アキレス腱が切れる時って、本当に音がするんですか?
するときもあるで。
っていうのは、実はせーへん時もあるんやで。
ただ実際には腱が切れてる訳やから、音は鳴ってても本人が気がついてへんだけの事も多いねんけどな。
アキレス腱が切れる時ってのは、何かしら運動をやっててアクシデントが起きた時やから、痛みでそれどころやないってのもあるんかもしれん。むしろ音というよりは、バットで叩かれたとか、ボールが当たったとかっていう衝撃の方がメインの場合が多いとも聞くで。ワシも実際に切った事があらへんから何とも言えんけど、整形に行った同期に聞いてみると、そんな感じらしいで。
せや、今日はアキレス腱についてレクチャーしてこか。
もくじ
アキレス腱断裂(tear of Achilles tendon)とは
アキレス腱断裂の概要
さて、今日はアキレス腱断裂についてレクチャーや。
まず前提としてアキレス腱断裂やとMRIまで撮影する事は少ないで。というのも患者エピソードと理学所見で診断が出来るからなんや。
一方で不全断裂の場合はMRIを撮影する事も多いかもしれん。これは臨床所見だけだと分からん事も多いからな。
ちなみにアキレス腱は人体の中で最も太い腱なんや。この腱が切れるって事は、かなりの外力がかかったって事なんやで。スポーツや交通外傷、転倒などが原因やな。30~40代の男性に多くてスポーツ中に発生する事がほとんどや。治療期間が長くて、半年程度かかる場合がほとんどらしいで。
せっかくやから、両方とも概要をまとめておくわ。ちなみに、似たような疾患にアキレス腱炎があるで。これとの鑑別にはMRIを撮影する事もあるかもしれんな。
概要 | |
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アキレス腱断裂 | 腓腹筋とヒラメ筋が合流してアキレス腱となり人体の中で太い腱の1つ 中年以降に多く久しぶりにスポーツをやった時などに負傷する事が多い 切れる音がした、もしくはバットで叩かれた感覚など断裂したのがその場で分かる事が多い 断裂部の陥没やThompson試験などで診断される |
アキレス腱炎 | スポーツなどの強い負荷で発症 主な症状は痛みで急性型と慢性型がある 陳旧期は石灰化を伴う事もある 炎症所見がどこにあるかで、アキレス腱炎、アキレス腱付着部炎、アキレス腱周囲炎となる |
アキレス腱周囲の解剖
次にアキレス腱周囲の解剖についてや。この辺りは基本やからおさらい程度にしておくで。腓腹筋、ヒラメ筋が踵骨に付着する部分の腱をアキレス腱と言うんや。
アキレス腱の由来はギリシャ神話の英雄、アキレウスの弱点がここやったという話しかららしいで。
なんでもアキレウスが生まれてすぐに不死身になれる河に浸されたらしいねんけど、この時に母親が踵を掴んで浸してたために唯一の弱点として残ってしもうたらしいねん。それがキッカケでこの部分をアキレス腱と呼ぶようになったとかなんとか。
・・・話しがズレたな。
アキレス腱断裂の原因と臨床症状
アキレス腱断裂の原因は上で話した通り、スポーツ外傷によるものが最多やで。アキレス腱の急激な進展をする事で断裂や損傷を来す事があんねん。柔軟性が失われて中年以降に多くなってくるで。
臨床症状は疼痛や腫脹や。特に受傷直後は痛みが歩行困難な事が多いで。一方で、昔はアキレス腱が切れたら動けないみたいなイメージがある人も多いかもしれんけど、実際はアキレス腱が断裂しても少し安静にすれば取りあえずは歩けるようになる事も多いらしいで。
治療法は保存療法と外科的療法があるで。保存療法はギプス固定した後にリハビリを実施、手術療法は断裂した腱を縫合すんねん。再発率は保存療法の方が5%程度高かったというデータがあるらしいで。(手術3%、保存8%程度)
画像所見
アキレス腱断裂の画像所見
次に画像所見についてや。基本的にMRIで検査する事になるで。CTでも分かる事もあるんやけど、それは断裂してた場合や。損傷の場合は分からん事がほとんどやで。
アキレス腱断裂のMRI画像所見は、腱の腫大や、不連続、腱内部の高信号なんかが特徴としてあるで。
実際の症例
ほな、実際の画像を見ていこか。
40代男性でアキレス腱不全断裂の例や。捻挫で他院で単純写真を撮影して異常なしと言われて受診しに来てん。MRI撮影してみると、腱の腫大や周囲の信号強度上昇が認められて不全断裂の診断になった例や。
実はこの数ヶ月後にも撮影してんねん。時系列で見てみよか。
最初は不全断裂やったんやけど、何らかの原因で完全断裂になってしまったパターンや。Afterの画像でアキレス腱が断裂してもうてるのが分かると思う。痛みが引いてきたから運動とかしてしまったんやろな。
アキレス腱断裂自体の所見は派手やから見逃す事はあらへんと思うけど、完全断裂なのか損傷(不全断裂)なのかの鑑別は出来るようにしておきたいな。
鑑別診断のポイント
アキレス腱炎 その他
鑑別診断のポイントや。これはアキレス腱断裂と炎症が鑑別が必要になる場合が多いで。
画像所見 | |
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アキレス腱断裂 | 腱の腫大、不連続、腱内部の高信号など |
アキレス腱炎 | 腱の局所的な肥厚 腱内部にT2強調や脂肪抑制で高信号 |
アキレス腱付着部炎 | 踵骨の腱付着部に紡錘状の肥厚や異常信号 |
アキレス腱周囲炎 | Kager's fat padに浮腫性変化 |
アキレス腱炎の症例があったから載せておくで。アキレス腱に紡錘状の腫大とアキレス腱内部に信号上昇を認めるで。
ちなみにこの症例はKager’s fat padに著明な信号上昇を認めてて、これはアキレス腱周囲炎のパターンなんや。
Kager’s fat padはアキレス腱の前方部分の事やで。画像やとアキレス腱が紡錘状になってる箇所から下の部分で信号強度が上昇してる箇所が該当するで。
その他には黄色腫なんかがあると言われとる。黄色腫は高コレステロール血症に合併して、腫大したアキレス腱はT1強調、T2強調共に低信号を示すねん。これも頭の片隅に入れておくとええで。
他の足関節に関係するものとしては次のようなものがあるで。
まとめ
今日はアキレス腱断裂とプラスαについてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
アキレス腱不全断裂にはMRIを撮影する事がある(完全断裂は理学所見で診断可能)
炎症との鑑別は紡錘状の腫大の有無とアキレス腱内部のT2の高信号の有無
アキレス腱炎、付着部炎、周囲炎の厳密な鑑別は難しい事がある
こんなところや。
一口でアキレス腱炎と言ってもいくつかパターンがあるんやで。Kager’s fat padが信号上昇したり、アキレス腱内部に信号上昇だったり、鑑別に有効な所見がいくつかあるから覚えておくんやで。
そして、こういった所見をコツコツ覚えていくのが重要なんや。地道やけどな。
ほな、精進しいやー!