脊髄空洞症(syringomyelia)

顔色悪いけど、どないしたん?

若手の練習台で小一時間ほどMRIに入ってたんですけど、途中からめまいがしてきてしまって。おえっ。

そりゃキッツイな。磁場酔いちゃうん?ちょっと安静にしとけば回復するやろ。基本的に一過性の症状やしな。

ちなみに磁場酔いの原因には体内電流が磁場の影響を受ける為とも言われてるらしいけど、起きひん人もおるのが不思議や。造影剤の副作用みたいなもんなんかなぁ。

まぁ、患者はんには磁場酔いっていうのがある事を伝えておいた方がいいかもしれんな。検査の悪い影響ですか?って不安になる人もおるやろしな。何事も事前説明が重要や。インフォームド・コンセントや。

さっそく検査前の確認内容に入れておきーや。

脊髄空洞症(syringomyelia)とは

脊髄空洞症の概要

今日は脊髄空洞症についてレクチャーしてくで。

脊髄空洞症とはその名の通り、脊髄の中に脳脊髄液が溜まって空洞が出来てる状態の事や。筋力低下や感覚異常などの神経症状や全身症状が徐々に進行してくで。

原因としてはキアリ奇形などの先天性奇形、外傷、くも膜炎なんかやと言われてて、基本的に脳脊髄液の流れが滞る事が原因やと考えられてるわ。

概要
脊髄空洞症脳脊髄液の流れが滞る事が原因で脊髄内に溜まった状態
徐々に進行し感覚障害や運動障害が発生する
30代に多い
キアリ奇形や二分脊椎などの先天性奇形や外傷、くも膜炎、腫瘍性病変が原因になる事がある
治療することで寛解する場合がある 

キアリ奇形

せっかくやから、キアリ奇形についても軽く触れておくで。ざっくりとキアリ奇形っちゅーのは、小脳や脳幹が脊柱管の中に脱出、陥入した状態の事を言うんや。そしてキアリ奇形にはその病態や程度でⅠ型からⅢ型に分けられんねん。

分類
キアリ奇形Ⅰ型:後頭骨の低形成による小脳扁桃の下垂を認める
 脊髄空洞症を50~85%で伴い、時に水頭症も併発する
Ⅱ型:別名アーノルド・キアリ奇形とも言う
 小脳虫部下部、脳幹部の下垂と脊髄髄膜瘤を伴い、水頭症も合併する
 神経管閉塞障害による先天性脳奇形
Ⅲ型:脳幹が頭蓋頚椎移行部の嚢胞内に下垂した状態
 非常に稀で出生時から呼吸困難、錐体路徴候、発達遅滞などを認める
 こちらも先天性脳奇形に分類される

実際にキアリ奇形Ⅰ型の画像も載せておくで。右側がキアリ奇形の画像や。小脳扁桃が大後頭孔から下垂しているのが分かるやろ。下垂の生理的範囲は10歳以下で6mm、11~33歳までで5mmとなっとる。これ以上の下垂はキアリ奇形に該当するって事やな。

頭部MRI-キアリ奇形

脊椎の解剖

次に解剖や。下に代表的な部位を載せておいたから覚えておくんやで。

脊椎解剖

脊髄空洞症の原因と臨床症状

脊髄空洞症は、何かしらの原因で脊髄の中に空洞が出来る事を言うんや。この空洞の中には脳脊髄液が溜まる事が多いで。原因としては、芸賞や炎症、他に先天性のキアリ奇形(1型)なんかがあるで。

臨床症状は発生した部位によって多彩な神経症状を示すで。小脳症状やったり、上下肢の筋力低下、感覚低下、自律神経障害なんかや。表在性感覚障害がある一方で、解離性感覚障害や症状に左右差があるのが特徴的やとも言われとる。

治療法としては、投薬治療や外科的治療があるで。特に外科的治療は対処療法で根治ではないのに注意や。手術しても脊髄内の空洞が多少残って症状が残存する事もあるらしいで。この場合は継続的な治療が必要になるらしいで。

画像所見

脊髄空洞症の画像所見

次に脊髄髄膜瘤の画像所見について話していくで。

モダリティ的にはMRIが1番分かりやすいわ。脊髄の中に嚢胞性病変が確認されるんや。嚢胞成分やからT1強調で低信号、T2強調で高信号になるで。つまり脳脊髄液と同じ信号強度になってるかどうかやな。大きいものやと嚢胞成分が分葉状になる事もあるで。

大きいと分かりやすい所見やからスルーする事はあらへんと思うけど、小さいときには注意やで。

実際の症例

次に実際の症例や。この症例やとTh4レベルで脊髄空洞症を認めるのが分かると思う。

胸椎MRI-脊椎空洞症
左からT2強調、T1強調、T2脂肪抑制
胸椎MRI-脊椎空洞症2

この症例は20代女性で別の例や。頭痛精査で頭部MRIで頚髄に病変が疑われた為に、後日頚椎のMRIを実施したんや。

Th6を中心に脊髄空洞症を認めるで。ちなみに、小脳付近をよく観察するとキアリ奇形Ⅰ型もあるで。脊髄空洞症を見つけたら、キアリ奇形もあるかどうか確認するのはルーチンで覚えておいてもええくらいや。それくらい関係性が深いねんで。

胸椎MRI-脊椎空洞症3

鑑別診断のポイント

中心管遺残(persistent central canal)

鑑別診断についてやけど、類似所見として中心管遺残(persistent central canal)っちゅーもんがあるんや。

中心管は脳室の中で一番下にある管なんやけど、成長するにしたがって閉鎖してくねん。ただ中には残ってる人もおって、それが画像上観察される事があんねん。これが中心管遺残や。

臨床症状を来す事は希で偶然発見される事が多いんやけど、これは特に治療の必要はあらへんやつやで。読影してるとたまに見るヤツやから、検査の時にも注意して見てみると遭遇するかもしれんな。

頚椎MRI-中心管遺残

まとめ

今日は脊髄空洞症についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

脊髄空洞症とは脊髄の中に空洞ができ、脳脊髄液などが溜まった状態の事を言う

脊髄空洞症を見つけた時はキアリ奇形もあるかどうかを確認する(キアリ奇形を認める場合は高確率で脊髄空洞症も認めるため)

中心管遺残とは区別する

こんな感じやな。脊髄空洞症は見た目が派手やから検査してても気がつくとは思うんやけど、中心管遺残は(モーションゴースト)アーチファクトと迷うこともしばしばあるで。その時は位相エンコードを変えて撮影してみると分かりやすいで。アーチファクトならそれで消えるからな。

自分なりのチェックポイントを作っておくと見落としが減るで。仕組み化するのがポイントや。

ほな、精進しいやー!