肩甲上神経絞扼症候群(suprascapular nerve entrapment syndrome)

改めてこう見てみると、病気や怪我っていっぱいあんねんな。

確かにそうですね。とても全部は覚えきれませんね。

今日は肩甲上神経絞扼症候群について話そうかと思うててん。ほんでこの怪我の事を調べてたんやけど、肩症状を呈するヤツだけでもぎょーさんあってん。1つ1つ見れば知った病名で、特徴的な所見もイメージ出来るんやけど、改めて見てみるとその多さにビックリしてもーてな。

ただ言える事は、どの部位も解剖学的知識は必須って事や。ここがあらへんと土台に立ってへんとも言えるな。

学生の頃とか解剖学は国試に頻出する箇所だけ覚えておけばええと思ってたかもしれんが、実際に現場に出てみると実は国試をパスするために必要とされてた知識が全然使わへんかったってのは資格試験あるあるやと思うで。

自分らもそうやろ?検査する時に解剖が分かってへんと何にも出来ひんやんな。

なんか、病名を見ててそんなことを考えてもーたんよ。

さて、今日のレクチャーにいくで!

肩甲上神経絞扼症候群(suprascapular nerve entrapment syndrome)とは

肩甲上神経絞扼症候群の概要

今日は神経絞扼症候群についてや。別名バレーボールショルダーとも言われるな。バレーだけやなく、テニスやバトミントンなんかみたいに上肢を回転させる競技に多いねん。せやからスポーツをやってる若い人に多い印象やな。

神経絞扼っちゅーのは、神経に何らかの圧迫が加わって絞扼されてしまってる状態や。肩甲上神経絞扼症候群は、肩甲骨の肩甲切痕や棘窩切痕部分で絞扼されてる状態の事を言うねん。原因としては酷使や外傷や嚢胞、腫瘍なんかがあるで。

せっかくやから主な原因の1つの傍関節唇嚢胞についても記載するで。それぞれの概要は次の通りやで。

概要
肩甲上神経絞扼症候群肩甲上神経が外傷や嚢胞、腫瘍などによって絞扼されている状態
進行すると棘上筋や棘下筋の麻痺や萎縮が出る
肩甲上切痕と肩甲棘関節窩切痕の2箇所が絞扼部位
傍関節唇嚢胞関節唇近傍に発生する嚢胞
関節唇断裂を介して関節腔と交通を有する事が多い
関節唇損傷がある場合は穿刺吸引しても再発する事がある

肩甲上神経の解剖

次に解剖や。骨や筋肉については知ってても、神経まで知ってるのは中々あらへんかと思うわ。

せやからこれを機に下の図を見て覚えておいてもらえたらええで。

肩の解剖
肩解剖

神経絞扼症候群の原因と臨床症状

この症状の原因は、筋力の低下(酷使)があるで。バレーのスパイクのようなオーバーハンドスポーツで特に顕著やな。酷使する事で筋肉の柔軟性が低下して該当部位に神経障害が起きんねん。

他に姿勢の悪さや肩甲骨の可動性の悪さなんかがあると言われてる。姿勢を良くして、適度に筋トレするって事やな。

臨床症状は、腕や肩の疼痛、痺れなんかやで。神経が障害されるから、神経障害がメインやな。

治療法については、保存療法(ブロック注射など)がまず実施されるで。それと並行して、筋萎縮を防ぐEMSっちゅー電気治療とリハビリを行うとの事や。どうにもならん時は外科的治療も行われる事もあるらしいな。

画像所見

神経絞扼症候群の画像所見

画像所見やけど、単純写真やCTでは分からへんで。基本的にMRIやUSで検査すんねん。USでは神経障害の有無を、MRIやと神経障害に加えて、その原因も見る事が出来んねん。

ちなみに傍関節唇嚢胞ならT2強調や脂肪抑制で高信号の腫瘤が確認出来るで。嚢胞と同じ信号パターンやな。

実際の症例

次に実際の画像についてや。

次の症例は50代男性で肩の痛みで受診した例や。傍関節唇嚢胞が原因で肩甲上神経絞扼症候群と診断されてるで。

後方関節唇が損傷してて、その部分に連続する嚢胞があるやろ。これが傍関節唇嚢胞やで。嚢胞成分は単房性やなく多房性の場合もあんねん。嚢胞やから造影しても濃染はせんからな。まぁこれは1度見ておけば忘れへんやろ。

肩MRI-神経絞扼症候群

次も40代の症例や。交通事故の精査で来院してんんけど、普段から肩を使う仕事もしてたって話しやで。

肩甲骨関節窩の背側の関節唇の断裂とガングリオンを認めると思う。ガングリオンは肩甲棘の下部に連続してて、ガングリオンの圧排による肩甲上神経麻痺疑いとの画像診断になってるで。

肩MRI-神経絞扼症候群
左上からT2強調、T1強調、T2脂肪抑制、下段左からT2強調横断像、T2脂肪抑制横断像、T2脂肪抑制矢状断像

鑑別診断のポイント

他の神経絞扼症候群

鑑別診断やけど、まぁこれは特徴的な所見やし鑑別ってほどのものもあらへんからしっかりと覚えておけばええと思うで。中には症状の原因が頚椎のヘルニアやアルコール性障害なんかの事もあるから、そこだけ注意かな。

患者エピソードをよく確認しておく事が必要や。

ちなみに、神経絞扼症候群は肩だけでなく肘や手、その他の部位にも起きるで。主に次の通りや。

部位種類
肩関節肩甲上神経絞扼症候群、腋窩間隙症候群
胸部胸郭出口症候群
肘関節肘部管症候群、前/後骨間神経症候群
手関節手根管症候群、尺骨神経管症候群(ギヨン管症候群)
膝関節総腓骨神経絞扼障害
足関節足根管症候群

まとめ

今日は主に肩甲上神経絞扼症候群と傍関節唇嚢胞をレクチャーしたで。ポイントは3つや。

肩甲上神経絞扼症候群は肩甲上切痕と肩甲棘関節窩切痕の絞扼が原因

傍関節唇嚢胞が最多で多房性の嚢胞の場合もある

肩だけでなく他の部位にも発生する

こんな感じや。今回はさらっとやな。でも逆にスッキリしてて覚える事も限られてるやろ。

回の所見はたまに見る事があったんですが、病名までは知りませんでした。いつも嚢胞があるってだけで終わらせてましたね。まだまだ知らない事が沢山あります。

ちなみに、知識だけ知ってても実際の現場で使わへん知識やったら、ぶっちゃけムダな知識やねん。せやったら必要な知識を入れた方が絶対ええんよ。レクチャーで取り上げる症例はそこそこ頻度も多いやつをメインにしてるから、少なくともレクチャーのヤツだけでも覚えておくようにな。

口だけの上司ほどアカンものはあらへん。部下からみると「お前が言うな」になるからな。

ほな、精進しいやー!