椎体圧迫骨折(comoression fracture)

学校で放射線の歴史って勉強するん?

しますよ。1985年にレントゲン博士が人体を透過する放射線を発見して、未知のXを用いてX線と名付けたのが始まりなんですよね。

やっぱやるんやな。そらそうか。
ちなみに当時は物珍しい事もあって、自分の手のX線写真を撮影する事が流行したらしいで。
なんでもそのための写真館まであったという話しや。今じゃ考えられへんけどな。

椎体圧迫骨折(comoression fracture)とは

椎体圧迫骨折の概要

さて、今日は圧迫骨折についてや。

ところで、読影してて思うんやけど、たまに腰が曲がってるお婆ちゃんとかおるやん?あの時の脊椎の検査ってどうやってんの?

タオルとか枕とかを使ってますかね。それでもダメなら側臥位で撮影したり。
ただどうやってもダメな場合はギブアップする時もあります。

やっぱ難しいんやな・・・

ちょっと話しがずれたけど、本題に戻るで。

圧迫骨折は高齢者によく見る疾患や。外傷なんかの大きな力が加わった時に椎体が上下方向に圧迫されて骨折してしまった状態の事や。

圧迫骨折原理

実は日常生活の中で徐々に進行してるケースもあんねん。さっきの腰が曲がったお婆ちゃんなんかはこのパターンかもしれんな。

発生部位は胸腰椎移行部や腰椎に多いで。

他には転倒なんかで起きる事もあるで。高齢者の女性に多いな。これは骨粗鬆症の有無も大きいねん。

上記のように圧迫骨折は陳旧性のものを含めて、高齢者ではよく見る所見や。特に新鮮なものかどうかは単純写真やと判別がつかんからMRIで検査される事が多いで。

圧迫骨折の概要は次の通りや。

  • 何らかの原因で椎体が上下方向に力が加わり椎体が骨折してしまう状態
  • 原因は外傷や骨粗鬆症、アルコール、喫煙、病的な要因など
  • 高齢者、特に女性に多い(骨粗鬆症によるものが多いため)
  • 急性のものと徐々に進行するパターンもあり、無症状の事も多い
  • 好発部位や胸腰椎移行部や腰椎など
  • 臨床症状は背部の疼痛で特に起き上がる時に激しい痛みを伴う事が多い
  • 明らかな骨破壊を認める場合は、悪性腫瘍(転移性骨腫瘍)などが疑われる
  • 骨折に伴って、骨壊死や偽関節形成をきたした場合、空洞や液体貯留、ガスを認める事もある

three column theory

椎体骨折においては椎体の安定性が重要なんやけど、この分類については、three column theoryってのがあんねん。

これは脊椎を3つに分類して骨折の程度を表したものやねんけど、さらに骨折した部位によってminor spinal injuryとmajor spinal injuryに分けて重症度を判別してんねん。

中注(middle column)の損傷が不安定性に一番寄与(関係)していると言われているで。

このThree column theoryは整形でよく使われてるな。

分類内奥
three column theory脊椎を前柱、中柱、後柱に分け、中柱を含む2つ以上のcolumnが破綻したのものを不安定骨折と分類する
minor spinal injury
(軽度の脊椎外傷)
関節突起骨折、横突起骨折、棘突起骨折、関節突起間部骨折
major spinal injury
(重度の脊椎外傷)
圧迫骨折、破裂骨折、chance骨折(シートベルト骨折、椎体から椎弓まで及ぶ水平骨折)、脱臼骨折
圧迫骨折のthree-column-theory

頸椎の骨折

ちなみに頸椎の骨折には部位や程度によって、下記のような名前がついてたりすんねん。

合わせて覚えておくとええで。

  • Jefferson骨折:C1の破裂骨折で、頭側からの垂直圧力により生じる
  • 歯突起骨折:過屈曲や過伸展による歯突起の骨折で、骨折のタイプにより3つに分類(Anderson分類)される
  • Hangman骨折:過伸展によるC2の椎弓部分の骨折で、C2/3は前方に偏位する事が多い
  • Extension tear drop骨折:高齢者に多く、軸椎前下部の前縦靭帯付着部に発生する剥離骨折
  • Flexion tear drop骨折:垂直圧力による頸椎下部の椎体後下部に起きる骨折で、高度の脊髄損傷を伴う事が多い
  • シャベル作業者骨折:C6からT1の棘突起の骨折のこと

椎体の解剖

次に解剖についてや。これは基本的な事やからサラッとにするで。もし忘れてた人がおったら、これを機に思い出しておいてな。

椎体解剖

椎体圧迫骨折の原因と臨床症状

椎体圧迫骨折の原因

原因は骨粗鬆症がベースにある事が最も多くて、発生部位は胸腰椎移行部や腰椎に多いで。骨粗鬆症があると転倒なんかの小さな外力が加わっただけでも、圧迫骨折が生じる事があんねん。

特に高齢者での骨折は、寝たきりの原因にもなったりするから注意が必要やで。

健康な人でも交通事故なんかの高エネルギー外傷やと骨折したりするし、他には悪性腫瘍によって病的骨折をする事もあんねん。

後は上で少し話したけど日常生活の中で徐々に進行していくパターンもあるわ。

臨床症状

臨床症状は急性期は強い痛みで患部の叩打痛が特徴的やな。仰向けに寝るのが辛かったりするで。

慢性期は骨折した椎体が潰れた状態のままになる事で前かがみの姿勢になる事が多いな。杖なんかを使わないと歩行が難しい場合も出てくんねん。

治療法

治療方法は基本的に骨折やから整復と固定や。コルセットなんかで数ヶ月固定する事が多いらしいな。

言うても骨折やからな。それなりの治療期間は必要になるで。

画像所見

椎体圧迫骨折の画像所見

画像所見については、単純写真でも診断は可能やけど新鮮かどうかは判別が難しいで。CTでも同様やけど椎体の骨折線はよく見える。

一方でMRIやと、新鮮骨折は骨髄浮腫を認める事から脂肪抑制画像でよく観察できるんや。

MRIは新鮮骨折かどうかまで判別可能やから、X-pで圧迫骨折が疑われたらMRIを撮影する事が多いで。

  • 単純写真では椎体の高さ減少などの所見を認めるが、急性期かどうかの診断までは難しい
  • CTも同様だが、椎体骨折の程度や骨折線はよく見える
  • MRIでは急性期の場合に脂肪抑制画像で高信号を認めるので分かりやすい
  • ちなみに急性期における他の信号強度はT1強調は低信号、T2強調では高信号
  • 急性期における他の画像所見は、骨折した椎体終板直下にT2強調で低信号の線状の低信号などがある
  • 椎体内にガスを認める事もあり、これがあると病的疾患は否定出来る所見
  • 骨粗鬆症が背景にある場合は椎体が魚椎状、扁平化の状態になる事が多い
単純レントゲン-圧迫骨折種類

実際の症例

実際の画像を見ていくで。

この症例は60代男性で、1.5mの脚立から落下して、それ以降の腰痛が継続してる例や。

脂肪抑制画像でL5に高信号を認めるやろ?これが新鮮圧迫骨折の所見や。ちなみに圧迫骨折は椎体の腹側側が低くなる事が多いで。

腰椎MRI-圧迫骨折
左からT2強調、T1強調、T2脂肪抑制

80代男性で庭仕事後に背部痛が出現した例や。Th12に圧迫骨折を認めるで。これも椎体腹側側が低くなってるのが分かると思う。

MRIを撮影する前に転院してもうたから新鮮かどうかまでは判別が付かなかった例やけどな。

胸椎CT-圧迫骨折

この症例は70代女性で慢性的な腰痛があって精査となったパターンや。

L3-5に椎体高の減少を認めるやろ。特にL3が低くなってるんやけど、どの部位もMRIの脂肪抑制画像で高信号やあらへん。これは陳旧性の圧迫骨折の所見や。椎体が魚椎状やから骨粗鬆症が背景にあると思われる例や。

腰椎-陳旧性圧迫骨折
左は単純写真、右はMRI(T2脂肪抑制)画像

鑑別診断のポイント

病的骨折との鑑別

鑑別診断は病的なものかどうかが1番に挙がるで。次に圧迫骨折なのか破裂骨折なのかや。

鑑別要点の主なもんを掲載したけど、もちろんこれ以外にもあるんやで。あくまで傾向やから例外的なものもあるで。

CTMRI
圧迫骨折骨破壊なし椎体終板付近の線状低信号
拡散強調で低信号
造影効果はあまりない
病的骨折骨破壊ありびまん性の椎体
椎弓の異常信号
拡散強調で高信号
造影で濃染される

後は破裂骨折との鑑別やな。これも簡単に要点をまとめると次のような感じや。

画像所見
圧迫骨折骨折によって椎体後壁は障害されず、脊髄の圧迫はあまり無い
破裂骨折椎体後壁が障害され、脊髄圧迫症状を認める事がある

こんな感じや。覚えとくとええで!

まとめ

今日は圧迫骨折についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

原因は骨粗鬆症が最も多い

新鮮な骨折かどうかの鑑別はMRI!

病的骨折との鑑別も重要

以上や。読影してて圧迫骨折やと思ったら実は病的骨折だったなんて事が年に数回遭遇するで。

ちなみに病的骨折(骨転移)の画像はこんな感じやな。

腰椎MRI-骨転移

よく見てみると腫瘍があったりするで。椎体の高さが変わらずに脂肪抑制で高信号だったり、椎弓まで異常信号があった場合は要注意や。

画像を見慣れてくると圧迫骨折か病的骨折かの判断出来るようになるからな。それには経験が必要やで。

ちなみにやけど・・・
レントゲン博士はX線を発見した時に、自分の嫁はんの手を撮影してんねん。
でも撮影時間が30分とかかかったらしいで。

30分すか!? 遮蔽とかしてたんですかね?

どうやろな。やってへんのかったのとちゃうかな。分からんけど。今ほど放射線が人体にどんな影響を与えるかも分かってなかったやろしな。

キュリー夫人が持っていた研究ノートもメチャメチャ汚染されてて、いまだに高放射能を出してるって話やしな。

今の常識から考えるとありえんけどな。

さてさて、今日はこのあたりにしとこかな。

ほな、精進しいやー!

PickUp

1

もくじ1 日本とアメリカの放射線科医数2 日本と世界の検査機器保持数3 読影医不足問題4 放射線技師 ...

2

もくじ1 基本的な読影の流れ2 頭部読影の流れ3 胸部読影の流れ4 腹部読影の流れ5 自分なりの読影 ...

3

精神と時と読影の部屋 読影力をつけるのは実際に画像を見ていくのが一番やで。 あれこれ考えながら所見を ...