きさや角度によってⅠ~Ⅲの3タイプに分類されるんや。これにBaumgartl型も加えてⅣつに分類してるで。
ちなみに、Type2~3になると、膝蓋骨の不安定性が強くなると言われとる。


何かのタイミングで使う事もあるかもしれんから頭の片隅に入れておくとええで。
用意出来た画像の関係でType4だけ左足の画像やから左右ごっちゃになるかもしれんけど、そこや堪忍やで。
膝蓋骨周囲の解剖
次に膝蓋骨付近の解剖をおさらいしとこか。
膝蓋骨は種子骨の一種でおよそ4cm程度の長さの骨や。膝蓋骨の役割は、膝関節を守っているのと膝伸展の補助の2つや。
膝蓋骨は大腿四頭筋や膝蓋靭帯が付着してて、膝の屈伸の際に膝蓋骨を介する事で骨と筋の摩擦を軽減させる役目があんねん。後は前方からの衝撃を受ける事で、膝関節脱臼を防ぐ役目もあるんや。膝蓋骨を除去してまうと、膝の伸展がスムーズやなくなるらしいで。
乳幼児の時は軟骨の状態で、3歳頃から骨化が始まって、20歳前後で骨化が完了するらしいな。

膝蓋骨の上部には大腿四頭筋腱が、下部に膝蓋靱帯(膝蓋腱)が脛骨粗面に付着してるで。内側膝蓋大腿靱帯は内側の大腿骨と付着してんねん。この内側膝蓋大腿靱帯は頭文字を取ってMPFLとも呼んだりするで。むしろこっちの方が現場ではよく使うな。
膝蓋骨脱臼の原因と臨床症状
原因
原因は上で述べた通り、コンタクトスポーツによるものがほとんどや。他には交通事故なんかで、強い外力が膝蓋骨に横方向から加わった時に発生すんねん。
他にはジャンプの時なんかで大腿四頭筋が強く収縮した時に起きる事もあるで。この場合は10代の女性に多くて半数近くが反復性脱臼になるとのデータもあんねん。
症状
臨床症状としては、急性期は疼痛や腫脹や。受傷直後から症状が出てくるで。
慢性期(脱臼を繰り返している状態)やと不安定感が出てくんねん。
治療法
治療法は骨折があらへん時には整復後にサポーターなどの保存療法を、骨折がある場合は外科的療法を選択する事が多いらしいな。
画像所見
膝蓋骨脱臼の画像所見
膝蓋骨脱臼の画像所見は膝蓋骨内側と大腿骨外側の骨挫傷が特徴的や。これはどうやって脱臼して整復するかを知っておくと分かりやすいで。言葉で説明するのも難しいから図で確認してくれや。

膝蓋骨が外側に脱臼して、その時に大腿骨と衝突して骨挫傷を来すねん。
あとは内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)が断裂や損傷する事もあるで。この場合は、脂肪抑制画像で浮腫性変化や、靭帯の断裂所見を認めるんや。
加えて脱臼時に膝蓋骨内顆の軟骨が剥離して、軟骨骨片を関節内に認める事もあるで。これらの所見を認めたら膝蓋骨の骨折の確認も必要やで。
- 膝蓋骨内側と大腿骨外側の骨挫傷
- MPFL損傷(断裂)
- 膝蓋骨内顆軟骨剥離
ちなみに脱臼に伴って内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)の損傷、断裂に伴う、主な合併所見は次の通りや。」
- 内側膝蓋支帯の損傷、断裂
- 内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)の損傷、断裂
- 膝蓋骨内縁の剥離骨折
- 膝蓋骨後面の軟骨損傷
- 大腿骨外顆の軟骨損傷
実際の症例
さて、実際の画像や。
これは10代女性の右膝の画像なんやけど、柔道の試合で負傷してん。ほんでMRI検査になったんやけど、膝蓋骨の内側と大腿骨の外側に脂肪抑制画像で高信号になっているのが分かると思う。これは脱臼後に各々が接触して挫傷した状態や。
他には軟骨片が剥離して関節水腫内に浮いてて、最終的に膝蓋骨外側脱臼とMPFL損傷、関節内に遊離軟骨との診断になってるで。

この症例は10代男性の例や。階段を踏み外して左膝を負傷してんねん。
横断像で膝蓋骨外側脱臼の所見が分かると思うで。ちなみにこの症例もMPFLの損傷もあるな。一見、膝蓋骨は正常な位置にありそうなんやけど、MRIを撮影してみると脱臼した証拠が確認できるで。

鑑別診断のポイント
炎症性疾患など
さて、鑑別診断のポイントやな。
と言っても特にあらへん。上記のような特徴的な骨挫傷の位置を見たら脱臼が選択肢に浮かぶようにしておく事くらいやな。しいてあげるなら炎症性疾患もT2脂肪抑制で高信号に描出されるから、そこの点を注意しておくくらいや。
ただ臨床エピソードと照らし合わせるなりすれば問題あらへんと思うわ。むしろ膝蓋骨脱臼に伴うMPFL(内側膝蓋大腿靱帯)損傷やMCL(膝内側側副靱帯)損傷なんかも診断出来る事が重要やで。
まとめ
今回は膝蓋骨脱臼についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
脱臼の中でも頻度は高い部類
特徴的な骨挫傷の位置
MPFLの損傷、断裂、膝蓋骨内縁の剥離骨折などの合併症状も確認する
こんな感じや。大抵はスポーツ外傷が多いから患者エピソードを確認するのも忘れずにな。
まだまだ知らない事が沢山ありますね。
こういうふうに1つ1つ覚えていくと、まだまだ自分の無知に気づかされんねん。知れば知るほど自分の無知さを痛感するんや。
一方で、学び始めの人はどんどん知識が増えるから自分は出来ると勘違いしやすいねん。これをダニング・クルーガー効果って言うねん。興味があったら調べてみるとええで。
読影の道も1歩1歩や。
ほな、精進しいやー!